東京五輪が新型コロナウイルス下で開催されてから1年。国内競技団体の強化、競技普及、企業によるスポーツ支援、ジェンダー平等、そして五輪会場の後利用は―。それぞれの現状を探った。 ◇ 昨年の東京五輪後にスポンサー収入減などで財政状況が厳しくなり、選手強化に影響している競技団体は少なくない。 日本陸連は今夏の世界選手権で報奨金を減らす方針だ。前回は金メダル1000万円、銀500万円、銅400万円だったが、今回は金でも300万円。2010年代は最高1000万円だった有力選手の年間強化費も150万円にとどまる。 陸連はコロナ禍で収入が激減し、22年度予算で1億4500万円以上の赤字を見込む。強化費は3年前の半分の水準になった。これまでは強化委員会が希望する事業がほぼそのまま予算になっていたが、事務局が先に総額を定めた後で優先度を判断する方式に変えた。 鈴木英穂事務局長は「今年は特にお金が少ないが国際派遣はある程度やっていきたい。そこは選手のモチベーションで、私たちが発信できるメッセージというか…」。競技力向上を掲げる団体として苦悩をにじませる。 東京五輪ではアーバンスポーツが特に注目された。2年後のパリ五輪で採用されるブレイクダンスでは大口スポンサーが1社から4社に増え、メンタルや栄養面など多角的な強化も可能になったという。だが、そうした例は決して多くはない。 ある競技団体の幹部は「日本オリンピック委員会(JOC)からの支援は思ったより手厚く、強化は緩めない」としつつ「選手を支えるスタッフの確保」が難題だという。自国開催の大舞台を旗印に地域社会から集めていた指導者やトレーナーらが五輪後に現場を離れるケースもあり、継続的な強化は容易ではない。 陸連の磯貝美奈子強化部長は「(競技人口の)分母を広げていかないと、トップが上がっていかないところがある。次の五輪を目指しながらも、そこ(底辺)の部分を上げていくタイミングにあるのではないか」。指導者養成や競技普及に力を入れることが、長期的には強化にもつながっていくとの考えを示した。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕東京五輪陸上競歩男子20キロで銀メダルを獲得した池田向希(左)と銅メダルを獲得した山西利和(右)=2021年8月6日、東京・国立競技場