悩める大関に、館内の温かい拍手が降り注ぐ。正代が、ただ一人土つかずだった逸ノ城に快勝。「迷ったりせずに思い切りいけた」。その口ぶりには手応えがにじんでいた。 普段よりも前傾姿勢で当たり、まわしは許さない。タイミング良く左からいなして横を向かせると、休まずに攻めて押し出し。一方的に土俵の外に運んだ。 照ノ富士に貴景勝、御嶽海の2大関を破った逸ノ城は、左上手を引けばとりわけ強い。巨体からの圧力が増し、「取られたら、まず力負けする」と正代。得意の形を封じるには―。そう考え抜いた末、これまでの胸から当たる立ち合いを改めた。 平幕相手に大関の意地を示した格好だが、「勝率が悪かったので、新しいことをやってみようという気にもなれた」とも。過去4勝12敗という合口の悪さもあり、謙虚にこだわりを捨てられた。 黒星が先行しているだけに、まだ一安心とはいかない。「これからまた調子を上げていきたい」。3月の春場所で1勝5敗から巻き返し、9勝6敗で終えたのは記憶に新しい。当時のように、一日一番に集中してかど番脱出を目指す。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕正代(左)に押し出しで敗れ、初黒星の逸ノ城=16日、愛知・ドルフィンズアリーナ