4月に完全試合を達成したプロ野球ロッテの佐々木朗希投手(20)が、他球団の打者を圧倒する投球を続けている。阪神と西武で通算474本塁打を放った田淵幸一さん(75)と、首位打者2回の篠塚和典さん(64)=元巨人=に対戦したらどう打つかを尋ねると、共通するのは「直球を狙って打つ」ことだった。佐々木朗への期待も聞いてみた。 ◇割り切って直球を=田淵さん、骨格に驚き 最速164キロの速球に決め球のフォーク。加えて制球力もある190センチ右腕の佐々木朗希投手(ロッテ)に田淵幸一さん(75)は驚きの言葉を並べる。「昔は『長身の投手は大成しない』と言われていた。背の高い人は猫背になるし、故障しがちだったから。それを克服したのが(エンゼルスの)大谷(翔平)であり佐々木朗。骨盤や背骨、家でいう柱の部分が真っすぐだから速いボールが投げられる。インナーマッスルも強い」 現役時代、美しい放物線のアーチを架けたホームランアーティストならどう攻略するか。「ああいう投手は追い込まれたら三振。1、2の3で割り切って(直球を)打つ。俺の頃で言えば村田兆治(元ロッテ)がそう。あれだけ割り切って打ちにいった投手はいなかった」 捕手としても活躍した田淵さんは、阪神時代に球を受けた名投手の姿を重ねる。「江夏(豊)は速かった。真っすぐで90%抑えられる投手はなかなかいない。フォークは村山(実)さんがすごかった」。また、佐々木朗の性格も投手向きだとみる。「話術がなさそうだし、人見知りするタイプなのかな。投手はその方がいい。ベラベラしゃべる投手は駄目」 ロッテの新人、松川虎生捕手についても「18歳であんなキャッチングができて、捕手としてあれだけの潜在能力を持った選手は見たことがない」と絶賛する。「後ろにそらさないから、強気にフォークのサインも出せる。大したもの」 「(佐々木朗を)ロッテは大事に使っているが、決して過保護ではない。これだけ魅力のある選手はなかなか出てこない。プロ野球にとっていいこと」。日本球界の至宝となることに期待を寄せた。 ◇「真っすぐしか狙わない」=往年の名打者、篠塚さん 1980年代の巨人打線を支えた篠塚和典さん(64)も、ロッテの佐々木朗希投手に目を見張る。セ・リーグ首位打者に84年と87年に輝いた往年の名打者なら、希代の剛腕をどう攻略するか。「まず追い込まれる前に勝負する。最後まで真っすぐしか狙わない」 現役時代は直球狙いが多かったと明かす。これも踏まえ、160キロ台の速球とフォークで翻弄(ほんろう)される前に「早いカウントから勝負し、変化球は頭の隅。簡単に考えないと捉えるのはきつい」。通算打率3割4厘を誇ろうと、一球に懸けるしかないという。 最たる例は4月10日の完全試合達成時だ。3球勝負が目立った点に着目し、「難しく考えている間に投げられると、投手が有利になる」と説明する。凡打でもタイミングは合わせて打つ必要性も強調。「球が速いと意識した後続打者の打撃が狂わないようにするため」と話す。 篠塚さんが打席で異次元の速さを感じたのは、千葉・銚子商高時代に対戦した栃木・作新学院高の江川卓(元巨人)だけという。「投げたと思ったら球がミットに入っていた。江川さんの球を見たから、それから速さを感じなくなった」。自身の体験もあり、今のパ・リーグ打者は成長の絶好機と見立てる。 期待が一層高まる中、佐々木朗はまだ20歳。「あれだけの球速なら、肩肘の消耗も早い。もう2~3年はじっくり鍛えてほしい」と言う。「無事に勝ち星を重ねるのが第一。その中で再び記録が生まれるはず」。緩やかに、そして伸びやかに、「令和の怪物」が育つことを願っている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕オリックス戦で力投するロッテ先発の佐々木朗=4月24日、京セラドーム 〔写真説明〕野球殿堂入りの表彰式に出席した田淵幸一さん=2020年8月、東京都文京区 〔写真説明〕ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の篠塚和典コーチ(当時)=2009年3月、神宮