24日のオリックス戦で無安打投球こそ止まったが、ロッテの佐々木朗希投手(20)への高い評価は動かない。投手コーチとして優れた実績を誇り、横浜(現DeNA)では監督として1998年の日本一を経験した権藤博さん(83)は「一人では投げ切れない時代に、お化けのような存在」と舌を巻く。 10日のオリックス戦。史上最年少の完全試合を19奪三振で飾った。「三振は最低でも3球は必要。105球で投げ切ったのは、いかに球がすごいか。ほぼ完璧な投球での完全試合と言えるだろう」。権藤さんが注目したのは3球勝負の多さだ。「160キロの直球と、視界から消えるフォークがあればボール球は必要ない。豪快なのに(配球は)効率的で緻密」と分析。横浜監督時代の抑え投手、佐々木主浩になぞらえて「大魔神が9イニングを投げているようなものだ」と言う。 中日で現役時代を過ごした権藤さんは連投で体を酷使し、投手生命は事実上5年で終わった。苦い経験を踏まえ、指導者として投手の分業制を確立。「肩で身を削るのが投手。がんがん投げさせてはいけない」が持論だ。 佐々木朗は1年目の2020年は1軍登板がなく、昨季は11試合。「背丈もあり、無理をすると体が持たなくなる」とみる権藤さんは、じっくり育てるロッテの方針を「安全に、大事にしている」と評価する。入団直後のロッテキャンプ。近鉄で教え子だった吉井理人投手コーチ(当時)、井口資仁監督の3人で話す機会があり、目先にこだわらず育ててほしいと伝えた。「もちろんですと言っていた。本当にそうしたのがすごい」 最近は体ががっしりしたとの報告も受け、実際に球場で勇姿を見られる日を心待ちにしている。「これからも世間を驚かすだろうね。楽しみで仕方がない」。さらなる飛躍を請け合っている。 ◇権藤博さん略歴 権藤 博(ごんどう・ひろし)社会人から中日入りした61年、69試合登板で35勝を挙げ、新人王と沢村賞。連投が多く「権藤、権藤、雨、権藤」の流行語を生んだ。内野手も務めたが、69年に引退。投手での通算成績は82勝60敗。中日、近鉄などの投手コーチを歴任した後、98年に横浜の監督就任1年目で日本一に導いた。19年に野球殿堂入り。83歳。佐賀県出身。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕権藤博さん