スピードスケート女子の小平が今秋、競技生活にピリオドを打つことになった。3月のワールドカップ(W杯)最終戦は500メートルの1レース目で3位に入っており、まだ世界でも戦えるレベルだ。それでも「スケートだけで人生を終えることはしたくない」として引き際を決めた。 3歳から始まったスケート人生にも通じるところがある。父の安彦さんの教育方針もあり、幼い頃から自分で練習メニューを考えてきた。1998年長野五輪金メダルの清水宏保を支えた信州大の結城匡啓氏の下で学ぼうと、試験勉強をしながらトレーニング。2014年ソチ五輪後にはスケート大国オランダに単身留学。いずれも自ら選んだ道だった。 スケーターとしての歩みを「選んでいる道がちょっと特殊で少しスロー」と自ら表現したことも。W杯の500メートルで初優勝したときは28歳。平昌五輪の金メダルは31歳でつかんだ。 父に「奈緒の人生は神様がくれた時間だから思う存分使え」と背中を押され、進んできた道のりは、深みのある回り道。今後力を入れたいという子どもたちと触れ合う活動でも生きそうだ。 最後の舞台は、長年応援してもらった地元のリンクに決めた。それまでの約半年は第二の人生を具体的に思い描く時間にもなる。「人生を彩り豊かにしたい」。やりがいのある宿題を携え、ラストレースのスタートラインに立つ。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕記者会見で笑顔を見せるスピードスケート女子の小平奈緒=12日午後、長野市