ここぞの勝負でこそ、積み上げてきた地力が物を言う。結びで大関の貴景勝に挑んだ若隆景は、「しっかり自分の相撲に集中しよう」と心に決めた。その表情にも、迷いは感じられなかった。 押し込まれたものの、俵に左足を掛けて踏みとどまる。頭をつけて前まわしを探ると、相手のはたきにも、「我慢して足が送れたのでよかった」。一気に前進して2本差し、かいなを返しながら、もがく大関を寄り切った。 13日目は御嶽海に完敗してトップから後退し、この日にも賜杯をさらわれる可能性があった。高安が敗れるさまを控えの土俵下から見て臨んだ一番。複雑な心理状況の中でも、「必死に相撲を取った」という。再び首位に並んで迎える千秋楽。結びで挑戦する正代との相撲でも、この心持ちを保てるかがカギになる。 賜杯の行方は、いずれも優勝経験のない若隆景、高安、琴ノ若の3人に絞られた。八角理事長(元横綱北勝海)は「新しい力が出てこないといけない。非常にいいんじゃないか」と歓迎。まさに「荒れる春場所」となった土俵で、いよいよ決着の時を迎える。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕若隆景(左)は貴景勝を寄り切りで破る=26日、エディオンアリーナ大阪