決勝のスタート直前、ゴーグルで覆われた原の目は涙で潤んでいた。「ラストランだと思った瞬間、今までのことがフラッシュバックして過呼吸になった」。呼吸を整え、大きなミスなく滑り終え、「誰も経験できないことをやらせてもらって、幸せだなと思った」。競輪との「二刀流」に挑戦してきた25歳は、充実した表情を見せた。 2018年平昌五輪で銅メダルを獲得し、モーグルで日本男子初のメダリストに。実績に満足せず、新たな挑戦を求めて競輪選手養成所に入った。「地獄のような1年間」を過ごし、20年に競輪選手としてデビュー。ブランクを乗り越え、北京五輪に出場した。 表彰式後に行われた引退セレモニーでは、「最高のモーグル人生でした」としみじみ。今大会に出場していたナショナルチームの選手一人ひとりにメッセージを送った。 今後は競輪に専念し、今月下旬にはレースに臨む。「競輪で上を目指したい。競輪のことしか頭にない」。第二の人生を見据え、決意を新たにした。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕フリースタイルスキー全日本選手権の男子モーグル決勝。原大智のエア=21日、北海道・ばんけいスキー場