同じ25歳。小さい頃からよく知る相手だけに、貴景勝の立ち合いに迷いはなかった。頭から阿武咲にぶつかると、乾いた音が館内に響き渡る。土俵下で見た高田川審判長(元関脇安芸乃島)が「強い当たりだった」とうなった。 下から圧力をかけて上体を起こすと、左から狙い澄ましたような突き落とし。横綱不在の結びを締め、白星が五つ並んだ。 自身5度目の大関かど番。首には古傷を抱え、先場所は序盤戦で右足首を痛めて途中休場した。このところ、けがが目立つようになり、成績は浮き沈みを繰り返している。 「陥落するということは、大関としての能力がないだけ。そこを怖がる必要はない」。前回のかど番だった昨年秋場所では、自身にこう言い聞かせて臨んだ。今場所はめったに口を開かないが、その心構えは忘れていないだろう。 6勝2敗で折り返し、勝ち越しが着々と迫って来た。ただ、看板力士として戦うには「8勝を節目にしてはいけない」。3年前には大関昇進を決めた準ご当所の春場所。今回も、主役を張る活躍を見せるつもりだ。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕貴景勝(右)は阿武咲を突き落としで下す=20日、エディオンアリーナ大阪