【北京時事】ウクライナ侵攻により、スポーツ界でロシアと同盟国ベラルーシの除外は急速に広がった。障害のある選手の祭典、北京パラリンピックも例外ではなく、ウクライナの参加を認めて10日間の日程を遂行。戦時に行われた大会で選手は躍動し、言葉でも世界にメッセージを届けた。 開幕直前に中国入りしたウクライナ選手団は、積極的に取材を受けた。国のパラリンピック委員会会長が「最大の目標は全人類の平和」と訴え、金メダルを獲得した選手は「このメダルは、ウクライナの平和と人々のためのもの」。選手村ではロシアの軍事行動に抗議する集会も行われた。 国際パラリンピック委員会(IPC)のパーソンズ会長は「政治とスポーツは無関係であるべきだ」と強調した一方、開会式のスピーチを「ピース(平和を)!」で締めくくった。ウクライナ選手団の行動は政治的だと解釈することもできたが、IPCも他国の選手もとがめることはなかった。大会中もウクライナの戦火はやまず、むしろ勇気ある行動として受け入れられていた。 バイアスロン女子で金メダルを獲得したウクライナ出身の米国代表、オクサナ・マスターズは、昨夏の東京パラの自転車ロード種目に続いて栄冠に輝いた。母親は自分が生まれる前、チェルノブイリ原発事故で被ばくしたという。障害を乗り越え、国籍を変えて輝くパラリンピアンとなったマスターズは「パワーをすべてのウクライナの人に届けたい」と言った。 アルペンスキー男子の三沢拓(SMBC日興証券)は、競技を通じて人と人とがつながるありがたさを知ったという。「世界のアスリートと友達になった。それが誇り。だからこそ平和が一番だと自信を持って言える」。パラリンピックが目指すのは、すべての人が平等で、多様性を認め合って生きられる共生社会。アスリートたちの願いは届くだろうか。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕選手村で拳を掲げて平和を訴えるウクライナ選手団=10日、中国・張家口(EPA時事)