張本自身もしばらく思い出せなかったほど、シングルスでは久々の優勝だった。「自分のプレーが戻ってきたことがうれしい」。国際大会のワールドテーブルテニス(WTT)以来、約1年ぶり。苦しんだ時間が長かっただけに涙がこぼれた。 今大会では「挑戦者の気持ち」を持ち続け、得意のバックハンドを積極的に振った。「どこに来てもバックで打つ。(自分には)それだけの技術は絶対にある。9割くらいバックでいく気持ちでいた」。及川との決勝でも、マッチポイントでサービスからの3球目をバックハンドで攻め、最後の1点をもぎ取った。 結果が出なくても、日本男子の第一人者と見られていることに変わりはない。小学校時代の友人からは「パリ五輪のチケットを取ってね」と頼まれたという。五輪に出て当然という世間の期待の大きさを再認識した。 不振やけがに苦しんでいる間に、力のある選手も出てきた。「危機感は強い。このままではだめ」。パリ五輪への最初の選考会でライバルをリードする一歩を踏み出しても、慢心していない。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕ライオンカップ・トップ32の男子シングルス優勝を決めた張本智和=6日、東京・アリーナ立川立飛