13年ぶりのフルマラソンで、新谷は10分近くも自己ベストを縮めた。「もうマラソンなんて二度とやりたくない」。そんな言葉とは裏腹に、「苦手」と認めてきた種目への再挑戦を終えた姿には、充実感が漂っていた。 昨夏の東京五輪では、日本記録を持つ1万メートルで21位に終わった。ハーフマラソンの日本記録保持者でもある実力者は、失意の結果を引きずる日々からの再起を期した。「過去の自分と決別したくて、挑戦を決めた」 海外勢の先頭集団から離されながらも、東京五輪8位の一山に40キロ地点まで食らいついた。2時間21分17秒でゴール。日本歴代6位の好タイムにも、「不完全燃焼という感じ」と満足していない。一方で「五輪後よりも軽やかな気持ちで、今ここに立てている」。すがすがしい表情を浮かべた。 マラソンには区切りをつける考えを示し、今後はトラック種目で7月の世界選手権(米オレゴン州)の参加標準記録突破を目指す。「やっぱり1万の方がいいわと思った」。一回り大きく成長した34歳は、いたずらっぽく笑った。(了) 【時事通信社】 〔写真説明〕7位でゴールする新谷仁美=6日、東京都千代田区(代表撮影)