スポーツの舞台から、ロシア勢のほとんどが姿を消した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を発端に、国際オリンピック委員会(IOC)や各国際競技団体(IF)などが歩調を合わせ、同盟国であるベラルーシの選手を含めて「排除」する前代未聞の事態となった。「スポーツと政治は切り離すべきだ」との基本理念は、侵略に対する国際的な怒りでかき消された。 ロシアは近年、組織的なドーピング問題により制裁を受けてきたが、五輪や世界選手権には国を代表しない個人資格などで参加を続けてきた。だが、今後はそれさえも許されない。スポーツ大国ロシアの不在は、各競技の勢力図にも影響を及ぼす。 両国排除の流れを加速させたのはIOCだった。サッカーで相次いだ対戦拒否や各方面からの声に動かされるようにして、2月末に声明を発表。両国の選手と役員を国際大会に参加させないようIFや大会主催者に勧告した。陸上やラグビー、卓球など大半のIFが従ったものの、テニスやプーチン大統領が名誉会長(2月27日に資格停止)を務めていた柔道では、国旗の使用を禁じる代わりに個人としての出場は引き続き認めた。罪なき選手たちを罰していいのか―。異なるIFの対応に、判断の難しさが表れている。 4日に開幕した北京パラリンピックにも暗い影を落とした。国際パラリンピック委員会(IPC)は2日、ロシアとベラルーシの選手が中立の立場で参加できると発表したが、複数の国・地域がボイコットの意向を表明したといい、開催が危ぶまれる事態に。IPCは翌3日に判断を覆し、両国選手の大会参加を認めない決定を下した。 ロシア選手の中には、勇気を持って反戦を訴える者もいる。晴れ舞台への道が閉ざされた選手に対し、IPCのパーソンズ会長は悲痛なコメントを寄せた。「大変申し訳なく思う。あなた方は自国政府の行動の犠牲者だ」(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕北京パラリンピック開会式でスピーチする国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長=4日、北京(EPA時事)