中学時代からこだわり続けた大技のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を、樋口は今季習得した。北京のSPで決め、五輪で伊藤みどり、浅田真央らに続く女子5人目の成功。さらにフリーでも冒頭でしっかり決めてみせた。他のジャンプで転倒もあったが、胸を張れる5位だ。 「アクセルを五輪で2本決めるのを目標にずっと頑張ってきた。次につながる」。昨季、失敗が続いても挑戦をやめなかったことが糧となった。 唯一前向きに跳ぶアクセルは転倒した時の衝撃が大きく、独特の恐怖心は跳ぶ間際に襲ってくる。それを振り払うため、「試合で跳ぶ」と心に決め、逃げ道をふさいだ。 3回転半に挑む過程で、他のジャンプが崩れたこともある。結果が出ないことも、やはり苦しかった。昨季の全日本選手権は7位。ジュニア時代も含めて過去最低順位に終わった。岡島功治コーチは「もうどん底で、やめたいというよりも、気力がなかった」と振り返る。あと一歩で前回平昌五輪の代表の座を逃したこと以上の挫折と映った。 岡島コーチは「7番から五輪を目指すのは相当きつかったと思う」と心中を察する。それでも樋口は諦めなかった。3回転半を手に入れてはい上がり、ようやく切符をつかんだ五輪で躍動した。 フリーの曲は「ライオンキング」。イメージは「良い時、悪い時を全部経験して、最後はハッピーに終われる物語」。樋口だからこそ演じられるプログラム。魂の舞いだった。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーの演技を終えた樋口新葉=17日、北京 〔写真説明〕フィギュアスケート女子フリーで演技する樋口新葉=17日、北京 〔写真説明〕フィギュアスケートの女子フリーで演技する樋口新葉=17日、北京