国家ぐるみのドーピング違反が発覚したロシア選手団の全面排除と、潔白な選手の権利に配慮した参加容認。2016年リオデジャネイロ五輪の直前、国際オリンピック委員会(IOC)はそのはざまで揺れ、条件付きで出場を認める判断を下した。この甘さが6年後、北京冬季五輪に暗い影を落とす引き金となった可能性は否定できない。  世界反ドーピング機関(WADA)はリオ五輪からのロシア全選手排除の検討を勧告したが、IOCは慎重だった。同五輪の参加可否は各国際競技団体(IF)に委ねた。18年平昌冬季五輪や昨夏の東京五輪と同様、今大会も潔白を証明した200人以上の選手は国旗と国歌は使えないものの、「個人資格」で団体競技にも出場できる。  IOCは、表向きは不正を断固として許さない姿勢を強調する。しかし、本心ではスポーツ大国ロシアを締め出せば人気に陰りが出てきた五輪の価値がさらに低下し、オリンピック・ムーブメントが衰退することを恐れている。長年にわたり不正を働いたロシアへの甘い対処には「弱腰だ」「効果がない」などと批判の声が上がっていた。  スポーツの根幹を揺るがす事態は再び起きた。その当事者は、フィギュアスケートの才能にあふれ、まだ15歳の少女、カミラ・ワリエワ。ロシアは組織的なドーピングの闇から抜け出せないのか。世界のスポーツ界は、IOCの姿勢に厳しい目を向けている。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長=2016年7月、ブラジル・リオデジャネイロ(AFP時事) 〔写真説明〕練習するフィギュアスケート女子のワリエワ=14日、北京
情報提供元: 時事通信社
記事名:「 問われるIOCの甘さ=個人資格容認が招いた闇〔五輪・フィギュア〕