【北京時事】スポーツ仲裁裁判所(CAS)は14日、北京五輪に参加しているフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ選手(15)=ロシア・オリンピック委員会(ROC)=がドーピング違反による暫定資格停止処分を解除された問題で、決定を不服とした国際オリンピック委員会(IOC)などの訴えを棄却した。同選手は15日からの個人種目に出場できる。 CASは、16歳未満のワリエワ選手は世界反ドーピング機関(WADA)の規定で「保護対象者」になる上、出場を妨げることは「回復不可能な損害を与える」点などを考慮したとしているが、禁止薬物の陽性反応が出た選手の五輪出場を事実上認める異例の事態となった。 昨年12月25日に採取されたワリエワ選手の検体から、心臓の治療などに用いられ、持久力向上の効果があるとされる禁止薬物トリメタジジンが検出された。ロシア反ドーピング機関(RUSADA)が今月8日、同選手に暫定資格停止処分を科した。 RUSADA規律委員会は9日、選手側の異議申し立てを受けて処分を解除。これを不服として、IOC、WADA、統括団体の国際スケート連盟(ISU)がCASに訴えた。 ワリエワ選手は7日まで行われた北京五輪のフィギュア団体で、ROCの金メダルに貢献。個人種目でも金の最有力候補とみられている。日本が銅メダルだった団体の最終順位の扱いはCASの裁定の対象になっていない。 ◇CASの裁定理由骨子 ▽競技者は世界反ドーピング機関の規定で「保護対象者」である。 ▽保護対象者の場合は異なる証拠基準と、より低い制裁措置に関する規定がある。 ▽北京五輪中はドーピング検査で陽性反応を示さず、21年12月の検査で陽性となって懲戒手続きの対象になっている競技者と、申立人との利益の相対的バランスを考慮し、五輪出場を妨げることは競技者に回復不可能な損害を与える。 ▽21年12月のドーピング検査の結果通知が時機を逸したことも重大な問題。競技者の責任ではなく、法的要件を立証する能力を妨げた。(時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕記者会見するスポーツ仲裁裁判所(CAS)の担当者=14日、北京