スピードスケート日本男子のメダルは計11個。このうち九つが500メートルだ。世界と戦える数少ない距離で、「お家芸」と称される。そんな伝統種目の3大会ぶりメダル奪回を託されたのが、初代表トリオ。新浜立也選手(高崎健康福祉大職)、村上右磨選手(高堂建設)、森重航選手(専大)だ。この中で最も若い森重選手が銅を手にした。 最も期待されたのは新浜選手。2018年平昌五輪の翌シーズンにワールドカップ(W杯)初参戦し、デビュー戦で3位、第2戦は初優勝と瞬く間に羽ばたいた。身長183センチ。小柄なスプリンターが多かった日本にあって、大きなストライドを生かした豪快な滑りは規格外で、日本選手で初めて33秒台をたたき出した。 その新浜選手を北京五輪プレシーズンの大半のレースで抑えたのが村上選手だった。最初の100メートルは抜群に速い。新型コロナウイルスの影響で国際大会に参加できず、国内転戦を強いられても、遅咲きの29歳は「競い合っていけば、国際大会に出なくても世界トップレベルの戦いができる」と捉え、地道に鍛錬を重ねた。 北京五輪シーズンに入ると、21歳の森重選手が急成長。昨秋の全日本距離別選手権で2人を上回り、名刺代わりの初優勝を遂げたのを皮切りに、一気に殻を破った。初めてのW杯転戦でも、カーブの加速力は群を抜いている。 新浜選手が「自分が男子の時代をつくりたいし、つくれてきていると思う」とエースの自負をにじませれば、森重選手も「日本は短距離のレベルが高い。日本人1位を取りたい気持ちは常にある」と闘志を燃やす。その言葉通りに、表彰台に立った。 熱を帯びた対抗意識が相乗効果を生み、3人全員が33秒台をマーク。国際主要大会で世界で8人しか踏み込めていない領域に入った。 ここまで競技力を高めたスプリンターをそろえて迎えた大舞台。下地が整えば、12年ぶりのメダルを手中に収めるのも必然だった。 (時事) 【時事通信社】 〔写真説明〕スピードスケート男子500メートルで滑走する森重航=12日、北京 〔写真説明〕スピードスケート男子500メートルで銅メダルを獲得した森重航=12日、北京 〔写真説明〕スピードスケート男子500メートルで銅メダルを獲得し、喜ぶ森重航=12日、北京