今季からスタートしたBプレミアでは、週末の2連戦と水曜ゲームで構成されていた従来の日程に比べて平日開催が増え、中1日で次の試合を迎えるケースも多い。各チームの試合消化数やスケジュールにもばらつきがあり、試合間の準備や選手のコンディション管理など、これまで以上に柔軟な対応が求められている。



 そんな中、Bプレミアの開幕カードに抜擢されていち早く新シーズンをスタートさせ、東アジアスーパーリーグ(EASL)も並行して戦う琉球ゴールデンキングスは、特に過密な日程をこなすチームの一つだ。



 これまでの13試合は7勝6敗。直近では、10月31日、11月1日の両日に沖縄サントリーアリーナで行われた西地区上位の三遠ネオフェニックスとの2連戦で86-80、86-96で星を分けた。新チームとなってアップテンポなスタイルに転換する中、決して順風満帆とは言えないものの、難しい条件が重なる中での白星先行は及第点を付けていいだろう。



 十分な練習時間を確保できず、次々と試合がやってくる状況で、どのような戦い方がポイントになるのか。11月1日の三遠戦後、コンディション不良のアンソニー・マクヘンリーAHC(アソシエイトヘッドコーチ)に代わって指揮を執った穂坂健佑HCと、小野寺祥太の言葉から、その難しさを乗り越えるための工夫が見えてきた。



ディフェンスでチームに流れを引き寄せる小野寺祥太(左)©Basketball News 2for1


情報の「引き算」で迷いを防ぐ



 昨季まで5大会連続でファイナルに進んだ琉球だが、今季は多くの主力やコーチ陣が入れ替わった。選手同士の連係や判断の精度を高めるには、練習と実戦を通じた積み重ねが欠かせないが、10月28日に開幕戦を迎えたEASLでは海外への移動も伴い、試合間の準備に充てられる時間は限られる。



 中5〜6日で試合をすることもあったチームがいる一方、琉球はEASLでの海外アウェー戦も含め、三遠との連戦までの1カ月弱、ほぼ中1〜2日で1試合もしくは2連戦をこなす厳しい日程が続いた。



 次々と違うチームと対戦する中、対戦相手の分析や戦術の確認など、コーチ陣に求められる対応も難しさを増す。穂坂HCに試合ごとのスカウティングや選手への情報の伝え方について工夫を聞くと、「一番良くないのは情報過多になってしまって、選手のインテンシティーが下がることだと思います」と語り、伝える情報を取捨選択することが肝要との認識を示した。



 相手選手の特徴や戦術上の注意点を細かく伝えようとするほど、選手が考えるべきことは当然増える。個々の情報処理能力に左右される部分もあるが、特に心身の疲労が蓄積する過密日程では、それが判断の遅れやプレーの消極性につながりかねない。



 そこで重視するのが、ある程度の「グレーゾーン」を設けることだ。穂坂HCが言葉をつなぐ。



「本当に伝えるべきことは伝えた上で、ある程度のグレーゾーンを作ることも大事かなと思っています。『これはある程度やられても仕方ないよね。でも、その代わり、すぐ切り替えて次のオフェンスに行こうね』とか。逆に、『これは絶対やられちゃいけないよね』とか。そういう部分は意識しています」



 できるだけ多くの情報を伝えるというよりも、限られた準備時間の中で、許容できる部分と譲れない部分を整理する。今季の琉球はオフェンスで「0.5秒の判断」を追求しており、この「引き算」のような考え方は、選手が迷わず、思い切ってプレーするための工夫でもあるのだろう。



インサイドの柱としてチームをけん引するジャック・クーリー(中央)©Basketball News 2for1


対話で埋める「グレーゾーン」



 一方、コートに立つ選手は、Bプレミアの日程をどう感じているのだろうか。



 チーム最長の所属8年目に入り、これまでもEASLと天皇杯全日本選手権を含めた過酷なスケジュールをこなしてきた小野寺は、「本当にすぐ新しいゲームが始まるので、メンタル的にも身体的にも切り替えの準備がまだできていない部分もあるのかなと感じています」と率直に語った。



 その上で、穂坂HCと同様にグレーゾーンという言葉を使い、チーム内でコミュニケーションを取りながら試合中に共通認識を深めている現状に触れた。



「『ここどうするの?』っていうグレーゾーンのところは、選手間でもヘッドコーチ間でも出てきます。そこはコートでもハーフタイムでもアジャストはできています。あとは僕らがどれだけ高い遂行力でプレーできるかがキーになると思うので、しっかりやっていきたいです」



 プレーが止まるたびにコート上でハドルを組み、直前のプレーの反省と次のプレーについて意見を交わす。小野寺は「以前あったミーティングでも、『しっかり自分の意見を言い合う』ということを強調していたので、それぐらいの気持ちでコミュニケーションを取って、もっとチームが良くなっていくようにやっていきたいです」と向上を誓った。



チームの成長を誓う小野寺©Basketball News 2for1


変えてはいけない「キングスらしさ」



 柔軟性を持ちながらの戦いではあるが、決して譲れない部分もある。ディフェンスやリバウンド、ルーズボールへの執念だ。



 11月1日の三遠戦では、前半を48-48で折り返したものの、第3クォーターで一気に引き離され、逃げ切られた。小野寺は「出だしはいいスタートが切れましたが、ディフェンスの乱れやリバウンドのハッスル、セカンドチャンス、ルーズボールの部分で勝ち切れなかった。戦術うんぬんではない部分で負けてしまいました」と課題を挙げた。



 穂坂HCも、サッカー日本代表の森保一監督が、2022年のカタールW杯のコスタリカ戦で、試合中に「球際負けんな!」と選手を鼓舞していたエピソードを例に挙げ、力を込めて言った。



「勝負の世界って、目の前に落ちているボールを自分が一歩行って取るか取らないかだと思うんです。その一歩が出るかどうかで勝負は変わる。そのプライドで負けてしまうと、それはキングスじゃない。琉球ゴールデンキングスらしさというのは、どのクラブよりも、徹底してそこにこだわること。それをもっと大事にして、見せていかないといけないです」



 スケジュールは自分たちでコントロールできるものではない。どんなに難しい状況でも工夫を重ね、コート上では球際への執念は失わない。その積み重ねが、琉球がさらに勝率を上げていくための力になるはずだ。



厳しいスケジュールの中で、さらなる成長を目指す©Basketball News 2for1


(長嶺真輝)


情報提供元: バスケットボールニュース2for1
記事名:「 「情報過多は一番良くない」過密日程の琉球ゴールデンキングス、あえて残す“グレーゾーン”と譲れない球際の執念 」