10年前と同じ日、同じカードで、日本バスケットボールの新たな歴史の幕が上がった。



 2016年9月22日、Bリーグ最初の公式戦で対戦したアルバルク東京琉球ゴールデンキングス。2026年9月22日、リーグの成長をけん引してきた両者は、従来のB1に代わる新たなトップカテゴリー「Bプレミア」の開幕戦でも再び向かい合った。



 9月23日も含め、トヨタアリーナ東京で行われた2連戦は、初戦が84-73でA東京、2戦目が85-74で琉球に軍配が上がった。10年前はA東京の2連勝だったが、今回は1勝1敗で星を分ける結果となった。



 この10年で変わったもの。そして、新たに変わろうとしているものは何か。歴史的な2試合から、新リーグが日本バスケットボールにもたらす変化が早くも見えてきた。






「二つの開幕戦」に立ち、感じた進化



 2016年と2026年、歴史的な「二つの開幕戦」を選手として経験したのは二人しかいない。その一人が、A東京のザック・バランスキーだ。



 この10年でのBリーグの変化を問われると、「レベルはものすごく上がっている。こういう素晴らしいアリーナができたのも、リーグが成長したからこそだと思います。僕はなかなかお客さんが集まらない時代も知っているので、開幕戦から1万人近い観客が盛り上げてくれて、楽しかったです」としみじみと語った。



 A東京一筋でプロ13年目。2016年のBリーグ開幕戦は、客席こそ両クラブのイメージカラーである赤と白に半々で分かれていたが、「沖縄のファンはリーグ全体の中でも勢いがあるので、10年前は応援で歯が立たないというのが正直な感想でした」と率直に振り返る。



 しかし、今は違う。「アルバルクの応援もすごく力強くなって、ホームの後押しを感じながら(初戦を)勝ち切ることができました」と力強く言った。



2016年に続いて、2度目の開幕戦を戦ったザック・バランスキー©Basketball News 2for1


 もう一人の歴史の証人が、琉球の山内盛久だ。



 2016年には琉球のポイントガードとして開幕戦のコートに立ち、一度チームを離れた後、今シーズン復帰。地元沖縄出身選手の一人として、巡り合わせのように再び歴史の節目を迎えた。



「会場だったり、選手を取り巻く環境はすごく変わったと思います。それだけじゃなく、ファンの方々が会場に来て応援してくれたり、子どもたちが選手の名前を覚えてくれたり。そういうもの全部を含めて、日本のバスケットボールが大きくなったと感じます」



 元NBA選手や各国の代表クラスが続々と来日し、それに引っ張られるように日本人選手のレベル向上も進む。日本各地に整備された「夢のアリーナ」では、客席を埋めるファンが熱狂する光景が日常に溶け込んできた。



 バランスキーと山内が感じた競技レベルやクラブの成長、バスケットボール文化が社会へ広がっていく実感は、Bリーグがこの10年で積み上げた成果と言えるだろう。



“アルバルク流オン4”が示した強烈な火力



 そして今、日本バスケットボールはさらなる変革の時を迎えた。



 リーグが掲げる「B.革新」においては、さまざまな制度変更がある。ドラフトやサラリーキャップの導入、平日開催の増加など、クラブ、選手、ファンを取り巻く環境は大きく変わる。そんな中で、注目ポイントの一つに挙げられるのが、オンザコートルールの変更だ。



 3人まで登録可能な外国籍選手については、同時出場の上限はこれまで2人だったが、今シーズンからは制限を設けない「オンザコートフリー」が導入された。開幕戦で、そのインパクトをいきなり見せたのがA東京だった。



 外国籍選手3人に帰化選手のライアン・ロシターを加えた4人を同時に並べる「オン4」。サイズとフィジカルの強さが高まるため、リバウンドで優位に立ち、ミスマッチの局面もつくりやすい。実際、この2連戦ではオン4を敷いている時間帯に流れを引き寄せる場面が多く、琉球にファウルを重ねさせる効果も見られた。



 一方、“アルバルク流オン4”の強みはそれだけではない。コート上のヘッドコーチのような役割を担うロシターは「全員がハンドルもできるし、全員が判断もできる。全員がプレーメークもできるし、得点も取れるし、ディフェンスもできる」と手応えを口にした。



 いずれも新加入のディー・ジェイ・ホグキヨンテ・ジョンソンラクラン・オルブリッチはプレーの幅が広い。同じオン4でも、クラシックなセンターや司令塔タイプのガードがいるかなど、チームのラインナップによって強みは変わってきそうだ。



 4人と組む日本人選手によっても、ラインアップの性格は異なる。1戦目はテーブス海小酒部泰暉が、その役割を担った。ロシターは「海はピック&ロールやボールプッシュができるので、オフェンスの自由が利く。オサ(小酒部)だとディフェンスが強くなるので、全員がスイッチできる。試合の流れを見ながら、どういうラインナップを使うかはしっかり調整していきたいです」と見通した。



A東京は「オン4」のラインアップを敷く時間帯もあった©Basketball News 2for1


「今までできていたこと」が通用しない



 オン3、オン4の時間帯が増えれば、当然、それと対峙する側が感じる圧力もこれまでとは違う。琉球の松脇圭志「今までだったらできていたことが、外国籍選手が増えることによって、サイズも大きいですし、手も長いですし、通用しない部分もある」と率直に語った。



 小野寺祥太「サイズ感はだいぶ上がりました」と実感を口にする。ディナイする腕の長さによって、これまで通っていたパスが引っかかる。インサイドへ入ればビッグマンが待ち構え、シュートを放つタイミングも変わるという。



 ただ、日本代表センターの川真田紘也を負傷で欠く琉球は、そこで引くことはなかった。2戦目は前線からのプレッシャー強度を高め、スイッチ後のディフェンスでは日本人選手も含めて体を張り、A東京のビッグマンに対抗。1勝1敗に持ち込んだ。



 脇真大はリバウンドを例に挙げ、「日本人選手は身長は小さいですけど、ボックスアウトだけでもファイトできれば、相手がゴール下に行きたくなくなる気持ちにさせることができる。それは日本のこれからのバスケにも必要になってくると思っています」と強気に語る。



「このリーグは日本のリーグなので、日本人選手に多く活躍してもらいたい」と信念を語るアンソニー・マクヘンリーAHC(アソシエイトヘッドコーチ)も、「キングスに在籍している日本人選手は、外国籍のウイングを守れる力がある」と信頼を寄せる。その上で「外国籍を守るいい経験もできている」と、新たな競技環境を成長の機会として捉えている。



琉球をけん引したアンソニー・マクヘンリーAHC(右)©Basketball News 2for1


狭くなる出場枠「もう本当に競争」



 一方、オンザコートフリーが日本人選手に突きつける現実も、開幕カードから早速垣間見える格好となった。象徴的だったのは、A東京の中村浩陸飯田遼のプレータイムが2試合ともなかったことだ。残留と新加入という違いこそあれど、昨シーズンはいずれも平均10分以上コートに立っていた。



 ライアン・リッチマンHC「長いシーズンを戦っていく中で、彼らが活躍しないといけない状況は出てくると思います。ただ、オンザコートフリーになり、日本人選手のプレータイムが限られてしまうというのは現実的な部分としてあります」と影響を認める。



 質の高い「3&D」として主力を張る小酒部も「もう本当に競争。日本人のプレータイムの争いという感じがあるので、そこは各々が頑張っていくべきところだと思います」と危機感を口にした。



 以前であれば外国籍選手はビッグマンが多かったが、オンザコートフリーが導入されたことで、A東京のジョンソンのようなスコアラー、ガードタイプの外国籍選手もリーグ全体で増えてきた。つまり、日本人選手にとっては、外国籍選手との競争が特定のポジションだけの話ではなくなるということだ。



 日本人ビッグマンの平岩玄「日本人がみんな平等な競争環境になった」と受け止める。その上で、「外国籍選手3人と帰化選手1人のラインアップが最大火力だとしたら、それ以外の時間帯はオン1になったりもします。その時間でいかに存在感を出すかが大事ということを感じました」と自らに言い聞かせるように語った。



 日本代表でもプレーしてきたテーブスも、オンザコートフリーについて「日本人の出場機会が減ってしまう可能性があるのももちろん分かりますし、そこ(外国籍選手)と戦っていくのが日本人の成長につながるのも分かる」と期待と懸念を抱いている。



 一方、自身は米国の高校、大学も経験し、現地の選手と出場枠を争ってきた。その経験も踏まえ、「こういうルールがある以上は、もう勝ち取るしかない」と言い切った。



「オンザコートフリー」によって日本人選手のプレータイム争いもし烈になる©Basketball News 2for1


厳しい競争環境は、日本人選手を強くするか



 そもそもリーグがオンザコートルールの制限を緩和した狙いの一つが、日本人選手をより厳しい競争環境に置くことだった。



 島田慎二コミッショナー「『日本代表の強化と逆じゃないか』という声もたくさんありますが、コート上の競争環境を整えて、そこで勝ち抜く日本人選手を増やして、その選手が代表に集結するということを目指してスタートしました」と説明する。さらに現在の学生たちにも、将来プロになるにはそのレベルを乗り越えなければならないという意識が生まれることを望む。



 この変革が、実際に日本バスケの強化につながるのか。Bプレミアが幕開けしたばかりの今、その是非を判断することはできないが、日本代表ACでもあるリッチマンHCは、新たな取り組みに挑むリーグの姿勢を評価する。



「このリーグは凝り固まらずに新しいことを常に試していく。それが良くも悪くも、どっちに転がるか分からないという部分はありますが、まずは挑戦をしてみる。結果的にどうなるかは、シーズンが終わってから精査するものだと思います。このリーグが挑戦をしていることは、まず評価するべきなのかなと思います」



 NBLとbjリーグの二つのリーグが統合し、Bリーグが誕生した時にも、10年後に今のような発展が待っているとは、ほとんどの人が想像できなかったはずだ。Bプレミアという新たな時代は、日本バスケットボールにさらなる進化をもたらすことができるか。新たな旅が始まった。



開幕戦を1勝1敗で終えた琉球のメンバー©Basketball News 2for1


(長嶺真輝)


情報提供元: バスケットボールニュース2for1
記事名:「 A東京vs琉球で幕を開けたBプレミア 「本当に競争」「勝ち取るしかない」“オン4”が突きつけた現実、日本人選手の成長につながるか