「CSのために作り上げたチーム」 名古屋ダイヤモンドドルフィンズがアウェーで前年王者・宇都宮ブレックスに2連勝できた理由とは
Bリーグ1部(B1)は5月7日から11日にかけてチャンピオンシップ(CS)・クォーターファイナル(QF)が開催され、西地区4位(ワイルドカード3位)の名古屋ダイヤモンドドルフィンズはアウェーの日環アリーナ栃木で東地区1位の宇都宮ブレックスと対戦。第1戦を89-82、第2戦を75-66でそれぞれ勝利し、2季ぶりとなるセミファイナル(SF)進出を果たした。
前年王者であり、今季もレギュラーシーズン(RS)で東地区優勝を果たすなど、CSの優勝候補と目された宇都宮。名古屋Dはシーズン終盤に大黒柱のスコット・エサトンをけがで欠いており、シリーズ開幕前には宇都宮有利との見方が大勢を占めた。下馬評を覆し、強敵を相手に名古屋Dがアウェーで2連勝できた勝因に迫る。
齋藤拓実が後半に爆発 第1戦で19点差大逆転
宇都宮のギャビン・エドワーズの3ポイントシュートで幕を開けた第1戦。第1クォーターから宇都宮が3Pシュートを4本沈めるなど主導権を握り、前半終了間際には比江島慎の3Pで15点のリードを許す展開に。名古屋Dは前半だけで11のターンオーバーを犯すなど、プレーがかみ合わない場面が目立った。司令塔の齋藤拓実も宇都宮の執拗なディフェンスに苦しみ、前半はフィールドゴール0の無得点に抑えられるなど、活路を見いだせなかった。
後半に入っても流れは変わらず、D.J・ニュービルと比江島に立て続けに3Pを許すなど、第3Q残り8分11秒にはこの日最大となる19点のビハインドに。それでも、今村佳太や佐藤卓磨、齋藤らの得点で何とか食らいつき、残り4分16秒にはアラン・ウィリアムズのインサイドアタックで50-59と一桁点差に迫る。
追い上げムードの中、チームに勢いをもたらしたのが加藤嵩都だった。前半は出場がなかった加藤だが、第3Q残り3分3秒に初めてコートに立つと、残り2分42秒には3Pシュートをヒット。直後のポゼッションでは宇都宮に前線から激しいプレッシャーをかけてスティールし、齋藤の3Pへとつなげた。その後も激しいディフェンスと堅実なゲームメークで流れをつくり、14-0のランを演出。残り37秒には齋藤の3Pシュートで名古屋Dがこの日初めてのリードを奪い、試合はリードチェンジを繰り返す熱戦に突入した。
第4Qは齋藤やウィリアムズがタイムリーに得点を重ね、最後の5分間で宇都宮をわずか5得点に抑える堅守を披露。89-82で勝利した名古屋Dが、CS史に残る大逆転劇を演じた。
「スコアラー齋藤」を引き出した加藤嵩都とのダブルガード
後半だけで24得点を決めた齋藤はもちろん、加藤も勝利の立役者と呼んで間違いないだろう。わずか6分弱のプレーながら、3得点2スティール2リバウンド1アシストを記録。出場時間帯の得失点差を表す±(プラス・マイナス)でも+5としており、大きなインパクトを残した。
「前半、自分たちの速いテンポのバスケットができず、どうしてもテンポが上がらず苦しかったんですけど、後半、僕が入ってからその流れをちょっとは変えられたのかなというのはありました」(加藤)
前半に出場機会がなかった加藤だが、実はハーフタイムにはチームメートが後半に加藤を出場させるようショーン・デニスHCに直談判をしていたという。
「『なんで嵩都を出さないんだ』と、拓実さんもアーロン(ヘンリー)もショーンさんにハーフタイムで言う姿があった。このチームメートのために、ちょっとでも力になりたいという思いがすごく強かったです」(加藤)
前半はベンチで過ごした加藤だったが、その分冷静に状況を見て、自分の役割を把握することができた。「拓実さんに前半からディフェンスがすごく当たっていたので、ボール運びも苦しそうだなと思っていましたし、拓実さんは2番で使えば絶対スコアできる、アベレージ 25点ぐらい取れる選手ではあるので。一緒に出たら拓実さんをしっかりスコアラーとして生かそうという気持ちはありました」。
加藤とのダブルガード体制によって齋藤のボールハンドラーとしての役割やプレッシャーが軽減され、オフボールでの動きが増加。齋藤が「スコアラー」としての役割に集中できたことでボールムーブメントも増え、スペーシングも改善し、チーム全体のオフェンスも活性化された。
「CSは君が輝く時」 HCの期待に応えた今村佳太
SF進出へ王手をかけて挑んだ第2戦は、序盤から両者譲らないシーソーゲームに。この日チームをけん引したのは、今村だった。
宇都宮に連続で得点を決められ、リードを広げられそうになるたびに、今村が3Pやファストブレークで得点を重ね、名古屋Dに流れを呼び戻した。ディフェンスでも相手のエースプレーヤーをべったりとマークして仕事をさせず、比江島をわずか6得点に抑えるなど、攻守両面で躍動。シーズンハイとなる23得点を記録し、大一番でチームを救ったのだった。
「レギュラーシーズンでなかなか自分が思ったようなパフォーマンスができずに、そのままの流れでチャンピオンシップには来たんですけど、ただやっぱりチャンピオンシップは自分の感覚ではレギュラーシーズンの全く別物というふうに考えてやった。
どんな時でも自分のタイミングであればアグレッシブに行きたいと思っていましたし、ディフェンスの部分も自分の中で一番と言っていいほど重要だと思っていたので、そこはこれまで経験したことが出たのかなと思います」(今村)
今季はRS全60試合に出場したものの、平均得点は9.0と2018-19シーズン以降では自己最低の成績となっていた今村。RS終盤からはシックスマンとしてプレーするなど、新たな役割への適応に苦しむ場面もあった。そんな中での大活躍には、デニスHCも目を細める。
「彼(今村)には『CSは君が輝く時だよ』とメッセージを送りました。とても良いプレーをしてくれたと思います。彼がドルフィンズに来たのは、我々が次のステップへと進むのを助けるためです。彼を信じ続けてきましたし、この週末でなぜ彼を獲得したかを証明できたと思います。彼がチームにいることで、我々が今までに到達したことがない場所へと行けるチャンスがあるんです」
戻ってきたリーグナンバーワン・ディフェンス
宇都宮戦の勝因として、一貫して「ディフェンス」を挙げていたデニスHC。今季はRSのディフェンシブレーティングでリーグ1位となる成績を残していた名古屋Dだったが、エサトンとウィリアムズを欠いた4月の宇都宮戦ではそれぞれ87失点、90失点を記録しており、その立て直しは急務となっていた。
QF2戦ではエサトンは引き続き欠場となったものの、インサイドの要であるウィリアムズに加えてアイザイア・マーフィーも戦線に復帰。ガード陣からインサイド陣まで、高いオフェンス力を誇る宇都宮に対応できるだけのメンバーがそろった。
アーロン・ヘンリーの貢献も忘れてはならない。2試合で平均15.0得点、フィールドゴール成功率37.5%とシュートには苦しんだものの、平均8.0リバウンド、6.5アシスト、4.0スティール、1.0ブロックとマルチな活躍を見せたほか、ディフェンスでは真価を発揮。ニュービルのプライマリー・ディフェンダーとして多くのポゼッションでマッチアップし、第2戦ではニュービルを16得点(フィールドゴール成功率33.3%)に抑え込んだ。ニュービルは2試合でターンオーバーを11個記録しており、ヘンリーの好守が宇都宮のオフェンスを狂わせたことは間違いない。
「ディフェンスに関しては、(QFでは)われわれのベストな状態に戻すことができた」とデニスHC。
「ブレックスのような同じメンバーでよくコーチングされているチームを相手には、同じカバレージを使ったらすぐに対策されてしまう。なので、さまざまなカバレージを織り交ぜて、快適にプレーさせないようにしました。そうすることでたとえ相手がオープンで放ったショットでも、フローやリズムが良くないので、気持ちよく打つことができなくなるんです」
SF古巣・琉球戦へ 今村「打ち返せる力がある」
昨季は惜しくもCSを逃した名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。2季ぶりのSF進出を決めた今季は、「いいタイミングでいいチームを作ることができた」とデニスHCは手ごたえを口にする。
「正直、アラン(ウィリアムズ)がシーズン中にたくさんプレーできないかもしれないということは分かっていました。なので、CSの時期を見据えて、健康になれるように調整できればいいと考えていた。彼が健康でいれば、どういうインパクトを残せるかということは、この週末で明らかになったと思います。最初からこのタイミングのために作り上げたチームなので、素晴らしい気持ちです」
下馬評を覆し、アウェーで王者宇都宮を破った名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。SFは同じ西地区のライバルである琉球ゴールデンキングスとの対戦になる。戦うのは、またもやアウェー。聖地・沖縄サントリーアリーナだ。古巣との大一番に向けて、今村は気を引き締めつつも、自信をのぞかせる。
「チャンピオンシップが決まった時点で、自分たちが 2連勝するってどれだけの人が思ってたんだろうって。いろいろな予想とかもそうですけど、絶対に自分たちが勝つなんて思っていた人は少ないと思うので、もう失うものは何もないです。
やっぱり敵地沖縄アリーナの、特にチャンピオンシップでのホームの強さというのは自分もすごく知っている部分ではあるので。ただ、それを今、打ち返せる力が自分たちにはあると思っていますし、この2日間、自分たちが証明してきたことだなと思っているので。もうやるだけです」
Bリーグ最後のシーズン。初のファイナル進出、そして優勝を目指す名古屋ダイヤモンドドルフィンズの戦いは続く。
(滝澤俊之)