5月8日と9日、愛知県のウィングアリーナ刈谷で行われたBリーグチャンピオンシップ・クォーターファイナル(CS・QF)のシーホース三河(西地区2位)対琉球ゴールデンキングス(同3位、ワイルドカード2位)は、2連勝で琉球に軍配が上がった。

 初戦は79-65で快勝し、拮抗した展開となった第2戦も82-79で勝利。今シーズンはレギュラーシーズン(RS)と天皇杯全日本選手権を合わせて三河が4勝1敗と大きく勝ち越していたため、琉球が下馬評を覆した形だ。

 この結果を受け、琉球はQFを8大会連続で突破。昨シーズンまで4季連続でファイナルに進出しており、改めて琉球のCSにおける強さが証明された。

 この顔合わせの見どころの1つに、日本代表を率いるコーチ同士の対決だったことが挙げられる。

 今年2月にスタッフが新たな陣容となった日本代表において、琉球の桶谷大HCはヘッドコーチ、佐々宜央アソシエイトヘッドコーチ(ACH)はアドバイザリーコーチ、三河のライアン・リッチマンHCはアシスタントコーチを担う。第2戦後には、桶谷HCとリッチマンHCが抱き合い、お互いの健闘を称え合うシーンが印象的だった。

 琉球が最高峰の知略戦を制した要因は何だったのか。

リバウンド優位でポゼッションゲームを制す

 両チームともRSの平均ターンオーバー数はいずれも10.9回で、リーグで最も少なかったため、どちらがポゼッションゲームを制するかが勝負の分かれ目の1つだった。その意味で、琉球が最大の強みであるリバウンドで優位に立ったことは、シリーズを制した最大の要因と言える。

 初戦のリバウンド数は46対37本。オフェンスリバウンドはいずれも15本だったが、セカンドチャンスポイントでは20-11と差をつけた。第2戦は、この3つの項目で全て三河を上回り、我慢を続けて接戦を勝ち切った。

 試合直後のインタビューで、勝因を問われた桶谷HCも「やっぱりリバウンドじゃないですか。最後までオフェンスリバウンドに執着心を持ってやれたところ、セカンドチャンスを拾えたところかなと思います」と語っていた。

 琉球は全員がリバウンドに対して高い意識を維持したが、特にジャック・クーリーは2試合とも得点とリバウンドでダブルダブルを記録。ともにインサイドで双璧を成すアレックス・カークとともに、ゴール下を制圧した。

 第2戦後、2人と相対した三河のダバンテ・ガードナーのコメントが、琉球のインサイド陣の強烈さを物語る。

「この2人のオフェンスリバウンドはリーグでもトップクラスなので、しっかりファイトしないといけないという気持ちで臨みました。ただ、試合を通してすごく厳しい内容でした。常にピック&ロールを含めたボールムーブメントを止めなければいけず、それを止めた後のリバウンドも抑えないといけない。非常に大変なバトルでした」

 一方で、三河のオフェンスの起点であるガードナーも琉球にとって脅威であり続けた。

 第1戦の後、クーリーは「彼はBリーグの歴史で最多得点を記録している素晴らしい選手」とガードナーを称賛。琉球はガードナーのリングアタックに対して、各選手が素早くカバーに入ることを徹底した。それを念頭に、「彼に得点をされるにしても、いかに難しいシチュエーションを作れるかが大事だと思っています」と話し、警戒心を示していた。

雄たけびを上げるジャック・クーリー©Basketball News 2for1

ガードナー、ドットソンを巡る攻防で駆け引き

 琉球は三河戦に向け、佐々AHCがメインのスカウティング担当を担ったという。オフェンスにおいて、機動力が低いガードナーのところをドライブで何度も突いていったことも、プランどおりだったはずだ。

 一方、第1戦後、桶谷HCは「ライアンはとても良いコーチなので、明日は三河が後出しジャンケンをしてくると思います。ゲームの中での駆け引きでどれだけ勝てるかが大事なので、準備を含めてしっかりやっていきたいです」と気を引き締めていた。

 その言葉どおり、第2戦では三河のオフェンスで多少の変化が見られた。その1つが、オフェンスにおけるガードナーの動きだ。

 初戦は自らがスクリーナーになって相手のスイッチを引き出し、ミスマッチの状況から1対1で押し込んでいったり、ポップして3ポイントシュートを放つ選択が多かった。しかし、琉球のカバーの速さでシュート成功率が上がらず、第2戦の前半はスクリーンをかけた後にダイブし、そこでパスを受けてペイントエリア内で効率良く得点を決める場面が目立った。

 この変化を受け、「コーナーにいるシューターにへばり付いて全然ヘルプがいなかったり、ビッグマンも早めにスイッチしてしまったりしていて、前半はディフェンスの遂行力が低かったです」と振り返った桶谷HC。それをハーフタイムで選手に指摘したという。その上で、「ダバンテに3ポイントシュートを決められても、僕たちは2点を取られ続ける方が嫌でした。後半はある程度止めるだろうなとは思っていました」と続けた。実際に後半はダイブへのケアを早め、2ポイントシュートの成功率を落とさせた。

 これは一例だが、マッチアップの組み合わせやゾーンディフェンスを仕掛けるタイミングなど、試合中の駆け引きはシリーズを通して見応えがあった。第2戦では、中盤以降に琉球のデイミアン・ドットソンが鋭いドライブからのスコアを連発。それに対し、三河はマッチアップするプレーヤー以外の選手がドライブレーンを消すポジショニングを取るなど、終盤に対策を講じていた。

 ただ、琉球はクラッチタイムで、今度はドットソンではなく、ヴィック・ロー岸本隆一が得点をけん引。クーリーとカークも最後までゴール下での存在感を失わなかったことが、試合中の駆け引きで上回った要因だろう。

鋭いドライブを見せたデイミアン・ドットソン(中央)©Basketball News 2for1

SFで沖縄へ帰還…「0勝2敗」の名古屋Dと激突

 琉球はセミファイナルで、宇都宮ブレックス(東地区1位)に2連勝し、同じくアップセットを果たした名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(西地区4位、ワイルドカード7位)とぶつかる。今度は琉球がRS上位のため、舞台はホームの沖縄サントリーアリーナとなる。

 名古屋Dとは今シーズン、ホームとアウェーで1試合ずつを戦い、60-73、76-80でいずれも敗れている。特に4月15日にあった2試合目は劇的な逆転負けを喫し、悔しい黒星となった。

 ただ、同様にRSで負け越していた三河をスイープしたことからも分かるように、いまの琉球は、以前の対決時より明らかにチーム力が向上している。

 百戦錬磨の岸本が「CSはレギュラーシーズンとは全然違う戦いだということを改めて感じました。キングスが毎シーズンCSに出て、積み上げてきた経験値が大きく影響したクオーターファイナルだったと思います」と振り返ったとおり、CSにおける勝負強さも健在だ。

 その要因について、桶谷HCは「レギュラーシーズン中に勝てなかったり、しんどい思いをしたりした経験をクリアしてきたので、対応力がついているんじゃないかなと思います」とシーズンを通して成長してきたことを挙げる。今後に向けては「1つ1つ、目の前の試合に全力で臨んでいきます。自分たちでコントロールできることをコントロールしながら戦っていきます」と力を込めた。

 RSで味わった敗戦の悔しさや課題を糧に強さを増し、CSの舞台で1つ目の壁を乗り越えた琉球。今度はホームの大声援を背に、名古屋Dという難敵に挑む。

セミファイナルへと進出した琉球ゴールデンキングス©Basketball News 2for1

(長嶺真輝)

情報提供元: バスケットボールニュース2for1
記事名:「 琉球ゴールデンキングスが「日本代表コーチ同士」の対決を制しQF突破 “後出しジャンケン”の連続で宿敵・三河を上回った要因とは