チャンピオンシップ(CS)進出を争う「南北対決」は、琉球ゴールデンキングスに軍配が上がった。

 琉球は4月4日と5日の両日、沖縄サントリーアリーナにレバンガ北海道を迎え、83-74、91-82でいずれも勝利した。連勝を5に伸ばし、通算成績は34勝15敗。順位は西地区4位で、ワイルドカードでは2位につけている。

 2戦目については、最大17点差をひっくり返しての逆転勝利となった。最大の立役者は38得点でキャリアハイを更新したヴィック・ローだ。鋭いドライブや3ポイントシュートで得点を量産し、クラッチタイムでも高確率でリングを射抜いた。

 ローのスコアラーとしての非凡な能力に疑いの余地はない。ただ、この大量得点の裏側には、チームとしての明確な戦術的意図があった。象徴的だったのが、大型ポイントガード(PG)の脇真大が積極的にスクリーナーの役割を担ったことである。

スクリーナーとしても活躍した脇©Basketball News 2for1

「スクリーナー・脇」第2Qで効果発揮、猛追のきっかけに

 15点ビハインドで迎えた第2クォーター。「スクリーナー・脇」がゲームを動かす。

 まずは、このプレーだ。脇がオフボールでローにスクリーンをかけ、相手のスイッチを引き出してローと富永啓生の1対1に。富永はリーグトップクラスのオフェンス能力を誇る一方で、ディフェンス力が高いわけではない。ローが高さのミスマッチを突き、ファウルを受けながら冷静にミドルシュートを沈めた。

 その後も、スクリーンをかけた後にゴールへダイブした脇にローがパスを落とし、さらにジャック・クーリーにアシストしてイージースコアを演出。脇とクーリーによる2つのスクリーンを使い、ジャリル・オカフォーとの1対1になったローが、今度はスピードのミスマッチを突いてドライブで抜き去る場面もあった。

 1戦目の後、桶谷大HC「ヴィックのところは相手の4番(パワーフォワード)と5番(センター)が全部スイッチしていました。今日はドットソンと隆一のペイントタッチが良かったこともあり、ヴィックのところで攻めたいという意図はあまりありませんでした」と語っていた通り、北海道はスイッチディフェンスでローにプレッシャーをかけていた。

 それを逆手に取り、小柄なガードの選手とマッチアップする脇を主なスクリーン役にした琉球。3ポイントシュートが得意ではない脇はノンシューター扱いで相手マークマンに引いて守られるため、その間に広いスペースがあり、ローがアタックしやすいことも理由の一つだろう。

 桶谷HCは2戦目の後、「attack weakness(弱点を突け)」という言葉を口にした後、こう手応えを語った。

「脇がポケットパスをもらい、そこからさらにビッグマンに合わせるプレーも何回かありました。脇がウィークディフェンダーにつかれた時に、彼が味方にスクリーンに行き、4番のような動きができるようになってきたことは、チームが今までやってきたことの積み重ねだと思います」

 クーリーとアレックス・カークという重量級のスクリーナーを2人擁する琉球。相手のディフェンスによって、スクリーンのバリエーションの幅が広がっていることは強みの一つだ。

 チームで作ったミスマッチシチュエーションでことごとくスコアを重ねたローも「相手がスイッチしているのは分かっていたし、脇は彼の強みであるドライブを消されるようなディフェンスをされることが多いので、今日(第2戦)はお互いにとって良いシチュエーションでした。脇のスクリーンからのダイブも良かったです。毎試合状況は変わってくるし、自分たちにはクーリーとカークという不動のセンターがいるので、それも強みだと思っています」と語った。

キャリアハイの38得点を記録したロー(中央)©Basketball News 2for1

見えてきた「ノンシューター扱い」への答え

 スクリーナーとして存在感を発揮した一方、2戦目では放ったシュート5本(うち3ポイントシュート1本)全てを成功させて11得点を挙げた脇。アシスト数もシーズン最多タイの5本に達した。

「(相手ディフェンスに)下がられた時にどういうプレーをすればいいのか、僕の中で理解できています」と言い、ノンシューター扱いに対する攻め方の答えが見えつつある。

「下がられても、僕がヴィックや隆一さんのマークマンにスクリーンをヒットしに行けばオープンシュートが生まれます。仮にそこで打てなくても、相手がスイッチすればセパレーションが生まれる。1番(ポイントガード)の僕がスクリーナーになれば、相手はこんがらがって対応が難しくなります。シュートも『下がり過ぎたら打つぞ』というメンタルもできています。いい状態でプレーできていると思います」

 さらに言葉をつないだ。

「僕は速いバスケットができるポイントガードです。今日もリバウンドを取ってプッシュし、走ってきたアレックスに合わせることもできました。隆一さんはハーフコートのバスケットが素晴らしい一方で、僕がポイントガードをすれとみんなが走ってくれる。いい意味で違いがあります。みんなに気持ち良くバスケットをさせるのが自分の仕事だと思っています」

記者の質問に答える脇©Basketball News 2for1

 琉球はこれまで、ミスマッチが発生していたり、相手に弱点となるディフェンダーがいたりする状況でも、そこを徹底して攻めることを苦手としている節があった。スイッチを多用する相手に対し、外でボールだけが回り、なかなかディフェンスのズレを作れない試合もあった。

 そのため、動きの中で優位なマッチアップを生み出す脇のプレーの幅の広がりは、相手の弱点を突く戦い方の精度を上げる要素になるはずだ。桶谷HCも「ウィークディフェンダーをこうやって攻めていくんだという部分で、お手本になるような試合でした」と手応えを口にした。

 レーティングがリーグ5位のディフェンス力に加え、オフェンスにおいても徐々に成熟度が上がってきている琉球。それでも、ローは「今シーズンの初めは負けてはいけない相手に2つ負けたこともあったので、それは反省しないといけません。次の大阪戦に勝ち、茨城には2連勝を取りに行かないといけない。その後に名古屋Dや三遠、宇都宮との試合も残っているので、そこに向けてしっかりチームで戦っていきたいです」と気を引き締める。

 CS進出、そしてその先にある頂点に向け、さらにチーム力を高めていくつもりだ。

(長嶺真輝)

情報提供元: バスケットボールニュース2for1
記事名:「 なぜPG脇真大が「スクリーナー」に?「南北対決」を制した琉球ゴールデンキングス、ヴィック・ローのキャリアハイを生んだチーム戦術とは