(画像=テルモ株式会社)





足立朋子(あだち ともこ)

テルモ株式会社経営役員CHRO兼グローバル人事部長
東京大学文学部卒。1990年~2005年および2010年~2019年にわたりソニー(日米欧)にて、人事制度企画、チェンジマネジメント、組織・人財開発などを推進。2005年~2009年は欧州にて人事コンサルタント業を営み日欧グローバル企業向け人事戦略・施策の支援を行う。2019年よりテルモ株式会社のグローバル人事戦略を担当。8事業の内4つの事業本社が海外という環境でグローバル企業としての人事施策を企画、推進。2023年4月より現職。





テルモ株式会社

「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年以上の歴史を持つ医療機器メーカー。国産体温計の製造に始まり、現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供している。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開し、30,000人以上のアソシエイト(社員)と共に事業を行っている。





ダイバーシティ経営に対する取り組み


テルモグループでは共に働く仲間という意味を込めて社員を「アソシエイト」と呼んでいます。私たちは世界160以上の国と地域にビジネスを展開しており、全体の8割が日本以外のテルモグループ各社で採用されたアソシエイトであることが私たちの組織の特徴です。よって、多様なバックグラウンドを持つ世界中のアソシエイトの視点を取り入れ、地域の文化や価値観の違いを理解し尊重しながら、全社としての価値創造に繋げていくことが重要だと考えています。


具体的な取り組みとしては、2021年にグローバルDE&Iカウンシルを設立し、様々なバックグラウンドを持つアソシエイトの視点を取り入れた議論を通じて、ダイバーシティを全社経営の一部に組み込んでいます。このカウンシルは、日本の本社メンバーだけでなく、例えばヨーロッパのセールスマーケティングの女性Senior Vice Presidentや、南米でアシスタント業務を担当するメンバーなど、多様なアソシエイトが参画しています。このカウンシルで、テルモグループがどのようにDE&I(多様性、公平性、包摂性)を推進すべきか、そしてなぜそれが重要であるのかを共有しています。カウンシルで議論したことは、取締役会や経営会議を経て、DE&Iフィロソフィー・ガイディングプリンシプルという、会社の重要な規定や行動指針として制定しました。さらにグループ共通の4つの重点領域を選定し、グループ各社で取り組んでいます。
DE&I フィロソフィー・ガイディングプリンシプルは、テルモの企業理念体系に基づき、インクルーシブな文化・風土を醸成し、企業活動に根付かせることを明記しています。


ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策


現状と目指している姿を比較すると、3つほど乗り越えるべき課題があると考えています。


1つ目は経営幹部層の多様化についてです。テルモグループの海外売り上げ比率は75%、全体の8割が日本以外のテルモグループのアソシエイトでありながら、経営役員の外国人比率は33.3%、女性役員比率は10.5%となっています。


経営幹部層のダイバーシティは、具体的な数値目標を設定はしていませんが、私たちがビジネスをグローバルに展開することと同様に、人財もグローバルな視点で適切なマネジメントができているかどうかを常に意識することを大事にしています。実際に、人財育成や人財登用を検討する際は、日本人だけを対象にするのではなく、世界中のリーダー候補も検討対象に含め、適切なポジションに適切な人財を配置するようにグループ全体で取り組んでいます。


2つ目は、DE&Iフィロソフィー・ガイディングプリンシプルはグローバルで共有しつつ、各地域の事情に根差した活動を推進することです。各地域で文化や社会的背景などのバックグラウンドが異なるため、それぞれの地域に合わせた施策を考える必要があります。グループで共通の価値観を持つ一方で、具体的な施策については現場のリーダーとアソシエイトが、その現場で最も効果的な取り組みを考えることが重要だと考えています。


3つ目は日本における女性活躍推進です。日本を除くテルモグループ全体では、女性管理職比率は約40%ですが、日本では10%程度にとどまっています。今後さらに新たな価値を生み出していくためには意思決定層の多様化が不可欠です。そのため、トップ自らが率先して女性活躍推進に取り組む姿勢を示すとともに、女性のキャリア形成をサポートする環境などを整備し、女性が活躍する機会を増やすことで日本における女性の活躍推進に力を注いでいます。


DE&Iの取り組みの反響


グローバルDE&Iカウンシルを設立し、具体的な取り組みを始めてから少しずつ変化が見られました。


例えば、グローバルな人財会議や、女性管理職の育成などについて議論が増え、その結果、アソシエイトの間でDE&Iの重要性についての共通理解が生まれました。また、個々のアソシエイトが女性の登用や育成を真剣に考えるようになってきているということも感じています。日本における女性管理職の割合などはこれから結果が出てくると考えています。


また、Associate Resource Group(女性社員やLGBTQなど、当事者が部門を超えて主体的に形成、交流するグループ)の数も2年前と比べて3倍の規模になりました。DE&I推進の環境が徐々に整ってきていると感じています。


アソシエイトの能力を最大限に引き出すために


私たちは多様な人財が能力を最大限に発揮して活躍できるように、専門性を持つ多様な人財ネットワークをグローバルに活用する新たな仕組みとして、グローバルタレントマーケットプレイスという仕組みの導入を現在進めています。


これは、AI技術を活用してアソシエイトのスキル・経験やキャリアを分析し、最適なポジションやプロジェクトとグローバルにマッチングすることができるプラットフォームです。こうした施策を通じて、アソシエイト一人一人が自分の力を最大限に発揮するための多様なキャリア形成の実現につながる環境を作り出しています。


理想とする組織像とアソシエイトへの期待




(画像=テルモ株式会社)



私たちは、人的資本すなわちアソシエイトが最も重要な経営資源であると考えています。アソシエイトそれぞれが持つ能力や知識、経験を最大限に活用し、各自がテルモの企業理念である「医療を通じて社会に貢献する」の実現に貢献できている組織が理想像です。


アソシエイトの皆さんには、テルモを通じて自分自身がどう成長していけるか、社会に貢献したい想いをテルモでどのように実現できるかを考え、それを実行して欲しいと願っています。また、多様な人財が集うテルモグループには、新しい発想やイノベーションが生まれ、お互いが成長できる機会がたくさんあります。様々な機会に敏感になり、新しいことにチャレンジして欲しいと考えています。



氏名

足立朋子(あだち ともこ)

会社名

テルモ株式会社

役職

経営役員CHRO兼グローバル人事部長

情報提供元: NET MONEY
記事名:「 グローバルな視点での組織改革:テルモのダイバーシティ・エクイティとインクルージョン