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特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。
(取材・執筆・構成=久岡凜穂)
── 1993年に設立されてから、2021年に新規上場を果たされたということですが、業績の推移は順調だったのでしょうか。
メディア総研株式会社 代表取締役社長・田中 浩二氏(以下、社名・氏名略):1993年にメディア総研株式会社が創業されたのですが、2015年までは経済的に困難でした。しかし、真っ赤な状態が続く中でも耐え抜き、事業を持続させることができました。 その苦しい時期に得た知恵や耐久力が、その後の企業運営における大切な財産となりました。それは財務状況の厳しさを乗り越え、問題解決能力を磨くためのプロセスだったと感じています。
バブル崩壊後の就職市場が冷え込む中、我々は当初の事業として、高校生を対象とした進学支援事業を始めました。ちょうど全国各地に専門学校が増え、高校生が大学や短大だけではなく専門学校への進学を選ぶ流れが生まれたころでした。
── そういった状況下で、どのように事業を展開していったのでしょうか?
田中:まず、初期の事業としては、進学情報誌の発行などを行っていました。その後、徐々に就職情報事業へと移管していき、高専生への就職支援イベントや合同説明会の提供といった事業にたどり着き、その成果として市場での先行優位性を確立しました。 高専生をターゲットにした当社主催の合説は、現在では就職希望者の約85%が参加するイベントとなっています。
── 貴社のメインターゲットは高専生ですが、他社と比べてどのような部分に競争優位性があるとお考えですか?
田中:先行者利益が大きいことで参入障壁ができていると考えています。
具体的には、高専生たちに対して、大学や短大ではなく専門学校への進学を選択させるための授業を20年ほど行っていました。また、福岡書庫の開業や、九州エリアの私立大学が集まる組織が主催する就職説明会などにも参加していました。
高専生の就職率は、大学生の就職とは異なり、倍率が非常に高く、30倍や50倍、100倍といった競争率です。そのため、企業が学生にアピールするためには、就職イベントや企業見学などの取り組みが重要です。そこで学校行事の一環として合同会社説明会を開催しています。
しかし、年に何回も開催するわけではなく、適度な回数で実施しています。また、就職情報業界では、個人情報を扱う企業が多いため、情報の取り扱いは慎重に行っています。信頼を失わないためにも、情報管理を重視して業務を行っています。
実際に、同業者はほとんどおらず、マイナビや学研などの大手企業様も撤退しています。その結果、私たちの企業は、高専生の動員数や集めている社数から見て、95%以上のシェアを持っていると思います。今後も、上場に際して、さらに成長していくことを目指しています。
── 事業発展において様々な手法があると思いますが、上場というエクイティを活用しようと思った経緯や背景についてお聞かせいただけますか?
田中:創業から上場までの道のりは一筋縄ではいきませんでした。上場前、メディア総研株式会社は無借金経営であったこともあり、上場の必要性を問われることもありました。しかし、社会の変化が早くなり、学生の卒業後の選択肢が広がり、多様化するキャリアの選択肢の前に悩む学生に対し、十分な支援を提供していくためには、企業としてさらなる成長をすべきだと考え、上場への道を選択しました。
── 今後の事業戦略や未来構想についてお聞かせください。
田中:我々の今後の事業戦略は、高専生たちに対するキャリアサポートを更に強化し、彼らの就職や進学支援だけでなく、その後のキャリア転職やスタートアップへの参画、起業するという選択肢も持てるような支援を行うことを目指しています。特にスタートアップへの支援は、まだまだ潜在的な需要があると考えています。この先、彼らが学んできた専門知識を活かした独自のビジネスの立ち上げは、ほぼ確実に顕在化していくのではないでしょうか。
さらに、就職と進学の間にスタートアップを目指す学生が非常に多いことがわかっており、そのような学生を支援する取り組みも進めていきたいと考えています。
── スタートアップを目指す学生に対してどのような取り組みをお考えでしょうか?
田中:我々はこれらのスタートアップを支援すると同時に、その成功を共有する形で、新たな投資を行っていく予定です。成功見込みのあるスタートアップへの投資を行い、その利益をさらなる事業成長のための資金として再投資することも検討中です。これにより、我々自身が事業を拡大し続けることはもちろん、スタートアップもまた一緒に成長していくことが可能となります。これはまさに、共に成長するという我々の理念を体現した事業となっていく可能性があります。
その一方で、高専生は就職を選択する方が約60%、進学を選択する方が約40%です。そのような学生たちに対しても、より高度なキャリアサポートを提供していきます。彼らが専門知識を活かし、理想の就職先に進むことができるよう、引き続き就職活動のサポートも行っていきます。
これからの市場環境は、新たなチャレンジを求めています。新規事業の創出、新たな投資の展開、更なる教育プログラムの開始と、様々な取り組みを通じて、我々はその要求に応えていきます。高専の学生たち一人ひとりが自身のキャリアを自由に形成でき、成功を享受できる社会を創ることが、我々の最終的な目指すところです。これからも、我々の事業戦略や展望を通じて、高専の学生たちの可能性を最大限に引き出していきます。
── 新型コロナウイルスなど、激動の時代を迎えています。このような状況下で、金融や経済市場において、どのような課題やテーマがあると考えていますか?
田中:日本の教育カリキュラムに「金融リテラシー」が不足していることは課題だと感じています。これは、特に技術者やスタートアップを志す人たちにとって大きな課題です。彼らの技術やアイデアを市場に広めるためには、金融知識や投資に関する知識が必要だからです。
特に、IPOのメリットや株式市場の役割など、基本的な事業資本政策も多くの人にとって未知の領域です。これらの課題を解決することで、多くの人々のキャリアや生活を豊かにすることが可能になると思います。教育システムの改革や金融教育の普及が今後は必要となるでしょう。
─― 最後に、ZUU onlineのユーザーに向けてメッセージをお願いします。
田中:企業にとっての高専と大学の違いをご紹介させていただけたらと思います。大学が極めて専門的な分野の研究や開発に注力しているのに対し、高専は研究結果を社会へ実装することに重きをおいている傾向が強いです。つまり、企業とのタイアップによる新商品開発や、新規事業の最初の立ち上げなどは、高専のほうがやりやすい傾向にあります。 また、高専の教育にはPBRという課題解決型のカリキュラムが組み込まれていることも強みです。ですので、新規事業開発や既存ビジネスのリニューアルをミニマムで検証したい方などは、高専との共同事業を検討いただけたら、良いシナジーが生まれていくと思います。
最後に、資本市場や投資は、自分のアイデアやビジネスを実現するための有力な手段です。我々は、それを活用するための支援や教育を通じて、多くの人々が自分の夢を実現できる社会を目指しています。これから投資や資産運用に挑戦していきたいとお考えの皆様には、投資や金融に関する知識を身につけ、自分の夢を追い求める勇気をお持ちいただけたら嬉しいです。 今後とも、ご支援のほどよろしくお願いいたします。