特集「令和IPO企業トップに聞く ~ 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。今回は株式会社ケイファーマの福島代表にお話を伺った。




(画像=株式会社ケイファーマ)








福島弘明(ふくしまこうめい)――代表取締役社長


1988年広島大学大学院 生物圏科学研究科 博士課程前期修了。同年4月エーザイ株式会社入社。つくば研究所での創薬研究、本社での製品戦略等を経て、2006年から4年間の間、Eisai Research Institute of Boston, Inc.にマネジメントとして駐在。その後、本社人事部での業務を歴任後、退職して、2016年に株式会社ケイファーマを設立し、同代表取締役社長に就任。現在、慶應義塾大学医学部特任准教授を兼任。










「医療イノベーションを実現し、医療分野での社会貢献を果たす」という経営理念の下、2016年に慶應義塾大学医学部発のバイオスタートアップ企業として設立。iPS細胞を活用して、ALS等の神経難病に対する医薬品を研究開発する事業と、脊髄損傷や脳梗塞の患者様にiPS細胞から作製した神経細胞を移植する再生医療事業の二刀流で事業を展開。既にALSと亜急性期の脊髄損傷の開発パイプラインについては、患者様への臨床試験が実施中。2023年10月17日に東京証券取引所グロース市場へ上場。







これまでの事業変遷について


当社は2016年に創業しました。エーザイ株式会社から慶應義塾大学に移った福島弘明(生理学)と、共同創業者である岡野栄之(生理学)、中村雅也(整形外科学)、そして先輩経営者とディスカッションしながら、約1年をかけて起業や事業の構想を作り上げました。日本を代表する研究者たちの優れた最新鋭の研究成果や技術力とベンチャーならではの革新的な技術改革という2つのベースは最初から決めていましたが、創薬事業と再生医療事業の2つの事業のうち、どちらを事業の軸に据えるか、悩みました。資金調達のしやすさや事業の成長性など、各分野の専門家に相談した結果、両方の事業を進めるという今のかたちに至りました。最後の決め手はバイオベンチャー経営者からの「やれることは全力でやるべきだ、両方やったらいいよ」というアドバイスでした。事業の柱を2本にした理由は、もう一つ、企業の持続可能性の観点でした。柱が2つあればそれぞれの事業の進捗に偏りが出ても、先行している方の事業の収益をもう一つの事業に投資できると考えました。実際に、今年で創業から8年目になりますが、創薬事業と再生医療事業の両輪で着実に前進しています。




(画像=株式会社ケイファーマ)



昨年IPOしたときに、設立時に作成した事業計画資料を見直したところ、資料中に「2023年IPO」との記載がありました。創業初期から、明確な目標を設定し、着実に進捗してきたことがわかります。設立時からリードしてきたパイプラインを鋭意育ててきましたが、後続パイプラインも概ね予定通りに進んでいます。


上場を目指された背景や思い


上場した背景には、もちろん資金調達がしやすくなるという点はありますが、一番の狙いは一流の研究者を集めることです。創業当初もこの部分で苦労していました。もちろん実績を作っていくということも重要なことですが、上場したことによる信頼性や知名度の向上による影響は大きいと思います。実際、有能な研究者の方からケイフォーマに興味をもって、自らご連絡してきてくださる方も徐々に増えています。


まだ、十分な実績を出せているとは思えませんが、今後の取り組みで成果を出していくつもりです。株式上場は成長過程での一つのステップに過ぎません。私たちはずっと上場後のことを考えてきました。最近のIPOでは高い市場価値がつきにくい傾向にありますが、評価額が小さくても上場はできるときにして、上場後の事業の進捗を評価いただくことで、企業は大きく成長していけると考えています。この点は現在もぶれることなく、粛々と事業に取り組んでいます。


今後の事業戦略や展望


現在、最優先で対応している創薬プロジェクトは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を対象とするプロジェクトで、その治療薬候補「ロピニロール塩酸塩」を用いた第Ⅲ相の国内治験を導出先であるアルフレッサファーマ社で準備を進めている段階です。ロピニロール塩酸塩は、パーキンソン病の治療薬として安全性が優れている薬剤であり、治験にご協力いただきやすい環境にあります。第I/Ⅱ相治験で極めて有効な結果が出ていることから、第Ⅲ相治験も順調に進むと考えています。





(画像=株式会社ケイファーマ)



また、海外への事業展開も進めています。ALS患者数は日本に約1万人ですが、全世界では約33万人と言われています。さらに、米国での同疾患の薬価は年間約3,000万円と非常に高価です。患者数と治療薬の薬価から、非常に大きな市場があることは明確です。さらにiPS創薬事業と再生医療事業の2つの柱に加え、第3の柱となる事業の準備に向け、まずはアメリカに新しいラボを作る構想もあります。海外への事業展開は今後の大きなテーマとして考えています。


一方で、私たちが大きな売上を期待している疾患の一つは慢性期脳梗塞です。ALSだけでも大きな市場規模はあるのですが、脳梗塞の患者数は国内だけでも130万人と言われています。この疾患はすでに他社も少しずつ参入している分野ではありますが、なかなかよい結果が出ていません。その中で、私たちも臨床研究に向け先陣を切っている企業の一つです。


共同研究先である大阪医療センターで、世界で初めてヒトiPS細胞を活用した慢性脳梗塞を対象とする医師主導臨床研究がスタートする予定で、その準備が始まっているところです。私たちは、この臨床試験の研究成果を活用し、当社独自の技術や知見をベースに、慢性期脳梗塞の企業治験を進めていく計画です。事業としては2020年代の後半から2030年の前半で、大きい成果が期待できると考えています。


今後のファイナンス計画や重要テーマ


資金調達した資金とIPOで獲得した資金をベースに創薬事業の方は粛々と進んでおり、2つ目、3つ目のパイプラインとなる治療薬候補化合物を見つけたので、企業治験に向け準備を進めています。


ファイナンスについては、これら治験の費用や再生医療における製造コストが重要なポイントです。ケイファーマは、当面、自社工場を保有せず、移植細胞の製造を外部委託する計画であり、一時的にはコスト高になる可能性も懸念され、コストアロケーションは重要な課題であると認識しております。


より有効な薬剤を日本だけでなく、海外の患者様にも提供できるよう事業を展開していきたいと考えています。また、中長期先を見据え、新しいモダリティを見つけるために、アメリカにラボを創設する計画です。常にグローバルな視点で事業を組み立てていきたいと考えています。


ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言


私たちがビジネスを通して実現したいのは、一人でも多くの患者様に有効な薬剤や治療法を提供することで、医療に貢献することです。


ALSに罹患すると、発症から3年間で約半数が死亡してしまう極めて進行が早い疾患です。脊髄損傷においては、長く生きることはできても一生涯、一切動けないという非常に苦しい状態になってしまいます。ALSを含む神経難病では、まだまだ有効な薬剤がなく、また脊髄損傷においても有効な治療法がありません。アンメットメディカルニーズを満たす薬剤を生み出すこと、また、身体の一部だけでも機能回復できるような治療法(再生医療)を開発することは、社会的に非常に価値が高いと考えています。


もちろん、企業としては収益がないとビジネスが成り立ちませんので収益を作ることは重要であると認識しております。より有効な薬剤を見出し、迅速に開発を進め、一刻も早く患者様に届けることで、また身体の機能を回復させるための再生医療で、医療に貢献したいという想いがベースにあります。


私たちのビジネスは成果が出るまでに長い時間がかかりますが、特に再生医療においては、承認プロセスは従来より短縮されています。2020年代後半には国内だけでも大きな成果が見込めます。さらに、そこに海外の市場も加わると、非常に大きな売上につながると想定しております。その点をご理解いただいて、今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。



氏名

福島弘明(ふくしまこうめい)

社名

株式会社ケイファーマ

役職

代表取締役社長

情報提供元: NET MONEY
記事名:「 創薬と再生医療の2本柱で一人でも多くの患者を助けるーー株式会社ケイファーマ