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冨田:貴社の歴史について、主要なターニングポイントや大きな出来事を中心にお話しいただけますか?
株式会社インターネットインフィニティー 代表取締役社長・別宮 圭一氏(以下、社名・敬称略):まず、当社は2001年に設立されました。インターネットインフィニティーという社名通り、私自身がIT関係の会社出身だったので、その経験を活かして独立しました。
当初はウェブ系のシステム開発やシステムインテグレーション事業の受託開発を目的としていました。
冨田:その後、どのような経緯で介護事業に進出されたのですか?
別宮:その当時介護事業を展開されているお客様に業務システムの開発のご依頼をいただきました。私は開発においての要件定義のために、現場を見学させていただく機会が多々あったのですが、その時に見た実際の介護の現場はIT化が遅れており、生産性が低く、実情に衝撃を受けました。
冨田:それが高齢者ヘルスケアや介護業界に興味を持ったきっかけですか?
別宮:はい、そうです。そこから高齢者介護やヘルスケアの分野でインターネットを活用した特徴のある事業を展開したいと考えました。しかし、私自身、介護領域においての経験がなく、人脈もなかったため、情報収集が難しかったのです。当時は今ほどインターネットで情報が手に入る時代ではなかったので、着想を具体化するのに苦労しました。
そのなかで、経験がないのであれば実際に自分でやってみよう、と思い立ち、2002年に自分で介護士の資格を取得し、介護事業を立ち上げました。それが、リアルでの介護事業への参入のきっかけです。まずは設備投資負担の少ない訪問介護事業を始め、その後は事業譲受や新規出店を繰り返し、徐々に規模を拡大していきました。
冨田:その後、どのように事業が変化していったのですか?
別宮: 当初は純粋に介護事業を展開していましたが、知見が溜まっていくうちにケアマネジャーの重要性に気づき、ケアマネジャーの業務支援を目的とした専門ウェブサイト、「ケアマネジメント・オンライン」を開設し、リアルとウェブの2つの領域での事業展開を開始しました。その後、ウェブソリューション事業では、「ケアマネジメント・オンライン」を活用し、ヘルスケア企業向けにマーケティング・プロモーション支援を行う「シルバーマーケティング支援」サービス、顧客企業の従業員向けに、電話・メールでの介護相談窓口や介護情報を提供する「仕事と介護の両立支援」サービス等を展開しています。
冨田: そして、介護予防に特化したシルバーフィットネス型のデイサービス「レコードブック」を立ち上げたのですね。
別宮: そうです。リアルで介護をしていくなかで、大切なのは高齢者を介護状態にさせないための介護予防であることに気づき、高齢者の転倒防止、健康寿命の延伸をコンセプトとしたリハビリ型デイサービス、レコードブックの展開を開始しました。レコードブックが大きくヒットし、成長ドライバーとなったことで、2017年のIPOへ繋がりました。
上場後も、レコードブックをコア事業とし、拡大戦略を中心に展開しています。また、コロナを経験したことをきっかけに、レコードブックの周辺事業も変化させています。
昨年より、ご利用者様の日常生活をより深く、長く支えることを目指し、レコードブックと福祉用具貸与事業との連携や、子会社の新規連結により住宅リフォーム事業を開始しました。在宅時の生活環境を整えることで、レコードブックの非滞在時間も含めてご利用者様をサポートしたいと考えており、生活のすべての領域で転倒や骨折を防ぎ、健康寿命の延伸に資する事業展開が重要だと考えています。
冨田:これまでの経営で重要視されてきた意思決定のポイントは何ですか?
別宮:
私は現場主義を重要視しています。自分で現場に赴いて、ディテールを自分の目で見て確認することです。組織ですから報告や分析はありますが、最後の意思決定は自ら現場に赴いて判断することを大切にしています。
例えば、M&Aの決断も、経営企画部の皆さんに大変細かく分析していただいたデータで見る意思決定があるものの、一緒に仕事する仲間やトップ面談は必ず自分で行って対面でお会いすることが大切だと思います。データや分析ではわからない、対面ではじめて分かる相性といった部分もあると思うので、最後には自ら現場で確認することが大切だと思います。
冨田:確かに、現場主義がこれまでの成功に繋がっていると感じますね。
冨田:経営者としてのルーツや過去の経験から積み上がったご自身の強みという点で、どのようにご自身を客観評価されるでしょうか?
別宮:正直、自分の強みと言われるとピンとこないのですが、変化に対して前向きに受け止めることはできているかと思います。私は、20年以上会社の経営をしてきていますが、今回のコロナ禍による社会の変革は、20年以上経営していても大きなショックでした。今まで積み上げてきたものが崩れていくような感覚がありました。その一方、良い意味で会社の機能に再起動がかかり、それを経験してさらなる成長に向けた覚悟を決めることができました。変化に対応する大切さを学び、身につけることができたと感じています。
冨田:確かに、ITバブルの真っ盛りを経験されたことは大きいですね。
別宮:そうですね。20年経営していると、100年に一度と言われるような出来事が意外と頻繁に起こります。それらの経験から変化に対応することの大切さが身についてくると感じていますね。
冨田:今までお話いただいたのは過去のお話でしたが、これから未来に向けて、どのようなテーマが、事業の拡大に関連して起こるとお考えですか?
別宮:
当社は健康な未来を実現するため、超高齢社会における課題解決をミッションに掲げています。超高齢社会の課題解決のひとつとしては、社会保障制度を持続可能なものにしなければならないと考えています。特に若い方々にとって、社会保障費の増加や税率の上昇が大変な負担となる時代が訪れるでしょう。そこで我々は、ビジネスを通じて社会保障制度を持続可能なものにしようと考えております。
冨田:それでは、具体的にどのような取り組みが考えられるのでしょうか?
別宮:大きく2つの方向性でして、高齢者の健康を維持するための取り組みと、データやAIなどテクノロジーの活用です。我々は健康寿命の延伸を事業ドメインとして、これまで様々なアプローチを行ってきました。例えば、2025年問題です。これは人口ボリュームの大きい団塊の世代が皆さん75歳を超えて後期高齢者になることで、介護や医療が必要になり、社会保障費が増加するという問題です。そのため、我々は今後も健康寿命延伸事業を続けるとともに、転倒防止や骨折防止など、高齢者の健康を維持するための取り組みをさらに深掘りしていくことが一つの方向性です。
もう一つの方向性としては、2040年問題の解決に向けた取り組みです。この問題では生産年齢人口が大幅に減ることから、働き手が減少し、健康寿命の延伸と合わせて現場の生産性向上が必要になるとされています。
介護現場のDX支援やデータ、AI活用による生産性向上が重要になります。私がこの業界に興味を持ったのは、介護現場のIT化が遅れていることに衝撃を受けたからですが、20年経ってもほとんど変わっていない現状を改善したいと考えています。
冨田:関連するテーマだけでも、社会課題の解決に繋がり、大きく重要な市場となると感じますね。今後の展開が楽しみです。
冨田:最後に、描かれている未来構想についてお伺いしたいと思います。どのような未来の経営の姿や、実現したい未来構想がありますか?
別宮:まず、今お話ししたように、これからますます高齢化が進む日本では、生産年齢人口が減っていくことが明らかです。そこで、データやAIなどのテクノロジーを活用することで、介護の現場が一変すると考えています。そのときに、当社としてはフロントランナーとして、非常に速いスピードで走り続けていたいと思っています。
そして、世界で初めて経験した日本の超高齢社会を解決することで、課題解決ソリューションとして海外にも展開していきたいと考えています。特に、健康寿命延伸という領域では、世界から尊敬されるような日本の重要な産業として、私たちを中心に発展させていきたいと思っています。
冨田:確かに、日本は先進国の中でも最も高齢化が進んでいますね。その中で、介護のモデルを変える課題解決ソリューションは、BtoBの生産性側にも展開でき、エンドユーザーにも提供できるということですね。
別宮:はい、その通りです。特に健康寿命の延伸という、いつまでも自分らしく幸せな生活を送るための日本のモデルを、テクノロジーに裏打ちされたソリューションとして海外に輸出していきたいと考えています。
冨田:もしかしたら、今の40代や30代の健康にも関連するかもしれませんね。
別宮:当社の理念である「健康な未来を実現するために、創意革新と挑戦による、 超高齢社会における課題を解決する会社」として、これからも邁進していきます。投資家の皆さんには、ぜひ私たちの社会課題解決につながる事業にご理解とご支援をいただきたいと思っています。どうか応援をよろしくお願いいたします。
冨田:
今日は本当に貴重なお話を伺い、社会課題解決にもつながる介護事業の魅力を改めて感じることができました。ありがとうございました。