エッジAI領域でプラットフォームを構築してグローバル展開を目指す——Idein株式会社
大学では主に高性能計算の為の最適化コンパイラ技術を研究。
2018年、ARMの選定するARM Innovatorに日本人として初選出。
国立大学法人東北大学 共創戦略センター特任教授(客員)
AIの社会実装に必要なインフラとして、遠隔での大量のエッジAIデバイスの管理や安定運用を実現します。
大会への参加理由
——今回の大会に参加された理由や背景について教えていただけますか?
Idein株式会社 代表取締役 / CEO・中村 晃一氏(以下、社名・氏名略) 今回の大会に参加した理由は、当社がグローバルなメガプラットフォームを目指しているからです。海外展開を進める中で、ブランドとしての地位を確立したいと考えています。そのため、海外の投資家の皆様と直接交流する機会を得ることが重要です。彼らの期待に応えることで、当社のブランド価値を高めたいと思っています。
大会の感想
——実際にイベントに参加されてみての感触や感想をお聞かせいただけますか?
中村 非常に面白かったというのが率直な感想になります。審査員が後ろに並んでいて、その後にQAがあるという形式で、短い時間で一気に進行していくお祭りのようなイベントでした。初めて参加したので、短い時間で我々の価値を発信する場として非常に良い経験になりました。我々自身も自分たちの取り組みを見直す機会になりました。
——イベント後のネットワーキングについてはどうでしたか?
中村 あの場は結構人数が絞られている印象がありましたが、その後につながるようなコラボレーションも期待できる場だと感じました。
——様々なイベントにご出席されていると思いますが、今回のイベントの違いはどのように感じましたか?
中村 他のイベントと比べると、何を出せばいいのかという点で気合いを入れて取り組むことができました。審査員の方々や賞金の規模が大きいこともあり、得るものが大きそうな大会だという印象を持ちました。
——実際に参加されるにあたって、期待されていたことは何ですか?また、どのような成果が得られましたか?
中村 一番の期待は、海外の顧客やパートナーとの接点を得ることでした。機会としての認知も重要でしたね。それなりに期待通りの成果を得られたと思います。その後、相談の機会をいただいたり、国際会議に声をかけていただいたりしました。うちのファンのような方ともつながることができ、今後の発展が楽しみです。非常に価値のある経験でした。
自社事業の強み
——では次に御社の事業について教えてください。
中村 我々の事業は、エッジAIプラットフォームを提供することです。カメラやマイクなどのデバイスにAIを組み込み、人の目や耳の代わりに現場を可視化するソリューションを簡単に作成し、スケールできるプラットフォームを提供しています。月額制のサービス向けプラットフォームを展開している会社です。
我々のようなプラットフォーム型のプロダクトを活用頂くことで、通常開発に数億~数十億円かかる現場可視化やDXソリューションを数百万円から数千万円のコストで開発できるのが魅力です。
——なるほど。競合に対する強みについても教えていただけますか?
中村 国内ではおかげさまでトップクラスの実績を持っています。ファミリーマートの2000店舗や大手キャリアショップの全店舗など、多くのマーケットで活用されています。この実績が我々の強みです。さらに、競争に勝っている理由としては、安価なデバイスで高度なAIを実現する技術と、大規模に安定運用するインフラの技術、この二つが我々のコアな強みです。
——コストを削減できるソリューションを他社に先んじて展開できたポイントは何でしょうか?
中村 技術とマーケットの行く先を予見できたことかと思います。創業当初から市場が顕在化するタイミングを見据えて、技術の進化や必要なものを見極めることができました。創業メンバーの経験と知識、マーケット感覚が大きなポイントです。
——創業メンバーの強みについて詳しく教えていただけますか?
中村 私はもともとスーパーコンピューターの研究をしていたので、半導体やネットワーク、ソフトウェアに関するバックグラウンドを有しています。さらに、CTOの山田も半導体関連の研究開発の経験や、プロダクト開発や組織づくりに強みがあります。 ——中村社長自身が、研究フィールドからビジネスフィールドに移られたきっかけと、その結果について教えてください。
中村 自分の会社を持つことは良かったと思っています。元々は大学で自分の夢を追求しようと考えていましたが、IT分野に関しては民間企業の方が技術面でも先を言っている場面が多いです。ことAI分野においては、多くのリソース・データが必要であり、大学に残るよりも起業して事業を進める中で夢を追求した方が良いと考えました。結果的には、大学に残るよりも早くビジョンの実現に向かって進んでいます。
今後の展望/抱負
——次に今後の事業展望について教えていただけますか?
中村我々のビジョンはプラットフォーマーとして、パートナー企業と共に多くのエッジAIソリューションを世に生み出し、様々なドメインの現場課題を解決することです。プラットフォーマーの鶏卵問題を解くため、現在は様々な試行錯誤をしています。プラットフォーム型の事業は立ち上げが非常に難しいですが、そこを先に進めることが鍵となります。いかに早期に我々のプラットフォーム上で経済圏を構築するかが目下のチャレンジです。
そして、経済圏構築が見えてきた段階で、海外展開も並行して進めています。プラットフォーム事業はシェアが強ければ強いほど優位性が生まれ、魅力的な企業となります。日本国内での成功があれば、海外市場での展開も視野に入れています。
——実際、プラットフォーム事業の難しさについて具体的に教えていただけますか?
中村 いくつかの難しさがあります。特定のソリューションを自分だけで作るのに比べて、プラットフォームのインフラを作るのは大きな投資が必要です。プラットフォーム型の事業では、他のサービスが我々のプラットフォーム上に乗る形になりますので、売り上げの観点ではインフラ利用料だけをいただく形になります。そのため、投資が先行する割に売り上げが立つのが遅いという問題があります。この状況で投資家とどのようにコミュニケーションを取りながら進めていくかが課題です。
また、パートナーと事業を作る場合、ステークホルダーが増えるため、推進の難しさがあります。立ち上げ時は我々が直接やった方が早いのに、パートナーに使ってもらい、サービス化するステップを踏まなければならないので時間がかかります。しかし、これを乗り越えることでレバレッジの効いた強いビジネスモデルが構築されます。
——なるほど。では、今後必要となる御社のケーパビリティについてはどう考えていますか?
中村 海外展開を進めるためには、海外市場に対応できるチームを作る必要があります。また、プラットフォームビジネスを進めるためには、エコシステムの形成が重要です。クラウドプラットフォーマーのように、ユーザー企業が我々のプラットフォームでサービスを作り、加速していく仕組みが求められます。将来的には投資やMAなどのファイナンスによる手段を用いて、エコシステムの成長を加速させる手段も取りたいと考えています。
——海外展開の時間軸についてはどのように考えていますか?
中村 IPOまで待っていると遅いという印象があります。できるだけ早期に海外市場に進出する必要があると考えています。リソースの制約がある中で、如何に早期に海外に進出するか、その戦略が難しいところです。
現在のマーケットコンディションが悪いため、PLを悪化させることはできませんが、IPOまで待っていると手遅れになる可能性があり、先行者優位性の強い今の方が強い戦いができると感じています。数年後には競合が育ってくる可能性があるため、今のうちに海外市場に進出することを目論んでいます。
ZUU onlineユーザーへ一言
——記事の読者へ向けてメッセージをお願いできればと思います。特に投資に関心のある方々に向けて何か一言いただけますか?
中村 日本発でグローバルプラットフォームを目指すというのは非常に珍しい試みだと思います。特に海外の大企業はプラットフォームビジネスで圧倒的なシェアを持っています。日本のスタートアップや産業は、ソフトウェアの分野でまだ弱い部分がありますが、ブレイクスルーを目指すためには、我々のようなグローバルプラットフォームを目指す企業を応援していただくことが必要です。
我々のように、個人や国内に留まらず、国際的な挑戦をしている企業をぜひ支援していただきたいと思っています。そして、その支援に対しては、しっかりと成果を還元できるよう努めてまいります。
——本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
- 氏名
- 中村 晃一(なかむら こういち)
- 社名
- Idein株式会社
- 役職
- 代表取締役 / CEO