(画像=グローバル・オーシャン・ワークス株式会社)
増永 勇治 ―― グローバル・オーシャン・ワークス株式会社代表取締役社長
1969年鹿児島県指宿生まれ。鹿児島実業高校卒業後、25歳で地元の水産品加工会社に一般就職。30代での大病を患い克服後に一念発起して40歳で水産品加工会社(グローバル・オーシャン・ワークス㈱)を設立。持ち前の経営手腕で、15年間で養殖会社の買収、米国水産卸商社の買収を成し遂げ、グループ連結売上290億円までの水産グループに成長させる。
グローバル・オーシャン・ワークスグループは、ぶりの養殖から加工、全国の鮮魚・水産品の対米輸出と米国内の卸売販売を手掛ける水産グループです。2009年に設立、対米輸出を念頭に高度な加工技術と国際認証を保有し、政府の輸出振興を追風に急成長しました。現在ではぶりの対米輸出量の約1割を手掛ける民間最大のぶり輸出会社です。加工から開始しましたが、6次産業化と同じ思想で、米国の3次産業に進出した日本で唯一の企業です。

これまでの事業変遷について

——これまでの事業編成についてご説明いただければと思います。

増永 当社は2009年に創業し、ぶりを中心とした養殖、加工、そして販売を行っています。売り先は主に北米市場で、現地ではコンテナ事業も手がけています。現在、西海岸ロサンゼルス本社を中心にサンフランシスコ、アリゾナ、ソルトレイクシティ、デンバー、ヒューストン、ダラスの7つの拠点を展開しています。

日系の寿司レストランや韓国・中国系を含む日系スーパーマーケットに、水産品を卸しています。川上から川下までを一貫して手掛ける体制を整えており、現在、創業から15年を迎えました。

自社事業の強みについて

——一気通貫で幅広く事業を展開されていますが、特に一つ強みを挙げるとすれば何でしょうか?

増永 品質ですね。私たちは品質に自信を持っており、そこに重きを置いています。

——国際基準の品質を取得されたという記事を拝見しましたが、加工の部分にもこだわりがあるのでしょうか?

増永 原料の安全性を確保するため、当社では養殖にも取り組んでいます。参入障壁は多くありましたが、安全性と安定供給を実現するために必要なステップでした。

また、当社の加工場では徹底した温度管理をおこない、水を極力使わない加工方法を採用しています。多くの水産会社では水を流しっぱなしで加工しますが、当社ではほとんど水を使用しません。これにより、菌の増殖を防ぐとともに、余計な水分を製品に含めないことで、品質を保ちながら旨み成分を外に逃がさないようにしています。

——実現できる秘訣は何でしょうか?

増永 社員一人ひとりの意識の高さだと思います。会社や経営者がいくら方針を掲げても、個々の意識が高くなければ実現は難しいです。チームワークが当社の大きな強みであり、その高い意識が品質にも反映されていると感じています。

——文化の違いを乗り越えるためにどのように対応されたのですか?

増永 できることをコツコツと続けるしかありませんでした。途中でやめてしまうと何も進展しないので、根気強く伝え続けることの重要性に気づきました。長い時間がかかりましたが、それこそが大事だと実感しています。

ぶつかった壁やその乗り越え方

——ご経験の中で大きな壁にぶつかったことは何でしょうか。それをどのように乗り越えられたのか、お聞かせいただけますか?

増永 さまざまな壁に直面しましたが、特に大きかったのは業界の参入障壁でした。理不尽な要求を受けることも多く、そのたびに迷うこともありました。また、スタートアップとして資金繰りに関する問題も非常に悩ましいものでした。ただ、その不安を社員には見せられなかったので、前に進む姿勢を保つのは苦労した点です。

一方で、地元の金融機関の理解と支援がなければ、現在の私たちのグループは存在していなかったと思います。その点には非常に感謝しています。これまでの経験を通して、人の大切さを学びました。社員をはじめ、多くの方々に支えられてきたことを強く実感しています。

今後の経営・事業の展望

——特にファイナンス面での今後の展望についてお聞かせください。

増永 事業規模の拡大に伴い、資金調達の方法も見直す必要を感じています。これまでは地元の金融機関の協力を得て進めてきましたが、今後はさらにスピード感を持ち、人材、資金、物資の面で新たなアクションが求められると考えています。

M&Aによる相乗効果を狙うのか、IPOを視野に入れるのか、ここ3~4年の間にその選択肢について慎重に考えているところです。

——意思決定は社長ご自身が行うことが多いのですか?

増永 創業から10年目までは、アメリカでのM&Aを含め、すべて一人で判断してきました。しかし、ここ2年ほどは経営陣の強化を意識し、合議制を導入しています。特に、次の世代の経営陣の意見を重視し、彼らの考えに比重を置くようにしています。

——ECの工場計画があると伺いました。既存基盤を強化するのか、新しい分野に挑戦するのかなど、今後の事業展開をお聞かせください。

増永 ハマチの養殖を含む養殖産業は、成長産業だと考えています。世界的な人口増加に伴い、タンパク源の確保がますます重要になっており、海の資源を持続可能に活用する取り組みが求められています。国内では、B2CからD2Cを通じてフードロスの削減に取り組み、より細かい加工を施した商品作りに注力しています。

海外では、特に北米市場での拡大を目指しています。アメリカ全体の市場を見渡すと、まだ多くの地域にハマチを届けられていないのが現状です。中でも成長が著しいテキサス州に注目しています。またオリンピックやAPECなどのイベントは、日本の食文化を広める大きなチャンスです。

ZUU onlineユーザーへ一言

——最後に読者の皆様へ一言お願いいたします。

増永 私たちは今後もチャレンジを続けていきます。『水産の近代化』プロジェクトに向け、他産業のテクノロジーを積極的に取り入れていく必要があると考えています。この考えに賛同いただける方々には、ぜひ九州、特に私たちが活動している鹿児島にお越しいただきたいです。

また、アメリカで働きたい、もしくは挑戦したいという方がいれば、ぜひ一緒に取り組みたいと考えています。さまざまなチャレンジを共に進めていけることを楽しみにしています。よろしくお願いいたします。

氏名
増永 勇治
社名
グローバル・オーシャン・ワークス株式会社
役職
代表取締役社長
情報提供元: NET MONEY
記事名:「 養殖からグローバル市場へ! 水産業の近代化に挑む —— グローバル・オーシャン・ワークス株式会社