「人」を通じて社会に貢献するーーヒューマンホールディングス株式会社の事業戦略とは
大学卒業後、日興証券株式会社(現 SMBC日興証券)に入社。本郷会計士事務所(現 辻・本郷税理士法人)を経て、1991年11月ザ・ヒューマン株式会社に入社。ヒューマングループ各社の取締役を歴任し2002年、ヒューマンホールディングス株式会社を設立し、代表取締役社長に就任
目次
これまでの事業変遷について
冨田:創業からこれまでの事業変遷について教えてください。
ヒューマンホールディングス株式会社 代表取締役社長・佐藤 朋也氏(以下、社名・氏名略): 当社は教育事業から始まり、現在では人材・介護・美容・スポーツ・ITの6つの領域で事業を展開しています。
1985年の創業当初は、教育事業の職業訓練学校の運営からスタートしました。その後、教育だけではなく、その先の、学んだことを活かす場の提供、就職までお手伝いするべきだと考え、1988年に人材事業を始めました。また、教育事業でホームヘルパー養成講座の人気が高まる中、1999年に介護保険法が施行され介護人材が求められる気運を受け、我々自身が雇用を創出して修了生の受け皿になれるよう介護事業に着手しました。このように、教育事業で人材を育成し、人材事業でそれぞれの企業に繋げて就職していただいたり、当社の展開事業で働いていただく、「人を育て、社会に送り出す」というビジネスモデルを展開してきました。
その後、さらなる事業拡大を目指して上場を視野に入れ、持株会社の上場が解禁になったタイミングもあり、2002年にホールディングス化し、2004年にJASDAQ(現:東証スタンダード市場)に上場しました。上場後は、今で言うCSRに関する取り組みや、新規事業を積極的に展開してきました。例えば、バスケットボールチームを買収して2005年からプロリーグに参入し、スポーツ事業を開始するとともに青少年育成・地域貢献に取り組んでいます。また、教育事業でのネイル講座の人気から2006年にネイルサロン運営など美容関連事業を始め、さらに2011年には保育事業、2016年にはIT事業と、時代の変化やニーズに呼応する形で事業拡大してきました。
冨田:どんどん新しい事業が生まれて拡大されてきたのですね。社長が考える一番印象的な出来事は何でしょうか?
佐藤:やはり2004年の上場です。当時ホールディングスで上場している企業は少なく、当社は2社目でした。上場したことにより、これまでと比べて新しいものが求められるようになり、それまでの経営方法や価値観が変わりました。
経営判断をする上で最も重視していること
冨田: それでは、経営判断をする上で最も重視している点は何でしょうか?
佐藤: 私の経営判断軸は2つあります。1つ目は当社の経営理念「為世為人(世のため人のため)」に合っているかどうかということです。いくら儲かるビジネスでも経営理念に反しているのであれば、実施しません。2つ目は、教育とのシナジーを生む当社のビジネスモデルに当てはまっているかという点です。この2点をベースに、成長性や利益率などを判断基準として事業を進めています。
冨田:教育を中心に据えたビジネスモデルについて具体的に教えていただけますか?
佐藤:当社はさまざまな事業を展開していますが、全てに共通していることは、教育がベースにあるということです。例えばスポーツ事業では、プロクラブの下にスクールを設置しています。スク―ル事業での収益はもとより、育成したスクール生がクラブに上がりプロ選手になって活躍したり、スポンサーやブースターになることも期待できます。結局のところ、当社のビジネスは、“人”を中心に成り立っています。
冨田: 人を中心にというのは素晴らしい考え方ですね。
経営者としてのルーツ、過去の経験から積み上がったご自身の強み
冨田:経営者としてのルーツや過去の経験から佐藤社長ご自身の強みについてお聞かせください。
佐藤:現在に至るまで様々な経験をしたことが私の強みになっていると考えています。
もともと学生時代から独立志向があり、大学ではマーケティングを学びました。その時得た知識が、今でもビジネスを展開する上でのベースとなっています。また、学生時代にアルバイトで衆議院議員の秘書を1年間務め、世の中の仕組みを知ることができました。大学卒業後には証券会社に入り、自ら考え自ら行動する営業活動の楽しさを学びました。
その後、創業者である父から会社を手伝うように言われ、まず、会計事務所に入りました。会計士の方につき、会計の基礎を学び、その後、志願して資産税のチームに移りました。そこで、当時、出始めだったカラオケボックスを運営する新規事業を立ち上げ、商売の基礎を学ぶことができ、この経験は今の経営にも役に立っています。その後、当社に入社しましたが、資金繰りの安定化や、外的要因による二期連続赤字などの危機的状況に陥った際も会計処理の知識が役立ち、乗り越えることができました。これまでの全ての経験が今の私に繋がり、強みになっていると思います。
冨田:佐藤社長の経験は多岐に渡りますね。マーケティング、金融、会計など、攻めの部分と守りの部分を幅広く経験されていると感じました。これらの経験が経営者としての強みとして今に繋がっているのですね。
自社が今後関連していくテーマ、未来構想
冨田:貴社のこれからの未来についてお伺いしたいと思います。どのようなテーマに関連していくのか、将来の方向性や未来構想について教えてください。
佐藤:日本が抱える深刻な問題として、少子高齢化と労働人口の減少が挙げられます。これらの社会課題は、長年人を中心とする事業を展開してきた当社が取り組むべきものであり、当社の教育、人材、介護、保育などのアセットを活用することで解決できると信じています。
まずはそのものズバリですが、労働人口を増やすため、保育事業を通して、女性が積極的に働ける環境づくりを行う。労働力の確保において、保育事業はその一旦を担うと考えています。
もうひとつが人材事業です。人材事業では、現在、「海外ITエンジニア派遣サービス(GIT=Global IT Talent)」事業に力を入れています。この事業は、外国人のIT技術者に日本語教育を提供し、日本語を習得したIT人材を企業に派遣、日本で働いていただくことが目的です。日本の労働人口減少問題を解決する突破口にできると思っています。
一方で、労働の生産性を上げることにも注力しています。人材事業の中で、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)事業を展開しており、ツール販売から教育研修、業務請負まで一気通貫で行い、生産性向上と人的リソースのカバーためのサポートを行っています。
そして、教育事業では、リスキリングによって次世代の働き方に向けて新しいスキルを身につけていただくことで、IT人材の育成はもちろん、生産性向上やシニア人材活用などに繋げることができると考えます。 いずれにしても少子高齢化、労働人口減少は日本の深刻な課題ですが、ここをビジネスチャンスと捉え、当社のアセットを活かして解決し、ビジネスとしてより大きな成長を図っていきたいと思っています。
冨田:なるほど。それぞれのテーマが大きな市場であり、成長市場ですね。ヒューマンホールディングスの未来が非常に広がると感じました。
ZUU onlineユーザーへ一言
冨田:最後にZUU onlineユーザーに向けて一言お願いします。
佐藤:当社の「教育+事業」のビジネスモデルの国内展開と海外展開に着目していただきたいです。上記の資料には、横軸が売上、縦軸が仕入れとして、国内と海外のビジネス展開が示されています。
右上の「ジャパンプレミアムコンテンツ・タレントビジネス」では日本の優れた人材やコンテンツを使って海外でビジネス展開していきます。 そして、左下の「フォーリンプレミアムコンテンツ・タレントビジネス」では海外の優れたコンテンツや人材を日本に導入し、ビジネス化していきます。 これらを実現するには、どちらの事業においても教育が必要不可欠です。今後はさらに当社のビジネスモデルを強化し、この2つの事業領域を重要な戦略としてしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
- 氏名
- 佐藤 朋也(さとう ともなり)
- 会社名
- ヒューマンホールテ?ィンク?ス株式会社
- 役職
- 代表取締役社長