(画像=アーネスト株式会社)
鈴木 一矢 ―― アーネスト株式会社代表取締役社長
1968年愛知県出身。日本のみならず、中国での仕事を経験した後に、新潟へ戻りアーネスト株式会社へ入社。現在の売上の柱である『ベルフィーナパン』をCSのTVショッピングで仕掛けて大ヒットさせる。それを皮切りに、地上波のTVショッピングも開拓し、現在に至る。新たな販路として2019年にクラウドファンディングにも挑戦し、マイクロバブルアダプター『爽泡(さわわ)』を大ヒットとなった。2021年創立40周年の節目に代表取締役社長に就任。
1981年5月25日新潟県三条市桜木町にて「アイホー総業株式会社」を設立。創業してから10周年の際、起業当初の「アイホー総業」から現在の「アーネスト株式会社」に社名を変更。アイデアや機能性を加えた、日常の衣食住が楽しく、快適になるキッチン用品や日用品の企画販売。社会の人々の生活の中に「アーネスト」の道具を通じて、便利さと、夢と喜びを提供するという経営理念の元、事業を展開している。

これまでの事業変遷について

——創業から現在に至るまでの経緯を教えていただけますか。

アーネスト株式会社 代表取締役社長・鈴木 一矢氏(以下、社名・氏名略) 当社は現在の会長である父が創業し、2021年5月には創立40周年を迎えました。創業当初から、私たちの会社はキッチン用品を中心に展開してきました。特にアイデア商品に力を入れており、父はアイデアマンとして多くの商品を考案しました。現在では、商品開発課を作り、チームが7人在籍し新しい商品を生み出しています。

私は二代目として2021年に事業を引き継ぎました。引き継いだ当初はコロナ禍で家で料理をする人が増えたこともあり、業績は予想以上によかったですね。

——全従業員が商品提案をおこなう文化があると伺いました。

鈴木 そうですね。以前は毎月全従業員が商品提案をおこなっていました。今は人数が増えたため、4つのグループに分かれて毎月持ち回りで1人が最低1案の商品提案をおこなっています。現在でも、どの立場の社員でも新しいアイデアを形にすることを大切にしていますし、当社の特徴のひとつであると考えています。

——商品開発の過程で、特に成功した例や印象的な商品はありますか。

鈴木 たとえば、シュレッダーになるハサミがあります。実はこれ、最初はきざみ海苔を作るためのハサミとして販売していたものの、あまり売れなかった商品でした。しかし、これが名前と色を変えただけで大ヒットしました。当時は個人情報の保護が注目されていたこともあり、シュレッダーの代わりとして人気を博しました。

——時代のニーズに合致したのですね。

鈴木 そうですね。この商品も、シュレッダーが危険だというニュースが増えた時期に、より安全な代替品として注目されました。

(画像=刻み海苔ができます)
(画像=秘密を守りきります)

自社事業の強みについて

——御社が競合に対して優位性を持っている点や御社独自の強みとは、どのようなところだと感じていらっしゃいますか?

鈴木 さまざまな販売先を持っているところが大きな強みです。たとえば、売上で言うと通販が主力です。テレビショッピングが一番大きいですが、生協やカタログ通販もおこなっています。最近ではネットショッピングも含めて、幅広く展開しています。

——販売先の開拓にかなり注力されているということですね。

鈴木 そうです。どこの販売ルートに行っても「アーネストがいるね」と言われるくらいです。しかし、取引口座はあるけれど、十分に提案がしきれていないところもあるので、まだ改善の余地はあると考えています。

——ネット事業についてはどのように取り組んでいるのですか?

鈴木 以前はあらゆるところに出していましたが、どちらかというと今は整理してある程度集約し、ブランディングに注力しています。最終的には「アーネストの商品だから買う」という状態にしたいと考えています。

——ブランディングのためにどのような活動をされていますか?

鈴木 今までは社内で企画開発していたものを、より消費者目線での商品開発をおこなおうということで、アンバサダーマーケティングを2年前から始めています。

具体的には、アンバサダーの方を募集し、カラーリングや形状の仕様を決定する時にご意見をいただいたりと、消費者と一緒になった商品作りを意識しています。さらに、その過程もインスタグラムをはじめとするSNSを活用して情報を発信し、ファンを徐々に取り込んでいくことを目指しています。

(画像=ベルフィーナアンバサダーセレクション)
(画像=センターエッグトリプルパンmini)

また、私たちは自社工場を持っておらず、商品は外部で作ってもらっています。ファブレスのメリットを活かし、さまざまな商品を展開できるのが当社の強みです。

——ファブレスであることが多様な商品展開に繋がっているわけですね。最近注目している商品分野はありますか?

鈴木 最近では消耗品の需要が増えています。特にカメムシよけの商品が人気です。消耗品はリピート購入が期待できるため、選択肢を増やしています。売り切り商品だけでなく、継続的に購入してもらえる商品群を増やしていく方針です。

ぶつかった壁やその乗り越え方

——会社を経営していく中で一番困難だった時期や、それを乗り越えるためにどんな工夫をされたのか、お伺いできればと思います。

鈴木 私たちの会社は、昔はカタログ通販や生協さんがメインの顧客でした。もちろん、専門店などでの販売もおこなっています。しかし、今はテレビショッピングも売上のメインの柱になっています。

この背景には、新たな販路を開拓しないと、業績が立たなくなった時期があったためです。どこで売ればいいか、販路開拓は常に意識しています。それが成功の鍵だと思います。

——近年ではクラウドファンディングにも挑戦されていますよね。

鈴木 はい。クラウドファンディング事業では、最初はなかなかうまくいきませんでしたが、男性をターゲットにした訴求に変えたところ成功しました。特にマイクロバブルの洗濯機用アダプターは非常に好評で、1億円以上の売り上げを達成しました。

通常は洗濯用品だと女性向けのものが多いですが、弊社ではこのターゲットを男性に絞り、たとえば加齢臭が取れるなどといった訴求をおこなった結果、非常に多くの方にご購入いただきました。

——それは素晴らしいですね。今後もさまざまなプロジェクトが期待されますね。

今後の経営・事業の展望

——今後の課題や事業の展望についてお伺いしたいのですが、どのようにお考えでしょうか?

鈴木 現在、当社のメインの顧客層は高齢の女性です。テレビショッピングもカタログも主に60~70代の女性がメインターゲットになります。ただ、こうした状況が続くと先細りが懸念されるため、ネット販売に力を入れて売上を伸ばしていきたいと考えています。

また、もう1つは海外での販売展開です。現在は韓国、中国、台湾などのアジア圏での展開が中心ですが、市場の規模を考えると欧米にも進出したいと考えています。韓国では特にお弁当用品がよく売れるのですが、欧米市場はまだ開拓の余地があると見ています。

具体的には、地元である新潟の燕三条のブランドを活かしたキッチンツールの提案を考えています。燕三条は包丁や刃物の産地として知られているので、その強みを活かした商品を発信していきたいです。

——今後の拡大のためにM&Aのような動きは考えられていますか?

鈴木 さまざまなお話はいただいていますが、現実的には進めていません。私たちの強みはファブレス経営にあると思っているので、今は機動性を重視した経営をしています。どのような商品カテゴリーでも対応できるというのが、私たちの強みだと思います。

ZUU onlineユーザーへ一言

——最後に、ZUU onlineのユーザーに向けて、一言お願いできますか?

鈴木 今は多様なコラボレーションを通じて、地域ごとの特色を活かした取り組みを進めています。たとえば地元の燕三条地域においても、職人の町同士がお互いに協力することで、新しい価値を生み出せるのではないかと期待しています。

これからも新しい取り組みを通じて、さらなる価値を提供していきたいと考えていますのでぜひ注目していただきたいです。

——本日はお時間いただきありがとうございました。

氏名
鈴木 一矢
社名
アーネスト株式会社
役職
代表取締役社長
情報提供元: NET MONEY
記事名:「 全社員が生み出すアイデアで商品開発! アーネストの成長秘話と新たな挑戦 ―― アーネスト株式会社