- 週間ランキング
また6月に入ってから、MSCIフランス指数はMSCI欧州指数を大幅にアンダーパフォームしています2 。
この差異は主にフランスの政治的不確実性の結果であり、フランスの財政赤字への懸念からS&Pが最近フランス国債を格下げしたことで悪化しました。
マクロン大統領は、欧州議会選挙で極右政党が大躍進した直後に総選挙に踏み切りました。マクロン大統領は、国民議会(下院)の解散・総選挙の決定の理由を、「ナショナリストとデマゴーグの台頭は、わが国とヨーロッパにとって危険である。この日を経て、何事もなかったかのように振る舞うことはできない」と説明しました3 。
マクロンの中道政党がいかに不人気かを考えると、深刻な政治的不安定性のリスクがあります。極右政党「国民連合」のルペン党首は、同党が勝利してもマクロン大統領の辞任は求めないと述べ、懸念を和らげようとしました4 。これは、もし彼女の政党が政権を取っても、首相に選出された際は不安視されたものの、中道右派政権を樹立して前向きなサプライズを与えたイタリアのメローニ首相と似たような状況になるかもしれない、との希望を生むでしょう。
しかし現在の政治的不確実性は、資本市場統合などの欧州連合(EU)改革を達成しにくくするリスクをはらんでいます。また財政支出の拡大計画は、EU憲章に掲げられた「これまで以上に深い統合」へのナショナリストによる反対と相まって、EUの財政統合の実現を阻む可能性があります。これらは全て、EU単一市場を弱体化させることによって、イノベーション、競争、生産性、規模、成長を抑制する可能性があります。とはいえ、市場がこうしたリスクを織り込めば、欧州株の魅力的な買いの機会が生まれる可能性があります(私たちには、英国株の方が現在より魅力的に映っていますが)。
英国は、EUとは大きく異なる状況にあります。EUが政治的不確実性の渦中にあるのに対し、英国は、7月4日の総選挙に向けた世論調査で労働党が大差をつけてリードしており、政治的確実性はかなり高いように見えます。同党党首のキア・スターマー氏が次期首相となり、英国が中道左派政権に移行する展開が確実視されているようです。私たちは、欧州株と同様、英国株のバリュエーションは魅力的だと考えており、短期の政治的不安定性のリスクもないと考えています。
日銀は、6月会合で政策金利の据え置きを決定しました―ただし、間もなく国債購入の減額開始が予定されています。日本経済の正常化を支えた構造改革により、金融政策も正常化を開始できる見込みです。
隣国の中国の状況は、やや異なる様相を呈しています。内需の回復が続いており、中国では5月で4か月連続の消費インフレとなりました。直近の小売売上高は好調で、鉱工業生産も堅調でした。しかし、不動産セクターが引き続き懸念材料となっています。中国人民銀行は6月会合で、政策金利を現行水準に据え置くことを決定しましたが、これは現時点で利下げのメリットよりもデメリットの方が上回ると考えられたためでしょう。
新興国の選挙にも地域差が見られます。ここ数週間で、メキシコ、南アフリカ、インドの選挙でサプライズがありました。南アフリカとインドでは現行政権への支持が低下しましたが、メキシコでは上昇しました。
南アフリカでは、支持を大幅に失ったシリル・ラマポーザ氏率いる現行のアフリカ民族会議(ANC)政権が、同氏の再任を含む中道的な連立政権の形成に成功したようです。これは、扱いにくい統一や経済自由の戦士党を含む左派連合よりも、市場にとっては魅力的に映るようです。この結果は、投資家にとって明らかに重要である安定性を意味します。
インドでは、ナレンドラ・モディ首相の人気と議席数獲得への期待に反して、議席数減となったサプライズに対し、市場は当初否定的な反応を示しました。その後モディ首相は連立政権を樹立し、政権維持が可能となりました。彼は4つの主要省(財務、外務、内務、国防)の大臣を再任し、連立パートナーを含めるべく内閣を72名に拡大しました。私は、これは市場に好意的に受け止められ、今後もそう捉えられるべき前向きな結果だと考えています。
市場が最も否定的な反応を示したのは、メキシコの選挙結果でした。選挙で躍進したことで、クラウディア・シェインバウム政権が国を左傾化させるお墨付きを得たと考えるのではないかと懸念されています。しかし、そのような事態は限定的となりそうです。尊敬を集める堅実な人物で知られるロヘリオ・ラミレス・デラオ財務公債相が引き続き任にあたるとみられますが、これは投資家にとってマクロ的安定性を示唆するものです。
私たちは、株式のバリュエーションが高くなっていることから、インドでは債券の方が株式よりも魅力的だと考えていますが、上記の3つの国の中ではインド市場が最も魅力的に見えます。南アフリカのリリーフ・ラリーはまだ続く可能性があります。投資家がメキシコの資産により大きな信頼感を持つためには、左翼的と捉えられ過ぎないような政策が確認されることが必要でしょう。
米国消費の力強さについて様々な見方があることから(消費者センチメントに関する先週のデータは低調でした)、今週は、米国小売売上高に注目したいと思います。また、ユーロ圏と英国のインフレデータ及び購買担当者景気指数(PMI)も発表されます。また今週は、中央銀行の動向にも地域差が見られる可能性があります。イングランド銀行とオーストラリア準備銀行会合で金利が据え置かれる可能性が高い一方で、スイス国立銀行は今週の会合で利下げを決定するだろうと幅広く予想されています。
公表日 | 指標等 | 内容 |
---|---|---|
6月17日 | ECBラガルド総裁講演 | 中央銀行の意思決定プロセスについて 更なる洞察を与える |
6月17日 | カナダ住宅着工件数 | 住宅市場の健全性を示す |
6月17日 | ニューヨーク連銀製造業 景気指数 | ニューヨーク連銀がニューヨーク州の 製造業を調査 |
6月18日 | オーストラリア準備銀行 金融政策決定 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
6月18日 | ドイツZEW景況感 | 今後6カ月間のドイツの景況感を測定 |
6月18日 | ユーロ圏CPI | インフレの動向を示す |
6月18日 | 米国小売売上高 | 小売セクターの健全性を示す |
6月18日 | 米国鉱工業生産 | 鉱工業セクターの健全性を示す |
6月18日 | 日銀金融政策決定会合 議事要旨 | 中央銀行の意思決定プロセスについて 更なる洞察を与える |
6月19日 | 英国CPI | インフレの動向を示す |
6月19日 | 英国PPI(生産者物価指数) | インフレの動向を示す |
6月19日 | ブラジル中央銀行 金融政策決定 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
6月20日 | スイス国立銀行 金融政策決定 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
6月20日 | イングランド銀行 金融政策決定 | 金利の道筋に関する最新の決定を発表 |
6月20日 | ECB経済ブレティン | 政策決定の基礎となる経済・金融情報を 提供 |
6月20日 | ユーロ圏消費者信頼感指数 | ユーロ圏の消費者センチメントを測定 |
6月20日 | 日本購買担当者景気指数 | 製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
6月20日 | 日本CPI | インフレの動向を示す |
6月21日 | 英国小売売上高 | 小売セクターの健全性を示す |
6月21日 | ユーロ圏購買担当者景気指数 | 製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
6月21日 | 英国購買担当者景気指数 | 製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
6月21日 | カナダ小売売上高 | 小売セクターの健全性を示す |
6月21日 | 米国購買担当者景気指数 | 製造業とサービス業の経済の健全性を示す |
6月21日 | 米国景気先行指数 | 景気循環の重要な転換点と短期の経済の 方向性を先行して示す |
クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト
ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。
The post グローバルに地域差が広がる中で、投資機会はどこにあるか? first appeared on Wealth Road.