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2022年においては、消費者信用の増加が、米国家計の消費性向のコロナ前比での大幅な上昇を支えました。しかし、2023年に入ると、消費者信用の減速が、家計の消費性向を押し下げることになりました(図表3)。今後は政策金利の引き上げとそれ伴う金融機関の貸出態度の厳格化によって消費者信用にはさらに減少圧力がかかり、米国経済に減速圧力をもたらすと見込まれます。
この減少圧力の悪影響を比較的強く受けるとみられるのが低所得層です。米国の失業率は9月に3.8%という低水準にあり、米国の労働市場は所得階層にかかわらず仕事に就きやすい環境にあると言えますが、インフレやローン金利の上昇によって低所得層の消費者クレジットの返済負担は増しており、それが、リボルビングローンの足元での増加につながっている面があるとみられます。また、ミシガン大学の消費者信頼感指数を所得階層別にみると、過去1年間の消費者マインドは所得上位3分の1の層では大きく改善したのに対し、所得下位3分の1の層ではほとんど改善がみられませんでした(図表4)。
以上のように、消費者信用の減少が、今後、家計の消費性向の低下につながるとみられます。これとあわせて消費性向の低下をもたらすとみられるのが、コロナ禍での家計の超過貯蓄の枯渇です。もっとも、その時期についてはこれまでの想定よりもややあとずれする可能性が高いと考えられます。金融市場では、超過貯蓄は枯渇寸前であると言う見方が強かったのですが、9月28日に米商務省がGDP統計を大きく改訂したことで(基準年も2012年から2017年に変更されました)、家計貯蓄や消費についてのデータも合わせて遡及改訂されました。新しいデータに依拠して、家計の超過貯蓄の年間民間消費額に対する比率を算出すると、2023年9月時点で5.7%でした。これを踏まえると、超過貯蓄はまだしばらくの間、相対的な消費性向の高さをサポートする可能性があります(図表5)。この点は、家計の可処分所得自体が、実質総賃金のしっかりした伸びで堅調に増加しつづけるリスクと合わせて、米国景気が想定外に強さを維持し、その結果として、インフレ圧力とFRBのタカ派的な政策をもたらすリスクを高めると言えるでしょう。今後のグローバル金融市場をみるうえでは、米国の消費動向とともに、米国の消費者信用や家計の超過貯蓄の動きにも注意したいと思います。
木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト
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MC2023-170
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