インフレでも「全部投資」は危険? 運用していいお金・いけないお金の仕分け方
以前、「お金の価値を考えてみよう!インフレの状況で現金保有は最低限にした方がいい理由とは?」でインフレとは「物価が上がること」であり「お金の価値が相対的に下がっていくこと」だと説明をしました。
今回は、インフレでお金の価値が下がるとはいえ、全てのお金を運用に回すべきではなく、しっかりと「運用していいお金」と「運用してはいけないお金」の線引きをしなければいけない理由について解説します。
インフレ対策投資の”やり過ぎ”リスク
近年のインフレ対策として投資を始めたという方も増えていることでしょう。それ自体は悪いことではありません。しかし、過度にインフレを恐れ、財産の多くを株式投資に回すケースなどは考えものです。
過度に運用に資金を回している場合、損失発生時に現金が必要になると売りたくない場面で売らざるを得ないという不利な選択を招く可能性があります。そうなれば、インフレのダメージより損失のダメージの方が大きいという本末転倒な事態を招く恐れもあります。
そうならないためにもお金を4つのグループに分類し、インフレ対策として投資する資金とそうでない資金を区別しましょう。
用途に応じて4グループに分類して、手段を選択する
運用する資金かどうかを判断するために、財産を次の4つにグループ分けしてみましょう。
- 生活防衛資金
- 数年以内に使う予定のある資金
- 教育資金など時期が確定している資金
- 余剰資金
基本的に、リスクを取って株式などで運用するのは4番の余剰資金であり、インフレ対策が必要なのも4番です。その理由も含めて、それぞれについて解説します。
生活防衛資金は、「今の自分の自由」のため
生活防衛資金とは、今の自分の選択肢を確保するための資金です。日常生活において突発的な支出が発生したり、転職する可能性もあります。その時に備えて、生活費の数カ月〜1年分程度の現金を残しておく必要があります。
なぜ生活防衛資金が「今の自分の自由」のためなのかを考えてみましょう。
例えば、手元の現金が30万円で、運用資金が1億円ある人を想像してみてください。
株式市場が好調な時や運用資産に利益が出ている時は「いつでも売ってよい」という感覚があるため、この人が心理的に自由に使えると感じるのは、総財産の1億30万円だと思います。
しかし、仮に株式市場が暴落し、1億円の運用資産が5,000万円まで値下がりしたとしましょう。投資家目線で考えれば、暴落時の安いタイミングで売るのは悪手です。つまり、この人は5,000万円という資産を保有してはいるものの「使えない資産」となります。
ということは、この人にとって暴落時に自由に使える財産は、手元の現金の30万円しかないことになります。そして、何かしらの突発的な支出が発生して30万円を使い切ってしまえば、売りたくない時期に株を売らざるを得なくなります。
つまり、生活防衛資金とは運用のためであり、マーケットがどのような状態であったとしても、その瞬間の自分の選択肢を狭めないために、ある程度残しておくべき資金と言えます。
数年以内に必要となるお金や教育資金は資産運用には適さない
次に数年以内に必要となる資金について考えてみましょう。住宅購入の頭金や車の買い替え資金、リフォーム資金などが挙げられます。これらの資金については確実に必要になる資金であること、また期間が短いことを考えると資産運用にはあまり適さないお金です。
そして、数年以内に使う予定のある資金については、インフレ対策を理由に無理にリスクを取って運用する必要はありません。現在、5年ものの定期預金で年1.5%程度の金利を設定する金融機関もあります。また個人向け国債の固定5年の金利は2.24%(第186回 固定金利型5年満期)となっています。
2026年7月のコア消費者物価指数は前年同月比1.8%上昇(総務省「2025年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)7月分」)しています。物価は上昇していますが、預金や国債など、元本の安全性を重視した金融商品でも一定の金利を得られる環境になっています。そのため、数年以内に使う予定のある資金については、インフレ対策だけを理由に株式などのリスク資産へ振り向ける必要性は低いでしょう。
3つ目の教育費なども同様に考えていく必要があります。教育費とは必要な時期が決まっており、不足すれば教育ローンや奨学金などの借入の可能性すらある資金です。運用とはリスクがあるものですから、必ずしも増えて終わるわけではありません。教育資金を運用するということはそのリスクを背負うということです。
この観点から、20年近い運用期間が取れるのであれば株式比率を抑えたバランスファンドなどは視野に入りますが、10年程度であれば元本保全性を優先する方が良いと思います。
余剰資金はリスクを取って運用したい
余剰資金とは先の3つのグループに入らない資金であり、長期で分散投資し、インフレ率より高い利回りを求めて投資するべき資金です。
長期投資とは、ただ売らずに保有し続けることで時間を味方につける投資手法です。人が投資を辞めるのは「心理的な理由」と「経済的な理由」です。余剰資金以外を確実に準備するのは経済的な理由で運用資金を売却する可能性を極力小さくするためです。
そして、心理的な理由で投資を辞めないために大切なことはリスク許容度に応じたポートフォリオで運用することです。しかし、リスク許容度とはなかなか自分で把握することが難しいのも事実です。
例えるなら、辛い食べ物が好きで自分は辛さに強いと思っている人でも、許容範囲というものがあります。自分の限界は食べてみないとわからないものであり、そういった経験から僕たちは自分の耐えられるラインを把握していきます。
投資も同じです。まずは始めてみないとわからないことは多くあります。だからこそ、余剰資金については少額からでも投資を始めてみることをおすすめします。
※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。
※本稿は著者の見解に基づくものであり、Wealth Roadの運営会社の見解を示すものではありません。
著者:井上ヨウスケ
役者から転身した異色のファイナンシャルプランナー。演劇で培った「伝える力」を活かし、「誰よりもわかりやすく」をモットーにお金の知識を発信。27歳でFP資格を取得し、独立系FPとして講演や相談業務を展開。動画講座やYouTubeでも活動し、「どこでも働ける」を実現。投資や保険の知識に加え、価値観を軸にした柔軟なお金の使い方も提案する。現在は高知県在住。
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