医学部入試の多様性推進、受験者の背景考慮に課題
PRワイヤー 2026年10月21日 14:00:00
2026年10月21日
岐阜大学
医学部入試の多様性推進、受験者の背景考慮に課題 ~全国の医学部リーダーへの調査で認識の違いを可視化~
本研究のポイント
・ 全国82医学部の医学部長や医学教育責任者らを対象に、学生の多様性と入学者選抜に関する認識調査を依頼し、131人から回答を得ました。
・ 回答者は学生の社会経済的多様性の拡大を支持する一方、入学者選抜では能力や人間性をより重視していました。
・ 進学機会の拡大には、選抜方法だけでなく、「能力」や「公平性」をどのように捉えるのかについて議論することが重要だと示唆されました。
研究概要
近年、家庭の経済状況や教育環境にかかわらず、医師を目指せる機会をどのように保障するかが問われています。
岐阜大学医学教育開発研究センター(MEDC)の招へい教員である鈴木康之名誉教授、野村理教授、西城卓也教授らの研究グループは、全国の医学部長や医学教育責任者らを対象に、学生の多様性と入学者選抜に関する認識を調査しました。調査の結果、回答者は、社会経済的に多様な学生を受け入れることや進学機会の拡大を支持していました。一方、選抜で重視する項目としては、認知能力や非認知能力、人間性などに比べ、社会経済的に不利な背景への評価は低いことが分かりました。
本研究は、医学部入試における公平性を考えるための基礎資料となるものです。
本研究成果は、2026年10月14日に国際学術誌「Medical Teacher」にオンライン掲載されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610208317-O2-0KE7wrro】
図1 医学部リーダー131人の回答分布(全17項目)
研究背景
医学部への進学機会には、家庭の経済状況や教育資源へのアクセスが関わっています。進学機会の拡大(Widening Participation:WP)とは、こうした背景による不利を軽減する取り組みです。しかし、入学者選抜方針に関わる医学部リーダーが、多様性や公平性をどのように捉えているかは、これまで十分に分かっていませんでした。
研究成果
2025年4〜5月、全国82医学部のリーダーらを対象にウェブ質問紙調査を実施し、131人から回答を得ました。図1は、回答者の認識を、A「多様性・支援策」、B「市民・教育者の意見」、C「選抜で重視する項目」に分けて示しています。各帯の青色の割合が大きいほど、その設問への同意が強いことを表します。
① 多様性の拡大を支持する一方、積極的支援策には意見の幅(図1A)
「不利な背景の学生の受け入れ拡大」(Q2)と「進学機会拡大の必要性」(WP、Q3)は、回答の中央値がいずれも6点でした。一方、「不利な背景を持つ志願者への積極的支援策」(Affirmative Action:AA、Q4)は5点で、他の政策項目より同意が低く、回答も分かれていました。
② 出願機会の格差を認識し、早い段階からの支援に同意(図1B)
「医学部への出願機会に社会経済的格差がある」(Q6-3)と、「中等教育段階からの支援の必要性」(Q6-5)は、中央値がいずれも6点でした。一方、「家庭収入への驚き」「学生の背景の均質性」「受験中心の進路指導の弊害」は5点で、同意の程度に違いがありました。
③ 選抜では、背景よりも能力・人間性を重視(図1C)
「認知能力」「非認知能力」「人間性」「医学を学ぶ動機」(Q7-1〜Q7-4)は中央値が6〜7点でした。一方、「人生経験」「出身地域」「社会経済的に不利な背景」(Q7-5〜Q7-7)は4〜5点でした。特に、「社会経済的に不利な背景の考慮」は4点で、「認知能力」「非認知能力」「人間性」「動機」の4項目より低い評価でした。
以上の結果から、多様性の拡大や教育機会の格差への認識と、入学者選抜で受験生の社会経済的に不利な背景を考慮することへの認識には隔たりがあることが分かりました。ただし、本研究は限られた回答者による探索的な横断調査であり、全国の医学部リーダー全体への一般化や、実際の入試運用・因果関係の判断には限界があります。
今後の展開
進学機会の拡大に向けては、選抜手法の見直しに加え、「能力」や「公平性」をどう捉えるかについての対話が重要と考えられます。今後は、質的研究などを通じて、こうした考え方が形成される背景を詳しく検討する必要があります。
論文情報
雑誌名:Medical Teacher
論文タイトル:Perceptions of medical school leaders towards widening participation: a Japanese survey
著者:Yasuyuki Suzuki, Osamu Nomura, Koji Tsunekawa, Yuko Takeda, Takuya Saiki
DOI:10.1080/0142159X.2026.2743051
研究支援
本研究は以下の研究助成を受けて実施されました。
日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究C「我々は将来の医療を誰に託すのか?:医学部入学者の多様化推進に関する政策的研究(23K09598) 」
情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 医学部入試の多様性推進、受験者の背景考慮に課題 」