アレルギー性皮膚炎の再燃予防へ



2026年10月13日

京都大学

岐阜大学



皮膚に残る「再燃の火種」を発見 ―アレルギー性皮膚炎の再燃予防へ―



 



 



概要



 京都大学大学院医学研究科の椛島健治教授、岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンターの朝比奈良太特任准教授(研究当時:京都大学大学院医学研究科)らは、アレルギー性皮膚炎が治まった後も皮膚に残る「再燃の火種」となる免疫細胞と、その維持の仕組みを明らかにしました。



 複数のマウスモデルを解析した結果、炎症が治まった後も皮膚に残る記憶T細胞の中から、皮膚炎を再び引き起こす「火種」となるCXCR6陽性の記憶T細胞を特定しました。この細胞は、皮膚の血管周囲で樹状細胞とクラスターを形成して「免疫細胞の拠点」となり、CXCL16を介した樹状細胞との相互作用によって維持されていました。さらに、アトピー性皮膚炎患者の皮膚でも、症状改善後も同様のクラスターが残ることを確認しました。



 本研究により、「再燃の火種」の実体と、それを支える「免疫細胞の拠点」の仕組みが明らかとなり、アレルギー性皮膚炎の再燃を防ぐ新たな治療法につながると期待されます。



 本研究成果は、2026年10月12日午前11時(米国東部時間)に国際学術誌「Immunity」にオンライン掲載されました。



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610097610-O2-6s2TgH4W】



作成:朝比奈良太|生成AI:OpenAI ChatGPT(GPT-5.6 Sol)



 



 



1.背景



 アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー性皮膚炎は、症状が改善しても再び悪化する「再燃」を繰り返すことが特徴です。治療の進歩によって、皮膚の炎症やかゆみを抑えることが可能になってきましたが、再燃の予防は依然として重要な課題です。



 近年、免疫細胞であるT細胞の中でも、「組織常在性記憶T細胞(TRM細胞)」(注1)が、再燃に重要な役割を果たすことが分かってきました。TRM細胞は、炎症が治まった後も組織に長期間とどまり、再び刺激を受けると素早く免疫反応を起こす記憶T細胞です。TRM細胞には性質の異なるさまざまな細胞集団が存在しますが、どの細胞集団が再燃を引き起こすのか、また、その細胞が炎症の治まった皮膚でどのように維持されているのかは、十分に分かっていませんでした。



 そこで本研究では、炎症が治まった後の皮膚に着目し、再燃を引き起こすTRM細胞の特徴と、その維持の仕組みを明らかにすることを目指しました。



 



 



2.研究手法・成果



 研究グループはまず、複数のアレルギー性皮膚炎のマウスモデルを用いて、炎症が治まった後の皮膚に残るTRM細胞を詳しく解析しました。その結果、細胞表面にCXCR6(注2)という分子を持つ特徴的なTRM細胞を発見しました。このCXCR6陽性TRM細胞は、再び刺激を受けると炎症を促す物質を多く産生し、皮膚炎の再燃を引き起こす「火種」となることが分かりました。



 次に、この「再燃の火種」が炎症後の皮膚にどのように残っているのかを調べたところ、血管周囲で樹状細胞(注3)とともに「免疫細胞の拠点」を形成していました。さらに、二光子顕微鏡(注4)を用いた生体イメージングにより、皮膚に再び刺激を加えると、この拠点の周囲で炎症反応が急速に起こる様子をリアルタイムで捉えました。



 続いて、この「再燃の火種」が炎症後も皮膚に残り続ける仕組みを調べました。研究グループは、CXCR6と結合するCXCL16(注5)という分子に着目しました。CXCL16は樹状細胞などによってつくられ、その働きを抑えると、CXCR6陽性TRM細胞が減少し、皮膚炎の再燃も抑えられました。この結果から、「免疫細胞の拠点」での樹状細胞との相互作用が、「再燃の火種」を皮膚に維持するために重要であることが分かりました。



 最後に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚を解析したところ、症状が改善した後も、CXCR6陽性TRM細胞と樹状細胞からなる同様の「免疫細胞の拠点」が残っていることを確認しました。



 



 



3.波及効果、今後の予定



 本研究により、アレルギー性皮膚炎の症状が治まった後も皮膚に残る記憶T細胞の中から、再燃を引き起こす細胞集団と、その維持の仕組みが明らかになりました。炎症やかゆみを抑える治療に加えて、再燃を引き起こす細胞を選択的に標的とし、再燃を防ぐ新たな治療法につながることが期待されます。



 一方、本研究で再燃を抑える効果を検証したのはマウスモデルであり、この仕組みを標的とすることでヒトでも再燃を抑えられるかは、まだ分かっていません。今後は、ヒトのアトピー性皮膚炎におけるこの仕組みの役割をさらに検証するとともに、他の慢性・再発性の炎症性皮膚疾患にも同様の仕組みが存在するのかを調べ、治療への応用を目指します。



 



 



4.研究プロジェクトについて



 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(19K15980、20J00115、22K15010、25K02175、20H05697、25H00442)、日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「多細胞間相互作用による皮膚バリアの適応・修復機序の解明」および「皮膚における生活環境ストレスマーカーの探索とアトピー性皮膚炎の層別化医療への展開」、Maruho Grant-in-Aid Program、コーセーコスメトロジー研究財団、日本イーライリリー株式会社研究助成、LEO Foundation、藤原記念財団、清水免疫学・神経科学振興財団の支援を受けて実施されました。



 



 



<用語解説>



(注1)組織常在性記憶T細胞(TRM細胞):一度出会った抗原(免疫系が認識する物質)を記憶し、皮膚などの組織に長期間とどまる記憶T細胞。再び同じ抗原に出会うと、素早く免疫反応を起こす。



 



(注2)CXCR6:主にリンパ球の表面に存在し、本研究ではさまざまなTRM細胞の中から、再燃を引き起こす集団を見分ける目印となった分子。



 



(注3)樹状細胞:抗原を捉え、その情報をT細胞に伝えることで、免疫反応を調節する役割をもつ免疫細胞。



 



(注4)二光子顕微鏡:生きた状態のまま、体内の組織をリアルタイムで観察できる顕微鏡。



 



(注5)CXCL16:免疫細胞の移動などを調節する「ケモカイン」と呼ばれる分子の一種。樹状細胞などによってつくられ、CXCR6と結合する。



 



 



<研究者のコメント>



アレルギー性皮膚炎では、再燃が大きな課題です。本研究がその解決への一歩になればと考えています。生体イメージングで「免疫細胞の拠点」周囲の炎症を捉えた時は、忘れられない瞬間でした。ご指導いただいた椛島健治先生をはじめ、研究を支えてくれたラボメンバーと家族に感謝します。獣医師・研究者として、ヒトと動物の医学をつなぐOne Medicineを実践し、再燃を繰り返す皮膚疾患の克服に挑み続けたいと思います。(朝比奈良太)



 



 



<論文タイトルと著者>



タイトル:



Skin-resident CXCR6+ memory CD4+ T cells and dendritic cells form dermal perivascular hubs that drive relapse in allergic dermatitis



(皮膚常在性CXCR6陽性記憶CD4陽性T細胞と樹状細胞は、アレルギー性皮膚炎の再燃を駆動する真皮血管周囲の免疫拠点を形成する)



著者:



Ryota Asahina, Fuuka Minami, Satoshi Nakamizo, Toshiya Miyake, Satoru Yonekura, Toshiaki Kogame, Shuto Kanameishi, Kosuke Katsuo, Hiroyuki Irie, Saeko Nakajima, Takashi Nomura, Akihiko Kitoh, Gyohei Egawa, Kenji Kabashima



掲載誌:Immunity



DOI:10.1016/j.immuni.2026.09.010



 



 



<参考図表>



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610097610-O4-0wvXj1NH】



図1.「免疫細胞の拠点」周囲で炎症が起こる様子を捉えた



炎症が治まったマウスの皮膚を再刺激し、二光子顕微鏡で皮膚内部を生きたまま観察しました。再刺激後、「免疫細胞の拠点」の周囲で血管から蛍光物質が漏れ出し、時間とともに広がる様子が観察されました。



 



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610097610-O5-n8e1Pxa5】



図2.CXCL16の働きを抑えると、皮膚炎の再燃が抑制される



CXCL16の働きを抑える抗CXCL16抗体をマウスに投与すると、「免疫細胞の拠点」とCXCR6陽性の組織常在性記憶T(TRM)細胞(「再燃の火種」)が減少しました。その結果、皮膚を再刺激した際の炎症も抑えられました。



 



 



【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202610097610-O6-kr9zbZUC】



図3.治療後のアトピー性皮膚炎患者の皮膚にも「免疫細胞の拠点」が残る



アトピー性皮膚炎患者の皮膚を治療前後で解析しました。治療によって皮膚炎が大きく改善した後も、CXCR6陽性の組織常在性記憶T(TRM)細胞を含む「免疫細胞の拠点」が皮膚に残存していました。



 



情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 皮膚に残る「再燃の火種」を発見 」