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アキレスの知られざる「命を守るものづくり」



大雨や台風のたびにテレビや新聞で目にする、浸水被害を受けた街と救助にあたるレスキューボート。実は、画面に映るボートにはアキレス製も多く、日本国内でほぼ手作業でつくられていることは、意外と知られていません。今号では、アキレスがレスキューボートをつくり続ける理由を、事業の背景やものづくりへの想いからたどります。



 



救助のかたちが変わってきた



かつてボートによる救助は、川や海で溺れた人を助ける「水難救助」が中心でした。しかし近年は、異常気象の影響で記録的な豪雨が増え、街が浸水し、逃げ遅れた住民を運ぶ「水害救助」の場面が増えています。ニュースで見る救助の場面も、その多くが後者に移り変わってきています。



 



<街が浸水したら・・・避難について知っておきたいこと>



国土交通省の資料によると、水深が大人の膝の高さ(0.5m前後)を超えると、歩いての避難は困難になるとされています1)。危険な状況になる前に、早めに高い場所へ移動する「垂直避難」が基本です。



浸水した際に特に注意したいのが、マンホールです。地下の下水管に大量の水が流れ込むと、その水圧でマンホールのふたが外れてしまうことがあります。見えない水面下に発生した落とし穴に足を踏み入れてしまう危険性があるのです。



 



全国で拡大する水害への備え



「うちの街には、レスキューボートは何艇備えてあるんだろう?」——実は、水難救助用器具に全国一律の保有数の基準はなく、「地域の実情に応じて」備えているのが現状です2)。近年は「内水氾濫(川の近くでなくても、下水などの排水が追いつかず浸水すること)」の被害も知られるようになり、備えを見直す自治体や企業が増えています。



 



<ドローンとレスキューボートの連携も>



「水害救助」の場面では、最新技術の活用も進んでいます。以前はヘリコプターが頼りであった上空からの捜索において、近年はドローンの活用が身近になり、発見までのスピードが上がっています。最新技術でいち早く発見し、レスキューボートで救助する —— 近年、こうした連携も見られるようになりました。



 



60年以上にわたるレスキューボート事業で、水難・水害救助の現場を支え続けてきたのが、アキレス株式会社です。その技術と開発の舞台裏をご紹介します。



 



 



レスキューボート開発の舞台裏



アキレスのレスキューボートは、素材となるゴム引布開発から完成まで、ほぼ全ての工程を自社で手掛けています。今回、事業を長年けん引してきた担当者に、その歩みとものづくりへの想いを聞きました。



 



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アキレスがなぜボートをつくるのか ―ボート事業の始まり―



Q. アキレスがボートをつくっているというのは、意外に感じる方も多いのではないでしょうか。このレスキューボート事業はどのように始まったのですか?



元をたどると、戦時中に軍から依頼された防毒マスクづくりに使われていた、布にゴムを塗る加工技術に行き着きます。戦後はこの技術で長靴づくりが始まり、アキレスは靴の会社として知られるようになりました。同じ技術を用いたゴムボートづくりは、1960年ごろから本格化しました。きっかけは、海外のアウトドア企業からいただいた、レジャー用ボートの大口注文でした。その後、レジャー向けにスタートしたボートづくりは、気候変動に伴う水害の増加などを背景に、新たな役割を担うようになります。救助の現場で貢献する機会が広がり、2006年から水難・水害救助を支えるレスキューボート事業につながったのです。



 



使う現場によって、求められる性能は変わる



Q.アキレスのレスキューボートについて、強みやこだわりを教えてください。



代表的なレスキューボートとしては、3機種あります。



まず、DEIB-310は、誰でもすぐに使えることを重視しました。床は空気を入れるだけの「エアーフロア」にしています。また、救助の現場では複数人が一気に乗り降りするため、固定が必要なオールはかえって邪魔になります。そこで、あえてオールを外し、機動性が高いパドルに変えました。



 



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主力製品のFRB-380は、東日本大震災でがれきによる損傷が課題になった教訓から、強度の高い「ケブラー®繊維」で船体を補強する技術をいち早く開発・搭載したボートです。船体にアルミの床材を広げ、空気を入れるだけで約3分で使える状態になります。



2012年には、大規模な水害に備えて全国の消防に配備される車両の標準装備品として、総務省消防庁に採用されています。



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そして最新モデルのLCT-400は、2019年の台風19号で千曲川(長野県)が氾濫した時の教訓をもとに生まれたボートです。当時、福祉施設での救助の際に、ボートで何度も往復しなければならず、大変な労力と時間がかかったことを耳にしました。そこで、乗船可能人数を拡大するとともに、船首からスムーズに乗り込める「バウランプ※」を備えたボートを開発したのです。



ボートのふちをまたぐのが難しい高齢者や妊婦の方もスムーズに乗降しやすく、車椅子・ストレッチャーでそのまま乗り込むこともできます。



※バウランプ:船首から陸に斜めの板を降ろし揚陸させるもの。



 



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現場から、世界へ



時を経ても、現場の第一線で動き続けるボート



Q.実際の現場での活躍について、印象的なエピソードはありますか?



忘れられないのが、茨城県にある消防の広域組合、常総広域消防(常総地方広域市町村圏事務組合消防本部)さんでのエピソードです。



2002年ごろ、地域の水害に備えて当社のボートを導入していただき、その後も点検や部品交換など、地道なメンテナンスを続けてくださっていました。それから13年後の2015年、記録的な大雨で鬼怒川の堤防が決壊する「関東・東北豪雨」が発生し、多くの住民が取り残される事態になったのです。この時テレビに映った救助の様子を見ると、なんと2002年当時に納品したあのボートが使われていました。



ただ備えて終わりではなく、船外機と併せて長期間にわたってメンテナンスをしていただき、大切に使い続けてくださっていたからこそ、いざという災害時にしっかりと機能してくれたのだと思います。



 



防災の現場を飛び出して



Q. 意外な使われ方をしている事例はありますか?



ジュニアヨットクラブでの採用は、当社にとって大きな転機でした。指導するコーチが、練習中の子どもたちのヨットに並走して見守るためのボートとして使われています。強い風を受けて高速で走るヨットを追いかけなければならないボートは常に過酷な環境にさらされます。壊れやすい部分は容赦なくダメ出しをされて、そのたびに改良を重ねてきました。そのおかげで、過酷な環境下でも耐え得る高性能なボートがつくれるようになり、水難・水害救助以外にもさまざまな用途・現場で使われるようになっています。



また、神奈川県の葉山町セーリング協会さんからは、30年前のボートを直してほしいと頼まれたこともあります。国内に製造設備があるからこそ、そこまでの対応ができるのです。



 



<アキレスが叶える、長く使えるものづくり>



・葉山町セーリング協会 理事 浅野英彦 様 コメント・



「当協会は、32年前の創設当初からこの艇と共に活動し、自分たちでメンテナンスを重ね、大切に受け継いできました。しかし、2024年末ごろからエア漏れが顕著に。アキレスさんへ相談したところ、約2か月かけて丁寧に修理してくださいました。一般的な耐用年数は10年前後といわれていますが、30年以上たっているとは思えないほどに生まれ変わりました。修理後、この艇が海に浮かんだ時の子どもたちの歓声は今も忘れられません。これからも皆でメンテナンスを続け、長く使い続けていきたいと思います。」



 



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海を越えて、世界へ



Q. 海外でも、アキレスのボートは使われているのですか?



ARD-730という、外洋を高速で航行できるパトロールボートがあります。もともとは海上保安庁への採用を目指して開発したのですが、実現しませんでした。当社になかった外洋航行のノウハウが必要で、大分県の造船所にご協力いただき、1年間通い詰めて完成させたボートだったので、正直かなり悔しかったです。



ですが、その後ODA事業(政府による発展途上国援助の仕組み)を通じて、フィリピンを皮切りに、ケニア、フィジー、マレーシアなど、世界各地に届けられることになりました。目指していた形とは違いましたが、今では海を越えて、世界のあちこちの現場で活躍してくれています。



 



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ものづくりへの想い



「いざという時に本当に役立つ製品でありたい」



本当は、レスキューボートの出番が一度もないことこそが、一番良いことです。水害や水難事故そのものが起きない社会が理想ですから。



 



そのぶん、平常時に多くの方にボートを知ってもらう機会を大切にしています。自治体の防災訓練や展示会にボートを持って行き、子どもたちが救命胴衣を着用し、パドルを持った姿の写真を撮ってあげることがあるのですが、これがとても喜ばれるんです。ボートを並べると、「乗ってみたい」「漕いでみたい」と子どもたちが集まってきます。



また、初めて実物に触れた方は、タイヤのような硬くてしっかりとした質感に、皆さん驚かれております。アキレスが長年培ってきたゴム加工技術がなせる業であり、その驚きの声を聞くたびに、いざという時に確かな品質で応えられる製品でなければと身が引き締まります。



 



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アキレスのボートづくりは、ほとんどの工程が手作業です。日々製造に励みながら、「どこに出しても恥ずかしくないものづくり」を、スタッフ一同心がけています。アキレス製ボートの目印である、ブルーのウェーブマークを水辺や訓練の場で見かけたときは、そんな想いでつくられた製品なのだと、少しでも思い出していただけたらうれしいです。



 



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アキレス製ボートの目印となるマーク



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参考資料



1)国土交通省 川の防災情報「浸水深と避難行動について」(https://city.river.go.jp/kawabou/reference/index05.html)



2)昭和第61年自治省令第22号「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令」 (https://laws.e-gov.go.jp/law/361M50000008022/)



 



アキレス製品カタログ



アキレスRESCUE BOAT 総合カタログ(https://www.achilles.jp/product/catalog/pro-use-boat/)



 



 



「暮らしと現場をつなぐ ACHILLES LETTER」について



私たちが「現場」と呼ぶのは、製品が使われる場所だけではありません。新しい技術を生み出す開発の現場、製品をお届けする販売の現場、その全てが皆さまの「暮らし」につながっています。本レターでは、アキレスの製品・技術を紹介するとともに、事業領域の最新動向や開発者のこだわりもお届けします。



 



情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 ACHILLES LETTER Vol.3 水害救助を支える アキレスのレスキューボート 」