ミュージカル『LAZARUS(ラザルス)』は、ボウイと現代演劇の記載エンダ・ウォルシュが共同で脚本を執筆。1976年に公開されたボウイ主演の映画『地球に落ちて来た男』(ニコラス・ローグ監督)にインスパイアされたもので、地球に取り残されたまま酒に溺れ、死ぬことも故郷に還ることも出来なくなった宇宙人トーマス・ニュートンの“その後”が描かれている。謎の少女と出会い、共に自らの運命を模索する先に魂の解放はあるのか…。 日本版の演出を務めるのは、ウォルシュ作品の翻訳上演を数多く手掛けてきた白井晃。主人公のニュートンをボウイに憧れてロックスターの道を志した松岡充が、謎の少女を豊原江理佳が演じる。劇中では、このミュージカルのために書き下ろされた楽曲「Lazarus」「No Plan」「Killing a Little Time」「When I Met You」の他、「Change」「Absolute Beginners」「Heroes」をはじめとするボウイの代表曲を含む全17曲が織り込まれており、ボウイの遺志を尊重し、音楽パートは英語での歌唱となる。
続いては1969年にリリースしたアルバム『スペイス・オディティ(Space Oddity)』収録のタイトル曲「Space Oddity」。「スタンリー・キューブリック監督の映画『2001年宇宙の旅』から着想を得て描いた曲で、発売されたのはアポロ11号の打ち上げがあった後のタイミングに合わせています。当時22歳の人が考えるには凄すぎることだと思いますが、その時代にそこまで考えていたということに驚かされます」と、“創造者であるよりも先導者でいたい”というボウイの考えが反映されていたことも教えてくれた。 そしてボウイが世界的スーパースターになるきっかけとなった作品『ジギー・スターダスト( The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars )』を紹介。「宇宙からやってきたロックンローラーというコンセプトで、バンドの名前が“Spiders from Mars”。当時、日本では『屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛』というふうに直訳されていた」という裏話や、このアルバムをリリースした後、世界中をツアーで周り、最終公演で“引退”を発表して驚かせたという逸話も披露。ミュージカルにはこのアルバムの曲は使われていないが、代表作ということで特に人気の高い「Starman」をかけた。
“引退”発表の舌の根も乾かぬうちにニューアルバム『アラジン・セイン』を発表したボウイ。“ジギー・スターダスト”は引退したがボウイが引退したとは言ってない、ということで世界中がまんまと騙されたこととなった。その『アラジン・セイン』からは「タイム(Time)」をセレクト。「このオーディオシステムで聴くと、ギターの弦の擦れる音やボウイのため息まで聞こえます」と説明したとおり、細かな音も臨場感たっぷりに再現された。 1980年発売のアルバム『スケアリー・モンスターズ(Scary Monsters(and Super Creeps))』からは「イッツ・ノー・ゲーム(パート1)(It’s No Game(Part1))」。「日本語のナレーションが入っていて、日本のアンダーグラウンドの舞台の影響も受けているのがありありとわかる曲です」と楽曲について触れ、「ミュージカルでは『Lazarus』の次にかかる曲」と重要な1曲であることを伝えた。 オリジナルアルバムには収録されていないがミュージカルで使用されている楽曲「ディス・イズ・ノット・アメリカ(This Is Not America)」も紹介。この曲は映画『Falcon and Snowman』で使用された曲で、パット・メセニー・グループと共作された。
続いては「ホエア・アー・ウイ・ナウ?(Where Are We Now?)」。『ブラックスター』の一つ前の作品『ザ・ネクスト・デイ(The Next Day)』に収録されている曲で、参加したミュージシャンも箝口令が敷かれていて、アルバムのレコーディングが行われていることを一切発表していなかった。「いきなりYouTubeで発表されて、世界27ヵ国のチャートでナンバーワンになりました。そしてこの曲はミュージカルの重要な場面で使われています」と解説。 このアルバムのジャケットが『ヒーローズ(Heroes)』のジャケットを加工したものだということにちなんで、『ヒーローズ』からタイトル曲「ヒーローズ(Heroes)」を流し、この曲は“ある曲”のコード進行を使ったものだと説明し、その曲、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「僕は待ち人(I’m Waiting for the Man)」もかけて、コード進行をみんなで確認。さらに、フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」と同じコード進行の楽曲「火星の生活(Life On Mars?)」(アルバム『ハンキー・ドリー(Hunky Dolly)』収録)も聴かせてくれた。 最後はイベント会場が「東京駅」に直結しているということで、アルバム『ステイション・トゥ・ステイション(Station To Station)』のタイトル曲をかけた。