研究成果 研究チームは、データ駆動型のシミュレーションを活用して、全国規模の農場における地理的・気候的要因が農薬動態に与える影響を評価することを目指しました。そこで研究チームは、Bio-Reactive Transport Simulator(BRTSim)注2 と呼ばれるソフトウェアを使用して、19,573の農場からのデータをインド全土の3,861の村にわたって分析し、農場データ(インドの土壌健康カード情報に詳述)を高解像度の気候データと統合し、シミュレーションを行いました。その際、農薬の化学的特性と各場所の地理的・気候的条件によって引き起こされる変動を強調するため、すべての農場で一定の農薬散布率が維持される仮想シナリオを考慮しました。そして、インドで使用されている46種類の農薬の動態を評価し、以下の3つの主要知見が得られました。
(2) 農薬侵出割合の比較 本研究の手法により農薬浸出割合を計算した結果、散布された農薬量の約5%が表土から根域下に浸出するとシミュレーションされました。この結果は、インドの土壌に関する以前の実験研究(Singh et al., Bull Environ Contam Toxicol, 2018)ならびに、Maggi et al.(Nature, 2023)およびVuaille et al.(Sci Total Environ, 2024)による最近のシミュレーション研究とも一致していました。
注2 BRTSim BRTSimは、2019年に開発されたメカニスティックモデリングツールで、多孔質および非多孔質媒体における多相および多種の輸送プロセスをルールベースでシミュレーションするために設計されています。このツールは、農薬の垂直移動をシミュレートし、浸出率を定量化し、表面堆積を描写することで、土壌中の農薬動態の研究に優れています。このツールは、農薬の挙動と輸送を調査するために適用されています(Tang et al. Environ Res Lett, 2021およびMaggi et al. Nature, 2023)。
論文情報 雑誌名: Scientific Reports 論文タイトル:Geoclimatic modeling and assessment of pesticide dynamics in Indian soil 著者:Kishalay Chakraborty, and Akio Ebihara DOI: 10.1038/s41598-025-90849-9