■講演要旨 講演1 「胎児期から始まる小児・思春期の健康課題」 国立成育医療研究センター内分泌・代謝科診療部長 堀川 玲子 先生 成人期の生活習慣病や精神疾患など健康問題の源が胎生期の環境にある、という説をDOHaD説(Developmental Origin of Health and Disease)といいます。この説は、胎生期に母体が極度の飢餓状態にあった児が、長じて成人になったときに心血管障害や糖尿病などのメタボリックシンドローム、うつ病など精神疾患のリスクが高くなることから提唱されてきましたが、現在では成人期前の小児思春期の健康にも影響すること、やせの妊婦の増加など胎生環境の悪化、さらに受精時の両親のやせが影響する可能性、またその形質が次世代にも継承されることなどが明らかとなっています。当センターの母子コホート研究からも、妊娠時やせの母体は妊娠中の体重増加が少なく、児の出生体重が小さいこと、出生体重の小さかった児は5歳時のグリコアルブミンが正常範囲内ではありますが有意に高いことがわかり、生殖年齢の男女の食習慣の見直しが、次世代の健康につながることが示されました。また、幼児期早期の体重増加は9歳時の男児において収縮期血圧上昇と関連する可能性もあり、胎児期に引き続き幼児期早期の栄養が小児思春期の健康にかかわることも示唆されました。 -------------------------------------------------------------------------------------------