【研究概要】 東海国立大学機構 岐阜大学高等研究院/One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点(COMIT)先端医療機器開発部門の兵藤文紀准教授(JST創発研究者 水島パネル)、同大医学系研究科放射線医学分野の松尾政之教授、Abdelazim Elhelaly博士研究員、同大応用生物科学部共同獣医学科の森崇教授、岩崎遼太助教らのグループは、臨床で汎用されているMRI※1磁場(1.5T※2)での重水素MRI法を開発し、膵がん移植マウスモデルにおいて、放射線治療や、抗がん剤治療効果を早期に検出できることを明らかにしました。本研究により、重水※3をMRIの造影剤として活用することで、がん治療効果の超早期診断への応用が期待できます。 放射線治療※4や抗がん剤を用いた化学療法※5後の治療効果は、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)を用いた形態学的評価などを基に判別しています。しかしながら、がんの大きさは治療後数週間から数ヵ月間変化しない場合もあり、その判別には時間を要していました。また治療効果が得られない場合には、時間的な損失が大きいためがん治療の効果を早期に予測する方法が求められています。 本研究では、臨床で汎用されているMRIの磁場強度(1.5T)を用いた重水素MRI法を確立し、水に近い性質を持つ重水を造影剤とすることで、膵がんモデルマウスでの重水の蓄積による変化の可視化に成功し、特にがん組織では、①重水が蓄積すること、②重水の蓄積が、放射線治療や抗がん剤による治療に対して早期かつ鋭敏に変化することを発見しました。これらの研究成果は、がんの大きさが変化する前に、治療効果を評価できる新たなイメージングバイオマーカー※6として期待されます。 本研究は主に、日本学術振興会科学研究費補助金「小径膵癌の検出および超早期治療効果判定を可能とする重水素代謝MRI法の開発」(22K07768)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の創発的研究支援事業「電子伝達体をプローブとする多重超偏極イメージング法の創成」(JPMJFR2168)、文部科学省の光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「量子生命技術の創成と医学・生命科学の革新」(JPMXS0120330644)の支援を受けて行った研究です。 本研究成果は、the American Association for Cancer Researchの学術雑誌「Clinical Cancer Research」に掲載されました(2023年9月21日)。