【研究背景】 ニホンジカの個体数増加は農林業被害や生息地の植生の衰退を引き起こすことが知られており、問題解決のための手段の1つとして個体数管理が挙げられています。大型草食動物の個体数管理のためにはその生息数を把握することが必要であり、国内ではハーベストベースドモデル(HBM)を用いた個体数推定が各地で実施されてきました。しかし、HBMの構造による推定値の変化や、不適切なモデル構造によって推定に誤りが生じる可能性等についてはあまり議論が進んでいませんでした。また、これまで国内のニホンジカ保護管理において実施されてきた個体数推定事例の多くは、都道府県のような広域を1単位としたものであり、生息密度の地域差を表現できるような空間解像度の高い推定を実施した事例は多くありませんでした。本研究では、Iijima et al.(2013)の提案した5㎢単位(狩猟メッシュ単位)での空間解像度の高いHBM構造をベースに、岐阜県が2008年〜2019年にかけて集積してきた空間解像度の高いニホンジカのモニタリングデータを最大限活かすことを念頭においたHBMを複数構築し、個体数推定の実施・検証を行いました。
Iijima, H., Nagaike, T., &Honda, T. (2013). Estimation of deer population dynamics using a bayesian state‐space model with multiple abundance indices. The Journal of Wildlife Management, 77(5), 1038-1047.
【論文情報】 雑誌名:Mammal Study 論文タイトル:Examination of the appropriate inference procedure in a model structure for harvest-based estimation of sika deer abundance. 著者:Masaki Ando, Takashi Ikeda, Hayato Iijima DOI: 10.3106/ms2021-0049 論文公開URL: https://doi.org/10.3106/ms2021-0049