◆カーボンニュートラルへ向けた日本のイニシアティブと「地域」に目を向けた「需要側」からのアプローチ 2050年までにカーボンニュートラルを実現するシナリオは複数あります。しかし、いずれもエネルギーコストが現状を上回るためコスト削減は大きな課題です。日本においては、イノベーションとともに既存インフラの徹底的な活用に力を入れるべきです。具体的には、火力発電施設を使って石炭に代わり、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを燃料にすることや、既存のガス管を活かし、「メタネーション」によってCO2と水素から作られる合成メタンを都市ガスの原料として利用するといったことです。このような取組みは、石炭や天然ガスを多く使用する新興国への展開も可能で、日本がリーダーシップを発揮できると考えています。また、大企業による供給サイドのトップダウン型アプローチだけでなく、地域を重視した需要サイドからのボトムアップ型アプローチも必要です。中小企業がサプライチェーン全体の脱炭素化に迫られ、店舗や家庭までもがカーボンプライシングの対象になることを想定すると、エネルギー需要の地域全体でのマネジメントが必要になります。ITによってエネルギーの利用状況などあらゆるデータを収集すればAIで分析・予測を行うこともでき、ブロックチェーンでプライバシーの保護も図れます。さらに、太陽光による創電や電気自動車(EV)での蓄電、工場や家庭における節電といった「創電・蓄電・節電」を地域でネットワーク化して制御することで一つの発電所のように機能するVPP(Virtual Power Plant=仮想発電所)も期待され、カーボンニュートラルの実現にDXは欠かせません。