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国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
北海道産タマネギブランド「さらさらゴールド」は 機能性表示食品としてオンラインで販売が開始されます
農研機構を代表とする研究グループは、ケルセチン1)の多いタマネギの健康機能性の評価を行ってきました。この度、「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」に基づいて実施した研究レビュー2)を科学的根拠として、株式会社植物育種研究所より、北海道産のブランド「さらさらゴールド3)タマネギ」で機能性表示食品として消費者庁に届出を行い、1月19日に生鮮食品の区分で受理されました。2月8日よりオンラインで販売を開始します。
研究グループ(農研機構、株式会社植物育種研究所、北海道国立大学機構 北見工業大学、北海道情報大学、東海国立大学機構 岐阜大学、弘前大学、協力機関としてJAきたみらい、ホクレン農業協同組合連合会)では、タマネギに含まれるケルセチンの健康機能性に着目し、ケルセチンを多く含むタマネギの機能性表示を目指して研究を行ってきました。代表機関の農研機構では、食事による健康維持増進や野菜摂取量の増加に貢献するため、農産物への機能性表示に活用できる「研究レビュー」を公開しており(https://www.naro.affrc.go.jp/org/nfri/yakudachi/sys-review/index.html)、タマネギに含まれるケルセチンについても「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」に基づいて「研究レビュー」を実施し、2月8日に公開しました。
研究レビューでは、ケルセチンの摂取(50mg/日)が、加齢によって低下しがちな「積極的な気分」を維持するのに役立つことを確かめました。また、一般のタマネギよりケルセチン含有量が多いタマネギブランド「さらさらゴールド」の生産物におけるケルセチン含有量の変動を調査して摂取の目安量を決定し、調理による影響がないことも明らかにしました。
これらの根拠に基づいて、株式会社植物育種研究所から機能性表示食品として「さらさらゴールド タマネギ」の届出を行い、2023年1月19日に生鮮食品の区分で機能性表示食品として受理され、消費者庁のHPで公表されました。
北海道産のタマネギブランド「さらさらゴールド タマネギ」は、2月8日よりオンラインショップ(https://www.sarasaragold.com/)において販売が開始されました。
機能性表示食品受理内容
届出番号:H846
届出表示:本品にはケルセチンが含まれています。ケルセチンには健常な高齢者の加齢によって低下しがちな積極的な気分を維持するのに役立つ機能があることが報告されています。本品を可食部150g食べると、機能性が報告されている1日当たりの50%の機能性関与成分量が摂取できます。
機能性関与成分(1日摂取目安量 可食部150g当たり):ケルセチン 25mg
販売者:株式会社植物育種研究所
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302082762-O8-zkqjc0D0】
<関連情報>
予算:生物系特定産業技術研究支援センター「「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(うち「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業)」「脳機能改善作用を有する機能性食品開発」
また、本研究課題は、農林水産省が推進する産学連携研究の仕組みの「知」の集積と活用の場産学官連携協議会において組織された研究開発プラットフォームのうち「健康長寿社会の実現に向けたセルフ・フードプランニングプラットフォーム」から応募された課題です。
「知」の集積と活用の場について
URL:https://www.knowledge.maff.go.jp
論文:Nishihira, J. et al. J Clin Biochem Nutri.2021;69(2):203-215.
プレスリリース:(研究成果)タマネギのケルセチンは認知機能の維持に役立つ
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/141222.html
研究推進責任者:
農研機構食品研究部門 所長 亀山 眞由美
同 東北農業研究センター 所長 川口 健太郎
株式会社植物育種研究所 代表取締役 岡本 大作
北海道国立大学機構 北見工業大学学長 鈴木 聡一郎
北海道情報大学 学長 西平 順
東海国立大学機構 岐阜大学大学院医学系研究科 研究科長 中島 茂
研 究 代 表 者:
農研機構食品研究部門 食品健康機能研究領域 研究領域長 小堀 真珠子
研究担当者:
農研機構東北農業研究センター 畑作園芸研究領域 野菜新作型グループ グループ長 室 崇人
株式会社植物育種研究所 代表取締役 岡本 大作
北海道国立大学機構 北見工業大学 工学部 地域未来デザイン工学科 教授 新井 博文
北海道情報大学 学長 西平 順
東海国立大学機構 岐阜大学大学院医学系研究科 教授 中川 敏幸
弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 教授 前田 智雄
※農研機構(のうけんきこう)は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム(通称)です。
新聞、TV等の報道でも当機構の名称としては「農研機構」のご使用をお願い申し上げます。
開発の社会的背景
総務省統計局によると、2022年9月15日現在の推計で日本の総人口に占める65歳以上の割合は29.1%に達しています。また、厚生労働省の発表では2020年時点での65歳以上の認知症の人の数は約600万人と推計され、約16%以上に上ります。中高年や高齢者における認知機能の低下やそれに伴う行動・心理症状の変化は重要な問題となっており、食生活を介して、これらが改善されれば、健康維持に貢献できると考えられます。
研究の経緯
研究グループでは、タマネギの健康機能性の認知度を高め、食生活を介して、加齢によって低下しがちである積極的な気分の維持への効果が期待される、タマネギに含まれる「ケルセチン」に着目し、研究レビューによる科学的根拠に基づいて機能性表示食品として届出を行いました。
研究の内容・意義
1.リサ―チクエスチョン4)「健常な中高年において、ケルセチンを含む食品の摂取はプラセボ食品と比較して、加齢によって低下しがちな積極的な気分ややる気を維持するのか?」に基づいて研究レビューを実施しました。
2.研究レビューの採用論文(参考情報1)より、「ケルセチン50mg/日の摂取」が、健常な高齢者の加齢によって低下しがちな積極的な気分を維持するのに役立つと考えられました。
3. JAきたみらい管内で2020年度に生産された「さらさらゴールド」の出荷規格M以上からサンプリングし、タマネギのケルセチン分析法5)を用いて分析しました(図1)。農林水産省農林水産技術会議事務局が公開する「農林水産物の機能性表示に向けた技術的対応について」(参考情報2)の資料に従い、エクセル計算プログラムを用いて「さらさらゴールド」のケルセチン濃度下限値を「24.9mg/100g新鮮重」と算出しました。
4.年次間差を考慮し、「可食部150g中に関与成分の効果が期待できる1日摂取目安量の50%に相当する25mgを上回るケルセチンが含まれる。」と表示することにしました。
5.「さらさらゴールド」の可食部を薄切りにして、5分間沸騰した後に茹で汁を含めて測定した場合においても、5分間炒めたものを測定した場合においても、新鮮重当たりに換算したケルセチン含量は変わらず、これらの調理によってケルセチン含量は大きく減少しないことを確認しました(図2)。
6.2021年度にJAきたみらい管内で生産された、出荷規格M以上の「さらさらゴールド」で、上記の規格を満たすことを確認しました。
7.これらの結果に基づいて、植物育種研究所より、生鮮食品として「さらさらゴールド タマネギ」の機能性表示の届出を行いました(図3)。
8.本研究では、農研機構が研究レビューを実施し、北海道情報大学及び岐阜大学と連携して、機能性及び安全性情報の収集・評価を行いました。また、農研機構、植物育種研究所、JAきたみらい、北見工業大学、弘前大学が連携して、JAきたみらい管内で生産されたタマネギ「さらさらゴールド」のケルセチン含量を測定し、下限値を決定しました。また、植物育種研究所が農研機構及びホクレン農業協同組合連合会と連携して、届出書類を作成しました。
今後の予定・期待
機能性表示食品としての「さらさらゴールド タマネギ」はオンラインでの受注販売を開始し、2023年10月からは全国スーパーにて販売の予定です。本研究の成果によりタマネギ及びその加工食品の機能性表示が普及し、食生活を介した健康維持に役立つことを期待します。また、国産タマネギの付加価値を高め、タマネギの国内生産と輸出も含めた関連産業の活性化に役立つことが期待されます。
用語の解説
1) ケルセチン
野菜、果物、茶等に広く含まれるポリフェノールのうちのフラボノイドの1種で、黄色を呈します。
2) 研究レビュー
一定のルールに基づいて文献を検索し、総合的に評価すること。機能性表示食品の届出における研究レビューについては、機能性表示食品の届出等に関するガイドライン( https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/)に基本的な考え方が示されています。
3) さらさらゴールド
株式会社植物育種研究所が育成した高ケルセチンタマネギ品種の登録商標で、北海道で生産されています。「さらさらゴールド」の可食部100gあたりケルセチン含量の平均値は40-50mg(2018-2021年度産)で、一般に生産されているタマネギよりも高含有量です。
4) リサ―チクエスチョン
「研究レビュー」で検索・評価する課題。
5) タマネギのケルセチン分析法
複数機関の共同試験により妥当性を確認された方法で分析します。
食品機能性評価マニュアル(Ⅳ)タマネギのケルセチン分析法
http://www.fmric.or.jp/ffd/ffmanual/manual40106.pdf。
参考情報
1.The effect of 24-week continuous intake of quercetin-rich onion on age-related cognitive decline in healthy elderly people: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group comparative clinical trial. Nishihira, J. et al. J Clin Biochem Nutri.2021;69(2):203-215.
2.「農林水産物の機能性表示に向けた技術的対応について」2.資料「農林水産物の機能性表示に向けた技術的対応について―生鮮食品などの取扱い―」3.参考 エクセル計算プログラム、農林水産省農林水産技術会議事務局、2015年8月。
https://www.affrc.maff.go.jp/kinousei/gijyututekitaio.htm
参考図
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302082762-O10-B81j7U93】 図1 2020年にJAきたみらい管内(18箇所)で生産された「さらさらゴールド」の
新鮮重100gあたりケルセチン含量の分布(M規格以上、51個)
図【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302082762-O11-147o7D7c】
2 調理前後のケルセチン含量(2021年JAきたみらい管内産「さらさらゴールド」) 茹;薄切りにしたタマネギ可食部を水に入れて、5分間沸騰した後、茹で汁を含めて測定。 炒;薄切りにしたタマネギ可食部を少量のオリーブオイルで5分間炒めたものを測定。 ※6回の繰り返し実験の平均値±標準偏差で示した。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202302082762-O8-zkqjc0D0】
図3 商品の写真