【研究概要】 抗菌薬の効かない細菌感染症の蔓延に伴い、細菌に感染する天敵ウイルスである「バクテリオファージ」(ファージ)を使った治療法「ファージセラピー」が注目を集めています。自然環境などに存在する天然(野生型)ファージに加え、近年では遺伝子組換えなどを施した改変型ファージを使うアプローチも報告されています。機能性を高めた改変型ファージは、より効果的なファージセラピーを可能にするものと期待されています。しかし、従来の手法によって改変できるファージは極めて限定的でした。また、改変型ファージを封じ込める(環境中に拡散させない)ための技術開発についての報告はありませんでした。 岐阜大学医学系研究科ファージバイオロジクス研究講座の満仲翔一研究員(筆頭著者)、安藤弘樹 特任准教授(責任著者)らのグループは、ファージゲノムを試験管内で改変・構築して起動できるファージ合成改変技術を開発しました。これを使って実際に多くのファージを起動させ、また、データベース上の配列データからDNAを化学合成し、試験管内で構築し、人工ファージを起動させることにも成功しました。これらの結果は、本技術の汎用性が高いことを示しています。さらに、一回しか感染・殺菌しない生物学的封じ込めファージの作製方法を開発しました。本技術を改変型ファージに応用することで、より効果的でより安全な改変型ファージセラピーの実現が期待されます。 本研究成果は、日本時間2022年11月21日にProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)誌のオンライン版で発表されました。
【論文情報】 雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) 論文タイトル:Synthetic engineering and biological containment of bacteriophages 著者:Shoichi Mitsunaka, Kohei Yamazaki, Ajeng K. Pramono, Megumi Ikeuchi, Tomoe Kitao, Naoya Ohara, Tomoko Kubori, Hiroki Nagai, Hiroki Ando DOI:10.1073/pnas.2206739119