高齢者施設での観察研究を実施、第18回日本食品免疫学会学術大会で発表

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)と神奈川歯科大学(学長:櫻井 孝) 槻木 恵一は、高齢者施設の入居者を対象とした観察研究において、乳酸菌Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus 
OLL1073R-1(以下、OLL1073R-1株)で発酵したヨーグルトを摂取している施設では、風邪罹患者数が少なく、入居者のヒトコロナウイルス229E※1に反応する唾液中IgA※2抗体量が増加したことを確認しました。本研究により、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増加が、風邪罹患リスク低減効果に寄与している可能性が示唆されました。当研究成果は2022年11月8日に第18回日本食品免疫学会学術大会にて発表しました。

 当社は、これまでにOLL1073R-1株で発酵したヨーグルトについて風邪罹患リスク低減効果※3や、インフルエンザウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増強効果※4などを確認してきましたが、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体については初めての研究成果となります。なお、第76回日本栄養・食糧学会大会および第18回日本食品免疫学会学術大会にて、ヒト肺細胞を用いたモデル試験において、OLL1073R-1株が産生する多糖体※5によるヒトコロナウイルス229Eおよび新型コロナウイルスの感染抑制効果を報告しております。OLL1073R-1株の EPSは、新型コロナウイルスを含めた各種コロナウイルス株に対して効果を発揮することが期待でき、さらに詳細な検証を行う予定です。当社は、今後も健康課題と向き合った研究を続け、人々が笑顔で健康な毎日を過ごせる未来の実現を目指してまいります。

※1 ヒトコロナウイルス229E:風邪症候群の原因となる4種類のヒトコロナウイルス(229E、NL63、OC43、HKU1)の中の一つ。
※2 IgA:抗体の一種であり、病原体に結合することで体内への侵入を防ぐ働きがある。
※3 出典:Makino S, et al. Br J Nutr, 104(7):998-1006, 2010.
※4 出典:Yamamoto Y, et al. Acta Odontol Scand, 77(7):517-524, 2019.
※5 多糖体: 糖が鎖のようにつながったもの。菌が作り出す多糖体は菌体外多糖(Exopolysaccharides, EPS)という。
  OLL1073R-1株が産生するEPS(R-1 EPS)は、これまでにも免疫力の指標となるナチュラル・キラー細胞(NK細胞)の活性を
  高める働き、インフルエンザウイルス感染を抑制する作用など、さまざまな免疫作用が示されている。 

発表内容
【タイトル】
ヨーグルトの摂取による上気道感染症の予防効果

 特別養護老人ホームA(摂取施設)には、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトを2015年4月から供給しており、その入居者は毎日1個(112 g)を摂取しています。この摂取施設の入居者41名と、本ヨーグルトを摂取していない介護老人保健施設B(対照施設)の入居者49名を対象者とし観察研究を行いました。2019年9月から2020年3月までの7カ月間、両入居者の風邪罹患状況を調査しました。また、2019年12月に唾液を採取し、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量※6を測定して、以下の結果を得ました。

摂取施設は対照施設と比べて、
(1)調査期間中(2019年9月~2020年3月)の風邪罹患者数が有意に低値でした(p <0.01)。
(2)ヒトコロナウイルス229Eに反応する唾液中IgA抗体量が高い傾向でした(p <0.1)。

また、唾液採取直前(2019年11月~12月)の風邪罹患者を除外して解析した結果(除外後:摂取施設41名、対照施設43名)※7、
(3)ヒトコロナウイルス229E、NL63に反応する唾液中IgA抗体量がそれぞれ有意に高値(p<0.05)、
      高い傾向(p<0.1)でした(図1)。
(4)唾液採取後(2020年1~3月)の風邪罹患者数が有意に低値でした(p<0.01)(表1)。

以上の結果から、OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取は、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量を増加させ、風邪症候群への罹患リスクを低減することが示唆されました。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211099538-O7-166arTVh

※6 唾液中IgA抗体量:唾液中IgA濃度(重量/mL)に唾液分泌速度(mL/分)を乗じた値(重量/分)。
※7 除外理由:風邪罹患の原因がヒトコロナウイルスへの感染であった場合、ヒトコロナウイルスに反応する唾液中IgA抗体量が
   増加して試験結果に影響すると考えられるため、唾液採取直前の風邪罹患者を除外して解析した。
※8 arbitrary units:任意単位。ヒトコロナウイルスに反応するIgA抗体量は、任意に選抜した唾液検体の混合物の値を
  1arbitrary units (AU) とした相対値で示した。

 

 

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 OLL1073R-1株で発酵したヨーグルトの摂取で、唾液中IgA抗体量が増加し風邪罹患リスクが低減することを確認