1.背景 日本の消化器外科医における女性の割合は6%程度と少なく(医師・歯科医師・薬剤師調査:2016年当時※1)、指導的立場の女性外科医はさらに少ないのが現状であり、女性が十分に活躍できているとは言えません。それに比べて、カナダ、アメリカ、イギリスの一般外科医に占める女性の割合はそれぞれ、27.9%、22.0%、32.5%(カナダ医師会、アメリカ医科大学協会:いずれも2019年※2,3、イギリス国民保健サービス(NHS):2017年※4)であり、さらに、アメリカやカナダでの先行研究では、女性医師や外科医の治療成績は男性医師と同等かそれ以上であることが示されています。 このように、日本では女性外科医の割合が少なく、他国と比べて女性外科医が働くための環境が整っていないと考えられてきました。またこれまで、男女の消化器外科医による手術成績に差がないことを示したうえで、女性が外科医として十分活躍可能なことを明らかにする研究も行われてきませんでした。そこで、女性の消化器外科領域への参画を促進したいという考えのもと、日本最大の手術データベースであるNational Clinical Database (NCD)を活用し、男女の消化器外科医による執刀数や術後合併症などを比較する研究を計画しました。 なお、我々はこれまでにNCDを使用して、女性消化器外科医一人当たりの手術執刀数が男性消化器外科医よりも少ないことを明らかにしています。(Kono E, Isozumi U, Nomura S, Okoshi K, et al. Surgical Experience Disparity Between Male and Female Surgeons in Japan. JAMA Surg. Published online July 27, 2022. doi:10.1001/jamasurg.2022.2938)