<概要> 札本 佳伸(ふだもと よしのぶ)国立天文台アルマプロジェクト特任研究員・早稲田大学理工学術院総合研究所次席研究員と稲見 華恵(いなみ はなえ)広島大学宇宙科学センター助教らの国際研究チームが、アルマ望遠鏡の大規模探査による観測データの中から、約130億年前の宇宙で塵に深く埋もれた銀河を複数発見しました。そのうちの一つは、塵に埋もれた銀河として見つかったものの中で最古の銀河です。今回発見されたような銀河は、すばる望遠鏡などを用いた観測で発見することは難しく、初期の宇宙にどれほど存在するのかこれまで全くわかっていませんでした。今回の発見は、宇宙の歴史の初期においても数多くの銀河が塵に深く隠され、いまだ発見されないままになっていることを示します。同時に、このような銀河は宇宙の初期における銀河の形成と進化をより統一的に理解する上で重要な発見です。 この観測成果は、Fudamoto et al. “Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization”として、英国の科学誌「ネイチャー」オンライン先行公開版に2021年9月22日16:00(イギリス時間)に掲載され、9月23日に本誌に掲載されました。 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202109240533-O2-7MU7UXE9】 上図:今回の観測結果の模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線の観測画像(左)では、中心やや下に銀河が見えています。これは右下の想像図のような、これまで存在がよく知られていた若い銀河です。一方今回のアルマ望遠鏡による観測では、ハッブル宇宙望遠鏡では何も見えていない領域に、塵に深く埋もれた銀河(右上の想像図)を新たに発見しました。 Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope
(3)今後の展開・影響 これまでの観測からは全く見つけられなかったような種類の銀河が宇宙の初期に存在した、という発見は、いままで考えられてきた宇宙の初期における銀河の形成の理論に大きな影響を及ぼす発見です。このような銀河がどの程度存在し、どのように銀河全体の進化と形成に影響してきたのかをより統一的に理解するにはさらなる観測を待たなければなりません。アルマ望遠鏡による探査や、2021年内に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による大規模な銀河の探査と、それらによる銀河の形成に関する統一的な理解の進歩が待たれます。 【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202109240533-O3-83EV33bK】 上図:アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡、欧州南天天文台VISTA望遠鏡で撮影した遠方銀河。アルマ望遠鏡で観測した電離炭素原子からの放射を緑、塵からの放射をオレンジ、VISTA望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡で観測した近赤外線を青で表現しています。REBELS-12、REBELS-29は近赤外線と電離炭素原子・塵からの放射がいずれも検出されていますが、REBELS-12-2とREBELS-29-2では近赤外線が検出されていません。これらは今回のアルマ望遠鏡による観測で初めて見つかった銀河で、塵に深く埋もれていると考えられます。 Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.
<論文情報> 雑誌名:Nature 論文名:Normal, Dust-Obscured Galaxies in the Epoch of Reionization 執筆者:Y. Fudamoto1,2,3, P. A. Oesch1,4, S. Schouws5, M. Stefanon5, R. Smit6, R. J. Bouwens5, R. A. A. Bowler7, R. Endsley8, V. Gonzalez9,10, H. Inami11, I. Labbe12, D. Stark8, M. Aravena13, L. Barrufet1, E. da Cunha14,15, P. Dayal16, A. Ferrara17, L. Graziani18,20, 27, J. Hodge5, A. Hutter16, Y. Li21,22, I. De Looze23,24, T. Nanayakkara12, A. Pallottini17, D. Riechers25, R. Schneider18,19,26,27, G. Ucci16, P. van der Werf5, C. White8 所属機関名:1Department of Astronomy, University of Geneva,2Research Institute for Science and Engineering, Waseda University, 3National Astronomical Observatory of Japan, 4Cosmic Dawn Center (DAWN), Niels Bohr Institute, University of Copenhagen, 5Leiden Observatory, Leiden University, 6Astrophysics Research Institute, Liverpool John Moores University, 7Sub-department of Astrophysics, The Denys Wilkinson Building, University of Oxford, 8Steward Observatory, University of Arizona, 9Departmento de Astronomia, Universidad de Chile, 10Centro de Astrofisica y Tecnologias Afines (CATA), 11Hiroshima Astrophysical Science Center, Hiroshima University , 12Centre for Astrophysics &Supercomputing, Swinburne University of Technology, 13Nucleo de Astronomia, Facultad de Ingenieria y Ciencias, Universidad Diego Portales, 14International Centre for Radio Astronomy Research, University of Western Australia, 15ARC Centre of Excellence for All Sky Astrophysics in 3 Dimensions (ASTRO 3D) , 16Kapteyn Astronomical Institute, University of Groningen, 17Scuola Normale Superiore, 18Dipartimento di Fisica, Sapienza, Universita di Roma, 19INAF/Osservatorio Astronomico di Roma, 20INAF/Osservatorio Astrofisico di Arcetri, 21Department of Astronomy &Astrophysics, The Pennsylvania State University, 22Institute for Gravitation and the Cosmos, The Pennsylvania State University, 23Sterrenkundig Observatorium, Ghent University, 24Dept. of Physics &Astronomy, University College London, 25Cornell University, 26Sapienza School for Advanced Studies, 27INFN, Roma, Italy 掲載日:オンライン先行版 2021年9月22日(水)16:00(イギリス時間) 本誌 2021年9月23日(木)(イギリス時間) DOI:10.1038/s41586-021-03846-z