本研究の成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に2021年2月25日付で先行公開されました。本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。なお研究実施の際には、利益相反による問題が生じないよう十分配慮しました。
論文 題名:Impact of ergonomics on cardiometabolic risk in office workers: Transition to activity-based working with height-adjustable desk. (人間工学的職場環境がオフィスワーカーの心血管・代謝性疾患のリスクに及ぼす影響:昇降デスクを含むアクティビティベースドワーキングへの移行) 著者名:Jindo T, Kai Y, Kitano N, Makishima M, Takeda K, Arao T. 書誌情報:Journal of Occupational and Environmental Medicine (Volume Publish Ahead of Print)
実験の背景と概要 現在、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、オフィスや働く環境を見直そうという機運が高まっています。オフィス改装や移転は稀な機会であるため、従業員の生産性や健康に影響する様々な点について熟考する必要があります。特にオフィスワーカーでは、長時間の「座りすぎ」による心身の健康や生産性関連指標への悪影響が指摘されており、効果的な施策が必要です。しかし、オフィス施策と座りすぎの研究は欧米諸国を中心に行われており、世界一座っている時間が長いといわれる我が国からの知見はありませんでした。 これまでに我々は、オフィス施策による座りすぎ解消効果について報告してきました(参考:ニュースリリース 2020年2月13日 オフィス環境改善による座りすぎ解消効果を確認)。そして今回新たに、オフィス移転に伴う健診データへの影響について、実証実験結果を公表しました。本実証実験では、ABW(Activity Based Working)という新しい働き方を取り入れたオフィスへの移転に着目しました。ABWとは「従業員がその時の仕事内容に適した場所や作業席を選択できる働き方」であり、オフィスの省スペース化も狙いのひとつです。オフィス移転前後で、座りすぎや身体活動の変化をみるとともに、定期健康診断データの変化を対照群と比較することで、心血管・代謝性疾患のリスク因子※2への影響を検証しました。 ※2 心血管・代謝性疾患リスク因子:心血管疾患やⅡ型糖尿病、脂質異常症などの発症と関係する形態や血圧、糖・脂質代謝指標を指す。