2021年1月6日

学校法人同志社 同志社大学

同志社大学生命医科学部 舟本 聡准教授研究グループ論文発表
「アルツハイマー病、なぜ大脳が冒される?」

 アルツハイマー病は主要な認知症で、脳で記憶を司る大脳と呼ばれる部位が萎縮します。これには、大脳でのアミロイドβタンパク質(Aβ)の蓄積が引き起こす神経細胞死が関係していると考えられています。一方で、同じ脳でも小脳と呼ばれる部位ではAβの蓄積が少なく、脳組織の萎縮などの異常がほとんど認められません。なぜ大脳にAβの蓄積が多く小脳にはそれが少ないのかは、長く謎に包まれていました。小脳には、アルツハイマー病にならない仕組みがあるのかもしれません。

 このたび、同志社大学大学院生命医科学研究科の大学院生アラム シャヌアさんと舟本 聡准教授らは、滋賀医科大学等との共同研究で、この謎の解明に取り組みました。アラムさんらは、大脳でAβが多く蓄積している原因として、単にAβが大脳で多く作られ小脳では少ないためだと予測し、その確認のために、マウスの大脳と小脳で作られるAβ量を比較しました。その結果、予想に反して大脳と小脳ではAβが同程度に作られていました。次に、脳内でAβを貪食するミクログリアという細胞を調べてみると、Aβを取り込んでいるミクログリアの数は大脳と小脳で違いがありませんでした。大脳でAβ蓄積が多く小脳で少ないのは、Aβの産生や分解とは関係が無いようです。
 
 次にアラムさんらは、大脳と小脳でAβが拡散する様子について調べてみました。マウスのそれぞれの脳の部位にAβを注入して、その分布を観察すると、小脳に注入したAβが、大脳に注入した場合と比較して約5倍も広がり、数日後にはほとんどなくなっていることを見つけました。一方、大脳に注入したAβの分布は数日経っても変化がありませんでした。さらに、小脳から無くなったAβを探してみると、その一部は首にあるリンパ節と呼ばれる場所に多く認められました。これらの発見は、小脳ではAβが盛んに脳の外に排出されているためAβ蓄積が少なく、大脳ではこの排出が穏やかなためAβが蓄積する傾向にあることを示しています。これらのことから、大脳でもAβ排出を盛んにすると、アルツハイマー病予防に効果が期待できます。
 
 本研究成果は、専門雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に2021年1月8日に発表されます。(電子版は12月16日に発表されております。)

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 同志社大学生命医科学部 舟本 聡准教授研究グループ論文発表「アルツハイマー病、なぜ大脳が冒される?」