【固体のブロッホと磁場のランダウ】 金属や半導体では,電子は原子が作る周期的なポテンシャル中を運動しています.その様な電子の状態を厳密に求める理論はF. ブロッホ(ノーベル物理学賞,1952年)によって1928年に与えられました.一方,(固体中ではなく)真空中で,磁場を加えた電子の状態を厳密に求める理論は,L. D. ランダウ(ノーベル物理学賞,1962年)によって1930年に生み出されました.ほぼ同時期に生み出された二つの理論は,当時完成間もない量子力学を固体物理学に適用する嚆矢となり,その後の爆発的な固体物理研究へと繋がりました.(現代文明を支える半導体物理学はその潮流の中で生まれました.)
【ラッティンジャーとコーンによる進展】 この問題に大きな進展をもたらしたのは,1955年のJ. M. ラッティンジャーとW. コーン(ノーベル化学賞,1988年)によるk.p理論です.彼らは,ブロッホの波動関数を改良することで,周期ポテンシャルと磁場を両立する厳密な方程式を導くことに成功しました.しかし,ラッティンジャーとコーンの方程式は非常に複雑で,(簡単化した特別な場合を除いて)一般には解くことができませんでした.