2018年10月22日



龍谷大学



映画好調で注目が集まる「教誨師 〜その知られざる職業〜」

受刑者に寄り添い、心の救済に努める「教誨師」とは何か



石塚 伸一:龍谷大学犯罪学研究センター長/法学部教授



「教誨師」という映画が公開された。故大杉漣プロデュース・主演の遺作で、佐向大が監督・脚本の作品である。いわゆる「死刑囚」(法的には「死刑確定者」)の執行にいたるまでの心に寄り添うキリスト教宗教者の教誨活動をオムニバス風に描いた作品だ。評判は、なかなかいいようである。

作品の評価については、専門家にお任せするとして、40年以上、犯罪や刑罰の問題を研究してきた者としては、罪を犯した人の矯正や更生保護に寄り添い、最期を看取ってきた「教誨師」という一般にはあまり知られていない職業の存在が、多くの人に知られることは喜ばしいことである。



「教誨師」の存在が知られるようになったのは、ノンフィクション作家の堀川惠子の作品『教誨師』※1(講談社2014年)が契機であった。この作品は、同年、城山三郎ノンフィクション賞を受賞し、その後も版を重ねて、文庫(2018年)になっている。

長年、教誨師として、死刑囚に寄り添い、執行直前の教誨に立ち会い、棺前教誨(一般にいう「葬儀」)で彼らを見送った、浄土真宗本願寺派の僧侶渡邉普相からの聴取り調査をもとに、人が人の生命を奪う死刑という法制度を考察している。作者は、渡邉の「わしが死んでから世に出して下さいの」という遺言を守り、死の一年後に同書は出版された。お読みいただくのが一番なので、余計な評論は避けることにする。 ※2



浄土真宗本願寺派を母体とする龍谷大学は、研究や教育を通して「教誨師」と深く関わってきた歴史があり、いまも罪を犯した人への対人支援を基軸とする、国内でも稀有な研究センターを持っている。

本紙では、罪を犯した人と向き合い、時には「死んでいく」ことを手伝うことになる過酷な職業でありながら、あまり知られていない「教誨師」の歴史や意義について、私自身の体験も交えて紹介する。



※1:広島県出身。テレビの報道記者・ディレクターを経て、フリーのディレクターとして映像番組を制作するとともに、地道な取材に裏付けられた著作を発表している。死刑囚永山則夫に関する一連の作品(『死刑の基準−『永山裁判』が遺したもの』日本評論社:2009年、『裁かれた命 死刑囚から届いた手紙』講談社:2011年、『永山則夫 封印された鑑定記録』岩波書店:2013年)や被爆都市広島を描いた作品(『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』文藝春秋:2015年、『戦禍に生きた演劇人たち:演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』講談社、2017年)で、第32回講談社ノンフィクション賞、第10回新潮ドキュメント賞、日本記者クラブ賞特別賞、第47回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞している。

※2:なお、同書の「解説」を書かせていただいているので、ご参照いただければ幸いである。



本状内容のご紹介(詳細はPDFをご確認ください)

P.01

1.教誨とは何か

教誨師は世界中に存在する

公務員だった日本の宗教教誨師

教誨師は公務員からボランティアへ

宗教教誨と自由と制限



P.03

2.浄土真宗と教誨

日本に継承されたドイツの「監獄法」 

刑務所も救済施設になるべき

学科教育でもあった教誨

財政上の都合から、教誨師派遣は東西本願寺だけが残った

法律と憲法で分かれる教誨への評価



P.05

3.龍谷大学と教誨

教誨から矯正への拡がり

龍谷大学矯正・保護課程の発足

国内でも稀有な研究センター



P.06

4.教誨とわたし

教誨との出会い

龍谷大学での出会い

死刑と教誨

善意であること、悪意であること









情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 映画好調で注目が集まる「教誨師 〜その知られざる職業〜」